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ロマンティック・ミュージカル『シラノ』作品レビュー

  • 2022年2月13日

作品紹介

1897年、フランスでの初演以来、日本を含む世界各国で上演されてきた名作「シラノ・ド・ベルジュラック」を、『プライドと偏見』、『つぐない』のジョー・ライトがメガホンをとり映画化。
「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズ、『パーフェクト・ケア』のピーター・ディンクレイジがシラノを演じ、『Swallow/スワロウ』のヘイリー・ベネット、『WAVES/ウェイブス』のケルヴィン・ハリソン・Jr.が共演する。

ストーリー

物語の舞台は17 世紀フランス。 剣の腕前だけでなく、優れた詩を書く才能をもつフランス軍きっての騎士シラノは、仲間たちからも絶大なる信頼を置かれていたが、自身の外見に自信が持てず、想いを寄せるロクサーヌに、心に秘めた気持ちをずっと告げることができない。

そんな胸の内を知らないロクサーヌはシラノと同じ隊に配属された青年クリスチャンに惹かれ、こともあろうにシラノに恋の仲立ちをお願いする。複雑な気持ちを抱えながらも、愛する人の願いを叶えようとするシラノは、溢れる愛情を言葉で表現する才能がないクリス
チャンに代わって、自身の想いを文字に込めて、ロクサーヌへのラブレターを書くことに・・・。果たして、三人が求める純真な愛の行方は 。

作品レビュー

あの「シラノ・ド・ベルジュラック」が、ミュージカル映画で観られるとは新鮮な驚きを覚えた。

以前舞台バージョンの映画を観たことがあったが、本作品を鑑賞してみたところ、ミュージカルという形態もこの作品に非常に似つかわしく思えた。歌とセリフのバランスも絶妙であり、俳優陣も美声ぞろいで悪役の歌声すらも心地よい。

これまで主人公シラノは、大きな鼻にコンプレックスを持っているというストーリーであったが、本作品ではそのコンプレックスの理由を大胆に変更してみせている。

シラノ役を演じるのはピーター・ディンクレイジ、現在52歳である彼の身長は132センチである。小さな体格を活かした役柄で、多くの映画やテレビ作品でキャリアを築いてきた。

今作の「シラノ」のコンプレックスは低身長であるわけだが、この設定の変更は非常な英断である。

鼻が大きいことを気にしている、という設定は長年引き継がれていたものだが、万人にとって共感できるものとは限らないかもしれない。舞台では作り物の大きな醜い鼻をつけていても、実際の役者は美男子で、舞台が終わればその大きな鼻を取り外すのだと想像し、ジョー・ライト監督は虚構にすぎない事実への物足りなさを抱いていたようである。

本作品の主演であるピーターとヒロイン役を演じるヘイリー・ベネットによって、すでに上演されていたミュージカルを目撃したライト監督は感銘を受けたという。作り物の鼻ではないピーターその人の存在と、彼の醸し出す内面や経験が、本物のシラノを生み出したことを瞬時に理解したのだろう。

ピーター・ディンクレイジの妻、エリカ・シュミットが手がけたこのミュージカルにたちまち魅了されたライト監督は、その映画化を熱望した。コロナが猛威をふるう最中に多くの困難を乗り越えながら、新しく生まれ変わったミュージカル映画「シラノ」が誕生したのである。

上質な楽曲、俳優陣の歌唱力や表現に魅了される。古い時代の設定でありながら現代にも通用する世界観、普遍性ある恋物語に加え、豪華絢爛の衣装や背景など時代物ならではのお楽しみも満載である。

すでに2年以上、いまだ猛威を振るうウィルスに世界も人の心も閉ざされてしまいがちである。それでも創作や表現を諦めないクリエイター達の気概に勇気をもらうことができる。多くの人々の愛と情熱が込められた本作品、新しい「シラノ」を堪能していただきたい。

予告動画

『シラノ』


出演:ピーター・ディンクレイジ、ヘイリー・ベネット、ケルヴィン・ハリソン・
Jr
監督:ジョー・ライト
脚本:エリカ・シュミット
原題: CYRANO
上映時間: 124分
配給 東宝東和
公式サイト
©2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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