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奇跡の物語「アーニャは、きっと来る」作品レビュー

  • 2020年11月9日

作品紹介

ナチス占領下、フランス・ピレネー山脈の麓の小さな村で起きた奇跡の物語。少年はユダヤ人の子供たちを救うことができるのか。
1942年、第二次世界大戦さなかのフランス。
ピレネー山脈の麓の小さな村に住む羊飼いの少年・ジョーは、平和な日常を送っていた。しかしある日、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人・ベンジャミンと知り合い、ユダヤ人の子供たちを山の向こうのスペインに逃す救出作戦に協力することになる。そんな中、ついにのどかな村にもナチスがやって来た。
村人たちを巻き込んだ作戦のゆくえは―。
ジョーは父親や祖父、ユダヤ人、ドイツ兵らとのかかわりの中で様々な気づきを得て、世界を広げる。
少年は、戦時下での思いもよらぬ出来事を経験しながら、大人へと一歩ずつ近づいていくのだ―。人種差別や迫害を描いた従来のナチス映画とは趣の異なる、生きることの素晴らしさと希望を描いた異色の映画が誕生した。

ノア・シュナップの熱演と、彼を支える個性豊かな俳優陣。
主役のジョー役は、Netflixテレビドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で世界的に人気急上昇中のノア・シュナップが大抜擢され熱演した。彼の脇を固めるジャン・レノ、アンジェリカ・ヒューストンのベテラン2人が、ユダヤ人の子どもたちを救わなければいけないという重責と苦悩をいぶし銀の演技で表現している。ナチス・ドイツ将校の役に人間味を持ち込こんだ演技を魅せたドイツの名優、トーマス・クレッチマンも印象に残る。

スピルバーグ監督により映画化された『戦火の馬』の原作者が贈る“希望の物語”
 イギリス児童文学を代表する作家のマイケル・モーパーゴは、戦争を舞台に人間本来の姿やその本質を、市井の人々を通して問い続けてきた。原作「アーニャは、きっと来る」は1990年にイギリスで出版されて以来、世界中で慣れ親しまれている作品である。暗い歴史に焦点を当てるだけではなく、羊飼いの少年の成長を雄大なピレネーの自然を背景に描き、様々な視点からアプローチした意欲作と言える。少年は希望を捨てずにアーニャを待ち続ける―

ストーリー

フランス・ピレネー山脈の麓の小さな村に住む13歳の少年・ジョーは、生活の大半を羊飼いとして過ごしていた。ある日ユダヤ人・ベンジャミンと出会う。彼は秘密裏にユダヤ人の子どもたちを安全なスペインへ逃がすという危険な計画を企てていた。ジョーはこの計画を手伝うことになる。かたやジョーは個人的な悲しみの感情を共有することで、ドイツ軍の下士官と親しくなっていた。ドイツの労働収容所から帰国したジョーの父親は荒れていたが、ジョーのユダヤ人救出作戦への関与が明らかになると協力を約束する。村人たち一丸となって子どもたちを逃す日が迫ってくるが、ベンジャミンが待つ娘アーニャは来ない。救出作戦は成功するのか…アーニャは村に現れるのかー。

作品レビュー

第二次世界大戦中、ドイツ軍によるユダヤ人迫害政策のさなかの時代、南フランスの小さな田舎町が舞台の物語である。

なにごとにおいても、地方の小さな町や村には物事の影響がさほどダイレクトではないものだが、戦時下の不穏な動きは南仏の美しい村でも例外ではなかった。

ユダヤ人への不当な差別や迫害、非情な殺戮がまかり通る時代の描写に心が痛んだ。後になれば狂気としか思えない政策、人々の行動が現実に行われていたことを思い出させられぞっとする。

物語の主人公は聡明で勇敢な13歳の少年、ジョー。見ていてすごく、巻き込まれた感も拭えないが年若いながらも分別があり、心のまっすぐな男の子である。

なんとなく、地味なミニシアター系ポジションの映画かと想像していたが、意外な超大物俳優も出演していて驚かされた。

ストーリーも繊細で、善と悪、敵と味方が白黒わかりやすく描かれているわけではない。それはとてもリアルに感じられる。村を占拠するドイツ兵達が必ずしも悪人というわけではなく、人間味ある心優しい将校たちや村人たちとの心温まる交流の場面もある。

戦時、軍人となる人々にも家族があり、時に思い悩む日々もあり、普通の心ある人々なのだと思い出させられる。

個人的には、舞台となった村の風景の素晴らしさにも釘付けになった。ピレネー山脈の大自然の背景は、まるでかつての名作アニメ「アルプスの少女ハイジ」の映像化かとも見まごうほどの美しさである。

村で羊飼いをするジョーやその家族も、誰が味方で友人で、誰が正しく、誰が悪人であるかなどと、明確な線引きなどできないままに、その時代、その地域のなかで立ち回ってゆくところも見どころである。

正義と良心、勇気に後押しされる気高い心がいかなる場所でも育まれている。小さな田舎の人々が織りなすスリリングな救出劇のゆくえを見届けていただきたい。

予告動画

「アーニャは、きっと来る」

監督:ベン・クックソン
脚本:トビー・トーレス ベン・クックソン
原作:マイケル・モーパーゴ 「アーニャは、きっと来る」(評論社刊)
出演:ノア・シュナップ、トーマス・クレッチマン、フレデリック・シュミット、トーマス・レマルキス、ジャン・レノ、アンジェリカ・ヒューストン
2019年/イギリス・ベルギー/英語/109分/カラー/ヨーロッパビスタ/5.1ch
原題:Waiting for Anya/
配給:ショウゲート
© Goldfinch Family Films Limited 2019

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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