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フランスNO.1の大ヒット映画『パリタクシー』作品レビュー

  • 2023年3月20日

作品紹介

終活に向かうマダムの依頼は、人生を過ごしたパリを横断する“寄り道”。だがその道のりは「まさか」の連続で・・・!?

フランス初登場新作NO.1の大ヒット!世界中の映画祭から喝采を浴びた映画『Une belle course(原題)』邦題『パリタクシー』。
タクシー運転手のシャルルを演じるのは、フランスを代表する大人気コメディアンのダニー・ブーン。マドレーヌには、最もキャリアの長い国民的シャンソン歌手で、仏最高勲章であるレジオン・ドヌール勲章を受賞したリーヌ・ルノー。実生活でも親交が深い二人の真実の絆が観る者の心を温める。監督・脚本は『戦場のアリア』でセザール賞脚本賞にノミネートされたクリスチャン・カリオン。エッフェル塔、シャンゼリゼ通り、洒落たビストロ──もう一人の主人公であるパリのエレガントな美しさに浸れる映像も見逃せない。 いつの間にかシャルルの仕事は、上品なマダムの数奇な運命を解き明かす旅に変わっていた。果たして、そのクライマックスに待つものとは──? 驚きながら、笑って、泣いて!オープニングからラストまで、「まさか」がぎっしり詰まった意外すぎる感動作!

ストーリー

パリのタクシー運転手のシャルルは、人生最大の危機を迎えていた。金なし、休みなし、免停寸前。このままでは最愛の妻と娘にも会わせる顔がない。そんな彼のもとに偶然、あるマダムをパリの反対側まで送るという依頼が舞い込む。92歳のマダムの名はマドレーヌ。終活に向かう彼女はシャルルにお願いをする、“ねぇ、寄り道してくれない?”。人生を過ごしたパリの街には秘密がいっぱい。寄り道をする度、並外れたマドレーヌの過去が明かされていく。そして単純だったはずのドライブは、いつしか2人の人生を大きく動かす驚愕の旅へと変貌していく!

作品レビュー

旅へ出たい気持ちにさせられるかもしれない。パリへ飛びたいと願うか、見知らぬ街へか、あるいは記憶や心の旅へだろうか。

本作の主人公、タクシー運転手のシャルルは生活に困窮しつつあり、免許停止寸前のぱっとしない中年男性である。仕事にも人生にも喜びを見出せず苦しい状況が続いるせいか、いつも不機嫌な顔つきである。

そんな彼が出会ったのは老女マドレーヌ、明るくチャーミングな92歳。老人ホームで生活を始める彼女を施設まで送る仕事を引き受けたところから物語は始まる。

生き生きとした眼差しのマドレーヌは陽気な女性で、「私は何歳に見える?待って、眼鏡をはずすから。」といくつになっても女性はこの質問をするのかと半ば呆れるが、その天真爛漫さが微笑ましくもある。

その日会ったばかりのシャルルへ物怖じせずに話しかけ、車内では若き日の恋バナでひとり盛り上がり、いつしかシャルルも彼女のペースに巻き込まれてゆくのだが・・・

あちこちに寄り道をしたがる注文の多い元気なご年配マダム、彼女の語る過去は想像を超えて痛みと苦難に見舞われ波乱万丈である。人生に疲弊し冴えない顔つきをしていたシャルルも次第にマドレーヌの話に引き込まれ、彼女へ心を開いてゆくのも自然に映る。

マドレーヌの人生に触れたことが、運転手シャルルにも響いたのであろう。老女と過ごすうちにだんだんと彼の素直な優しい性格が引き出されてゆく。一緒に笑い合い、シャルルも表情豊かになり、ふたりに絆が生まれていくのを見るうちに、自分も彼らと旅をしている気分にさせられる。

彼女がほとんど赤裸々に、驚くような過去のエピソードを明かしながら自分をオープンにしていたことでシャルルも本来の彼の素直さや前向きな部分が引き出されたのだろうか。人との出会いは人の心や行動を変えられるのだと感じさせられた。次第に離れがたく思えるふたりの関係性やクライマックスのスピーディーな展開に夢中で見入ってしまうはずである。

永遠の憧れの街、パリの風景を心地よく眺めながら、映画とはこうあるべきであり、王道とも呼べる良い作品を鑑賞できた満足感に浸ることのできる秀作であった。

『パリタクシー』


監督:クリスチャン・カリオン
出演:リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン
2022年/フランス語/91分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:Une Belle Course
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
配給:松竹
公式サイト

© 2022 – UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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