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ヒューマンミステリー『瞳をとじて』 作品レビュー

  • 2024年1月29日

作品紹介

名作『ミツバチのささやき』、『エル・スール』で知られるスペインの巨匠 ビクトル・エリセ監督、31年ぶりの新作がついに公開。

1985年、伝説のミニシアター“シネ・ヴィヴァン・六本木”で記録的な動員を打ち立て社会現象を巻き起こし、今もなおタイムレスな名作として多くの映画ファンの「人生ベスト」に選ばれる『ミツバチのささやき』のビクトル・エリセ監督が、第76回カンヌ国際映画祭で31年ぶりの長編新作をカンヌプレミア部門にて発表。
御年83歳、スペインが誇る伝説の巨匠復活のニュースに世界が騒然、待望の新作に歓喜する声が溢れた。カンヌで公開されると、「エリセの切実で完璧な帰還」(VARAETY)、 「30年以上待つだけの価値ある傑作」(eCartelera)と評されるなど、絶賛を集めた。長らくの不在を経て語られるのは、元・映画監督と謎の失踪を遂げたかつての人気俳優、ふたりの記憶をめぐる 【人生】 と 【映画】の物語。


監督のデビュー作『ミツバチのささやき』撮影当時5歳で見出され主演に抜擢されたアナ・トレントが50年ぶりに同じく“アナ”の名前を持つ女性を演じることも話題となりファンを再び沸かせている。彼女はかつて失踪した元人気俳優の娘役という重要な役どころを演じる。

ストーリー

かつての親友は、なぜ姿を消したのか――。未完のフィルムが呼び起こす、記憶を巡るヒューマンミステリー映画『別れのまなざし』の撮影中に主演俳優フリオ・アレナスが失踪した。
それから22年、当時の映画監督でありフリオの親友でもあったミゲルはかつての人気俳優失踪事件の謎を追うTV番組から証言者として出演依頼を受ける。取材協力するミゲルだったが次第にフリオと過ごした青春時代を、そして自らの半生を追想していく。そして番組終了後、一通の思わぬ情報が寄せられた。 
「フリオによく似た男が海辺の施設にいる」――。

作品レビュー

冒頭から独特の構成になっている。とある古い屋敷で人探しを依頼する老人とその仕事を引き受ける男性の会話から物語は始まるが、その場面は、「映画内の映画のストーリー」という位置づけであり、本作品のストーリーは別にある。

その映画内の映画場面で人探しを引き受ける役の俳優は、22年前、撮影中に突如失踪した。映画は未完の作品となり俳優フリオは死亡したとみなされたが、遺体は見つかっていない。非常に謎めいた事件である。

当時の映画監督であり、フリオの親友であったミゲルはその後、映画監督よりも作家として活動し、海に近い地域で気の置けない仲間のそばで気ままな生活を送っていた。長い年月の後、事件の謎に迫るテレビ番組の証言者として出演することになった。

フリオが本当に亡くなっているのか、あるいはどこかでまだ生きているのか?なぜ彼は撮影の途中で突然姿を消したのか?多くの謎がいまだ残されており、番組をきっかけに当時関わっていた人々へ連絡を取り始めるミゲル。自身やフリオの人生を丁寧に振り返り、真相を求め旅をする。

ひとつずつ現れる扉を開けながら進むように、手がかりをつかんでゆくミゲルを通して観客も謎解きをしているような気持になるのではないだろうか。物語の主題はミステリーのようでありながら、家族や生活、老いといった複数のテーマが散りばめられ、人間ドラマの詰まったストーリーである。

やがてミゲルはある事実へとたどり着き、謎の真相へ迫るものの、さらに別の謎が深まってゆくのである。

冒頭とつながる思いがけないラストシーンが印象的であり、壮大な抒情詩のような作品であった。

『瞳をとじて』


監督・脚本:ビクトル・エリセ 『ミツバチのささやき』 『エル・スール』 『マルメロの陽光』
出演:マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント 『ミツバチのささやき』
原題:Cerrar los ojos/英題:Close your Eyes/2023年/スペイン/カラー/ビスタ/4K 5.1chデジタル/169分/字幕翻訳:原田りえ
公式サイト
© 2023 La Mirada del Adiós A.I.E, Tandem Films S.L., Nautilus Films S.L., Pecado Films S.L., Pampa Films S.A.

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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