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『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』作品レビュー

作品紹介

ようこそ、最先端のカオスへ。マルチバースとカンフーで世界を救え?!
スタジオA24が贈る空前絶後のアクション・エンターテインメント、降臨。
世界を救う新たなヒーロー誕生! その素顔は「フツーのおばさん」! ある日突然、「宇宙一の悪を倒せるのは君だけ」と説得されたエヴリンは、マルチバースに飛び込み、カンフーの達人である別の宇宙の〈私〉の力を得て、全宇宙を救うために闘う!

奇想天外MAXの作品を世に送り出したのは、ルッソ兄弟。スーパーヒットシリーズ『アベンジャーズ』の完結編『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』を手掛けたプロデューサーだ。ハリウッドの頂点に立つ彼らをカオスの世界へと引き込んだのは、カルトの限界を突破したと人気大爆発の『スイス・アーミー・マン』で、サンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞した2人組〈ダニエルズ〉監督。エヴリンを演じるのは、60歳にして華麗なるカンフーを披露する『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のミシェル・ヨー。映画ファンの絶大なる信頼を獲得するA24が、メジャースタジオに負けない興行成績をはじき出した、全人類が初めて体験するアクション・エンターテインメント!

ストーリー

エヴリンは疲れ果てていた。経営するコインランドリーの決算に、国税局からイチャモンをつけられて、税金の申告をやり直さなければならない。父親はボケてきたのに相変わらず頑固で介護も大変。娘のジョイは元々反抗的な上に、恋人のベッキーの存在を理解しない母親に不満を抱いている。夫のウェイモンドは優しいが、優柔不断で頼りにならない。

そんな中、国税局で役人に絞られていると、突然夫が豹変。別の宇宙のウェイモンドだと名乗る彼はエヴリンに、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だ」と宣告!まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ! 全宇宙を舞台にした闘いが幕を開ける!

作品レビュー

パンデミックが始まって以来、劇場公開される映画の本数は明らかに減ってきている。映画館での公開をキャンセルし、ネットでの配信スルーに変更される例もある。そんな現状の中で、映画館と映画の配給システムを救ったといわれているのが『トップガン マーヴェリック』の空前の大ヒット。その勢いに続けと今注目されているのが『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(以下、『EEAAO』)だ。

『EEAAO』はアメリカで興行収入1億ドルを超える大ヒット。本年度の賞レースを牽引し、アカデミー賞最有力と目されるほどの注目度を集めている。この作品の仕掛け役は、数々のインディーズ映画をヒットに導いている人気スタジオA24。そのA24配給の『スイス・アーミー・マン』(2016)で高い評価を集めたダニエル・クワンとダニエル・シャイナート(ダニエルズとして知られる)の映画制作デュオが再びA24とタッグを組み、赤字コインランドリーを経営する普通のおばさんが世界を救う、一見、風変わりな物語を完成させた。

主演のミシェル・ヨーは史上最高のカンフー・スターの一人であり、その存在感と武術家としての技量は、80年代の香港映画で遺憾なく発揮されてきた。そして何よりも、『インディー・ジョーンズ/魔宮の伝説』で、ハリソン・フォードに拾われる戦災孤児の役で一躍ブレイクし、日本でもファンクラブができるほどの人気を集めた元子役のキー・ホイ・クァンが今作でメジャー映画に久々の復帰。ミシェルとキー・ホイがこの映画で旅立つのは、無限の可能性にあふれるマルチバース(多元宇宙)の世界だ。

赤字コインランドリーを経営する中国人移民のエブリン(ミシェル・ヨー)は、ちょっとした税金問題に巻き込まれる、あるいは巻き込まれないというストーリーが展開する。しかし国税局での面談に向かう途中のエレベーターの中で、夫のウェイモンド(キー・ホイ)が多元宇宙の存在を彼女に告げると、彼女の退屈で繰り返しの多い生活は一変。全宇宙にカオスをもたらす闇の王ジョブ・トゥパキを止められるのは、他でもないエブリンただひとり。

ダニエルズはかつて、あらゆる可能性を包含する多元宇宙を題材に、6分間のショートフィルムを制作したことがある。それが2014年のことだ。その2年後の『スイス・アーミー・マン』公開以降、ダニエルズは多元宇宙を追求する機会に飢えていた。そんなときに『EEAAO』の話が舞い込んできて、しかも製作には『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』のルッソ兄弟が名を連ねている。

「あのとき、こうしていれば……」誰もが考える“もしも”の世界をダイナミックに描くとともに、ミシェル・ヨーの原点であるカンフーを取り入れた最高のアクション。人生に別の可能性があったとしても、今ある人生の価値を大切にしようと思わせてくれる最高に野心的な作品だ。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』


監督:ダニエルズ『スイス・アーミー・マン』
出演:ミシェル・ヨー『シャン・チー/テン・リングスの伝説』、キー・ホイ・クァン『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』、ジェイミー・リー・カーティス『ハロウィン』シリーズ
製作:アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』
原題:Everything Everywhere All At Once/2022年/アメリカ/ビスタ/5.1chデジタル/140分/字幕翻訳:林完治
公式サイト
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投稿者プロフィール

Hayato Otsuki
1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「映画board」など。得意分野はアクション、ファンタジー。
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