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スタジオA24が贈る最新ホラー『X エックス』 作品レビュー

作品紹介

全米で公開されると、ホラー界の重鎮スティーヴン・キングや、『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライトが本作への熱い支持を表明。アメリカの映画レビューサイトRotten Tomatoesでは96%フレッシュを達成し「今年最高評価のホラー映画」と評価された。有力映画サイトでも「狂ったように面白い!」(Bloody Disgusting)、「恐怖のアトラクションのような映画」(Variety)、「血まみれでメチャクチャ楽しい映画」(The A.V. Club)などの絶賛評で迎えられ、さらに本作が3部作になることが発表されると、A24映画として初のシリーズ化作品としても注目を集めている。

ストーリー

1979 年、テキサス。
⼥優のマキシーンとそのマネージャーで敏腕プロデューサーのウェイン、ブロンド⼥優のボビー・リンとベトナム帰還兵で俳優のジャクソン、そして⾃主映画監督の学⽣RJと、その彼⼥で録⾳担当の学⽣ロレインの3 組のカップルは、映画撮影のために借りた⽥舎の農場へ向かう。彼らが撮影する映画のタイトルは「農場の娘たち」。この映画でドル箱を狙う――。6 ⼈の野⼼はむきだしだ。

そんな彼らを農場で待ち受けたのは、みすぼらしい⽼⼈のハワードだった。彼らを宿泊場所として提供した納屋へ案内する。⼀⽅、マキシーンは、⺟屋の窓ガラスからこちらを⾒つめるハワードの妻である⽼婆パールと⽬があってしまう……。そう、3 組のカップルが踏み⼊れたのは、史上最⾼齢の殺⼈夫婦が棲む家だった――

作品レビュー

タイ・ウェスト監督の『X エックス』は、ホラー映画の枠を超えた未知の恐怖にあふれている。そのテイストは70年代のインディペンデントホラーを彷彿とさせるだけでなく、その当時の映画製作の精神を現代に蘇らせることに成功している意欲作だ。

舞台となるのはテキサス州の荒涼とした大地。映画製作者の若いカップル3組は、低予算のハードコア・ポルノを撮影するため、テキサスの人里離れた農場に足を運ぶ。その農場を所有するのは一見不気味な老夫婦。若い映画人たちは、農場の一角にある納屋を借り上げて、そこでポルノを撮影しようとするが……。

映画序盤の雰囲気からは『悪魔のいけにえ』を想起させ、また農場の中で起きる説明不能の体験は『ドント・ブリーズ』を思い起こさせる。新旧ホラーの良いとこ取りといった感じの映画なのだが、なによりもポルノとホラー(そしてスラッシャー)の融合というのが新機軸を打ち出している。

若々しく旺盛な男女とは対照に、今では身も心も老いてしまった夫婦。若者たちと老夫婦の対峙を時にユーモラスに、時にシニカルに描いているのが面白くて恐ろしい。その結末は、ありきたりなホラー映画のように予測できるものではない。『サスペリア』や『ハイ・ライフ』で一躍スクリーム・クイーンの仲間入りを果たしたミア・ゴスのエッジの効いた演技にも注目してほしい。

予告動画

『X エックス』


監督・脚本:タイ・ウェスト
出演:ミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、ブリタニー・スノウ、スコット・メスカディ(キッド・カディ)、マーティン・ヘンダーソン、オーウェン・キャンベル、ステファン・ウレ
提供:ハピネットファントム・スタジオ WOWOW
配給:ハピネットファントム・スタジオ
原題:X|2022年|アメリカ映画|上映時間:105分|
公式サイト
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投稿者プロフィール

Hayato Otsuki
1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「映画board」など。得意分野はアクション、ファンタジー。
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