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『メイ・ディセンバー ゆれる真実』作品レビュー

作品紹介

第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、第96回アカデミー賞®脚本賞ノミネート、『キャロル』のトッド・ヘインズ最新作で、ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーアが豪華共演を果たし、昨年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品・プレミア上映され話題をさらった映画。
36歳女性と13歳少年が起こした“メイ・ディセンバー事件”を追う、ある女優。
よそ者である彼女の憶測と、当事者の本心が絡み合い、観ている貴方の真実も ゆらぎ始める――。

ストーリー

当時36歳の女性グレイシーはアルバイト先で知り合った13歳の少年と情事におよび実刑となった。少年との子供を獄中で出産し、刑期を終えてふたりは結婚。夫婦は周囲に愛され平穏な日々を送っていた。ところが23年後、事件の映画化が決定し、女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)が、映画のモデルになったグレイシー(ジュリアン・ムーア)とジョー(チャールズ・メルトン)を訪ねる。彼らと行動を共にし、調査する中で見え隠れする、あの時の真相と、現在の秘められた感情。そこにある“歪み”はやがてエリザベスをも変えていく……。
『エデンより彼方に』『キャロル』など、重厚かつセンセーショナルな作品で熱狂的なファンをもつ異才トッド・ヘインズ監督が、ふたりのオスカー女優とタッグを組み、観る者すべてを“抜け出せない万華鏡”に誘う衝撃のドラマを描き出した。当事者の言葉と表情は“真実”なのか? 事件への考察を、粉々に打ち砕く結末は、貴方の価値観に亀裂を入れる。

作品レビュー

トッド・ヘインズ監督の最新作『メイ・ディセンバー ゆれる真実』は、実力派女優ジュリアン・ムーアとナタリー・ポートマンが共演する魅惑的な実話を基にしたドラマ。

映画は、23年前にスキャンダルを巻き起こした年の差カップルの過去を掘り起こすストーリーで、ナタリー・ポートマン演じるエリザベスが役作りのためにグレイシー(ジュリアン・ムーア)とジョー(チャールズ・メルトン)の元を訪れるところから始まる。

エリザベスはグレイシーの仕草や話し方を細かく観察し、その過程で二人の女性の間に緊張が生まれる。エリザベスは冷酷かつ計算高いキャラクターであり、グレイシーもまた過去のスキャンダルに縛られた未成熟な女性として描かれている。23歳年下の夫・ジョーは、感情的な側面で物語を支え、彼の演技が映画の重みを増している。

映画全体は、ブラックコメディの要素を持ちながらも深い悲しみを内包し、現実と虚構の境界へと観客を引き込んでいく。ヘインズ監督は、ビジュアルと音楽の両面で印象的なシーンを多く取り入れ、観る者に強い印象を残している。

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』は、表面的には奇妙なトライアングルを映すが、深く考えさせる作品だ。観賞後も長く記憶に残り、そのテーマやキャラクターについて思いを巡らせることになるだろう。単なるエンターテインメントにとどまらず、観る者に問いかける力を持つ不思議な映画である。

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』
監督:トッド・ヘインズ(『キャロル』)
脚本:サミー・バーチ
原案:サミー・バーチ、アレックス・メヒャニク
出演:ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーア、チャールズ・メルトン
配給:ハピネットファントム・スタジオ 2023年|アメリカ|カラー|アメリカンビスタ|5.1ch|英語|
原題:MAY DECEMBER|117分|R15+
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投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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