“驚愕の全編ワンカット映像 戦場に密着する異次元の映画突入体験”
『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞監督賞を受賞、ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの007シリーズをスタイリッシュに一新し、全世界を熱狂させたサム・メンデス監督による最新作『1917』。 本作は、第一次世界大戦の“若きイギリス兵のある一日”を壮大なスケールと深いドラマで、且つリア ルタイムで描く。
第一次世界大戦真っ只中の1917年のある朝、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクにひとつの重要な任務が命じられる。それは一触即発の最前線にいる1600人の味方に、明朝までに作戦中止の命令を届けること。 進行する先には罠が張り巡らされており、さらに1600人の中にはブレイクの兄も配属されてい たのだ。 戦場を駆け抜け、この伝令が間に合わなければ、兄を含めた味方兵士全員が命を落とし、イギリスは戦いに敗北することになる― 刻々とタイムリミットが迫る中、2人の危険かつ困難なミッションが始まる・・・
映像革命とも呼べる、まったく新しい戦争映画が誕生した。メガホンを握るのは、アカデミー賞受賞歴を誇る、サム・メンデス監督だ。長編デビュー作『アメリカン・ビューティー』(1999)では、アカデミー賞作品賞を含む5部門で受賞。その後も、豪華キャスト共演の『ロード・トゥ・パケーション』(2002)、レオナルド・ディカプリオと、彼の当時の妻だったケイト・ウィンスレットという『タイタニック』(1997)コンビ再共演の『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2008)など、幅広く監督している。彼の監督する映画は、そのほとんどがアカデミー賞、ゴールデングローブ賞など権威ある映画賞を獲得している、まさに業界トップクラスの映画監督だ。
そんな彼が今回挑んだのは、第一次世界大戦を舞台とする映画だった。それも全編ワンカット撮影の極めて難しい挑戦である。とはいえ、実際には全編をワンカットで撮影したわけではなく、あくまで全編ワンカット“風”にみせる手法であり、これは『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)と同じテクニックである。つまり実際には、まるで1回の長回しであるように錯覚させる、疑似的な手法を用いているのだ。しかし、ワンシーンごとに長回しを多用していることは事実であり、流れるようなカメラワークは映画への没入効果をさらに高めてくれる。
主人公の若き伝令兵2人を常に捉えながら、“見えない敵”に怯える恐怖を克明に映し出している。塹壕をひた歩き、廃墟と化した市街地を進み、敵軍の砲撃をかいくぐりながら、私たち観客は彼ら伝令兵と一体となって、地獄の戦場を駆け抜ける。この“見えない敵”の恐怖というは、クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』(2017)を彷彿させるし、作品全体のトーンも非常に“ノーラン的”な映画である。それもそのはずで、サム・メンデス監督はクリストファー・ノーラン監督の作風にたびたび影響されており、メンデス監督の『007 スカイフォール』(2012)は、『ダークナイト』(2008)などノーラン作品からの強い影響を感じるはずだ。
そういう撮影テクニックの凄さはもちろんだが、本作の魅力はそれだけではない。まずはキャストであるが、脇を固めるのは『キングスマン』(2014)のコリン・ファース、『シャザム!』(2019)のマーク・ストロング、『ドクター・ストレンジ』(2016)のベネディクト・カンバーバッチなど、豪華キャストが共演。彼らの出演時間こそ短いものの、若き伝令兵の旅路の中で、圧倒的な存在感をもって登場する。
そして物語も、この作品を語る上では見逃せない要素である。基本的には主人公2人が敵地の奥を進む様子が映されるが、その旅路の中で、情緒をかき乱すような悲劇、そして束の間の安らぎなど、極限状態の中でさまざまな出来事が交錯する。そして最後には、達成感と感動に満ちたクライマックスを迎える。まさに本作は、新機軸の映像体験を約束してくれる。
「1917 命をかけた伝令」
監督:サム・メンデス
脚本:サム・メンデス、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
製作:サム・メンデス、ピッパ・ハリス
撮影監督:ロジャー・ディーキンス
出演:ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロング、コリン・ファース、アンドリュー・スコットほか
上映時間: 119分
原題: 1917
公式サイト
配給:東宝東和
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