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家族の再起物語『ふたりのマエストロ』 作品レビュー

  • 2023年8月11日

作品紹介

父と息子は渾身のタクトで自らの音楽を再び輝かせる!コーダ あいのうた』製作陣が贈る、ふぞろいな家族の再起の物語。
主人公ドニを演じるのは『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』で実生活でも夫婦であるシャルロットと共演・監督を果たしたイヴァン・アタル。ピエール・アルディティやミュウ=ミュウなどフランスを代表する名優たちが家族の葛藤を見事に描き出す。
監督は俳優としても活躍するブリュノ・シッシュ。プロデューサーにはアカデミー賞作品賞受賞『
コーダ あいのうた』のフィリップ・ルスレらが参加。
数々の名曲が親子の対峙と再起の物語を彩り、世界最高峰〈ミラノ・スカラ座〉の豪華絢爛、大迫力の熱い演奏シーンは必見! 初めて二人が親子として向き合った時、誰も見たことのない驚きのステージが生まれる

ストーリー

世界最高峰<ミラノ・スカラ座>からの音楽監督への就任依頼。父が生涯をかけて掴んだオファーは、息子宛の誤報だった——
父も息子も、パリの華やかなクラシック界で活躍する指揮者の親子。父・フランソワ・デュマールは、輝かしいキャリアを誇る大ベテラン。
息子のドニ・デュマールも指揮者として才能を発揮し、今や飛ぶ鳥を落とす勢い。ある日、父へ一本の電話が。それは夢にまで見た世界最高峰<ミラノ・スカラ座>の音楽監督就任の依頼だった。家族全員が父の快挙を祝福するが、息子の表情は険しい。
父と息子の間には、不協和音が鳴り響いているのだ。翌日、ドニにスカラ座の総裁から呼び出しが。なんと父への依頼は“デュマール違い”で、息子への依頼の誤りだったことを告げられる。ドニは浮き足立つ父に真実を伝えなければいけない苦渋の選択を迫られる――。

作品レビュー

父と息子という関係性のみでもややこしさを抱えているものだが、そこへ互いにアーティストで、同じ職業を選んでいたならば・・・

指揮者として活躍する息子の成功を喜べない父。父も長年にわたる立派なキャリアを積み重ねている。それでもまだ、自分もさらなる高みを目指して活躍したい気持ちは強く、年齢を重ねつつも野心は少しも衰えていないようである。

賞を受賞したばかりの息子も、父親へ寄せられた名誉あるポジションの仕事に嫉妬の色を隠せない。アーティストというのはやはり自身が最前線で活躍していたいようだ。

間もなく父親へのオファーは間違いで、本当は息子への打診であったことが判明する。指揮者ならば誰もが熱望するというミラノ・スカラ座でのポストは、父親が40年もの歳月待ち続けた生涯最高の機会であったが、息子もまたその座へ憧れを抱き続けてきた。

それにしても、オファーした側の単純なミスなのに、その尻ぬぐいを本来のオファー相手である息子指揮者へ丸投げするのはミラノ・スカラ座の傲慢さも甚だしいと感じる。ミスした側が方々へ謝罪してまわるのが筋だと思うが、息子と父なんだから話しておいて!といういい加減さは外国だからだろうか。ストーリーの設定上、仕方ないのかもしれないが・・・

父と息子のこじれ気味な感情の交錯は、その他の複雑な人間関係、夫と妻、夫と元妻、今カノ、息子、も交えながらさらにこじれてゆく。息子は父親を傷つけたくない気持ちから本当のことを言い出せないまま時間だけが過ぎてゆく。

そんな中、やがて彼らは本音で向き合わざるを得なくなるのだが・・・

こじれ切った家族関係がラストでは意表をつく展開となり、感動的である。個人的には、傲慢でいい加減なミラノ・スカラ座に対しても胸がすく思いがした。

栄光を掴もうとする息子、しかし父親もまた自分を輝かせながら親子のコミュニケーションが織りなされる。爽快で本来の姿へ立ち返るような家族のストーリーを楽しんでいただきたい。

『ふたりのマエストロ』


監督:ブリュノ・シッシュ
出演:イヴァン・アタル、ピエール・アルディティ
ミュウ=ミュウ、キャロリーヌ・アングラーデ、パスカル・アルビロ、ニルス・オトナン=ジラール
原題:MAESTRO(S)/2022/フランス/88分/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:松岡葉子
配給: GAGA
公式サイト
© 2022 VENDÔME FILMS – ORANGE STUDIO – APOLLO FILMS

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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