世界最高峰プロレス団体WWEにハチャメチャ家族が立ち向かう 心温まるトゥルーストーリー! プロレスファン待望!伝説レスラー ドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソンがスクリーンに復活!
一風変わった家族のガッツ溢れるストーリー。それはイギリス映画特有のジャンルとも言える。名匠マイク・リーやケン・ローチが長年描いてきたワーキングクラスの英国ファミリーは決して裕福ではないが互いに本音でぶつかり合い、笑いと涙に満ちている。ブリティッシュ・フィルムはその生き様をユーモラスに、そしておおらかに謳いあげてきた。そこにはハリウッド映画にはなかなか出せない、身体をはった泥臭ささと虚飾を寄せつけない堅実さがみてとれる。 今このジャンルに、新たな物語が刻まれた。その魅惑的なタイトルは『ファイティング・ファミリー』。実話に基づいたこの作品、レスリングに全てを捧げたある家族の物語である。
イギリス北部ノーウィッチでレスリング・ジムを営むナイト一家はレスリングの固い絆で結ばれている。中 1 の時からリングに立って いた18才のサラヤ(フローレンス・ピュー)は特にレスリングを愛している。今はジムに通ってくる子供達にレスリングを教える日々だがいつかはWWE(ワールド・レスリング・エンターテイメント)の試合に出て一家を盛り上げたいと願う健気な娘だ。
兄のザック(ジ ャック・ロウデン)もプロレス命。だが彼は愛する彼女と結婚をし、普通の家庭も持ちたい。そんな兄妹に転機が訪れる。トレーナ ーのハッチ(ヴィンス・ヴォーン)に誘われ、WWE のトライアウトに参加する。そこで二人が尊敬してやまない、かのドウェイン・ジョンソンとの対面を果たすのだ。大喜びでトレーニングに勤しむ兄妹だったがサラヤだけが次のステージに進み、フロリダに行くことが決まる。兄と二人で渡米したいと言い張るサラヤを、ザックが 説き伏せる。「家族みんなの為にお前一人でも行ってくれ。」 渋々承知したサラヤはリング名を「ペイジ」に決め、大好きな家族と別れてアメリカに渡る。
プロレスを通してある家族を描いた、実話ベースの物語という触れ込みであった。なんとなくイロモノ的要素を否めない感を抱きつつの鑑賞であった。
おそらくコメディ風のつくりではと予想していたものの、私も年のせいなのだろうか?どうしたわけか妙に涙腺を刺激されてやまない、泣きどおしてしまった作品だったのである。
プロレスや格闘技には特に興味もなかったが、実話をもとにしたストーリーには心打たれるエピソードがこれでもかというほど詰まっている。プロレスを愛してやまない一家、その子供たち、それぞれの思いに心熱くさせられてしまう。
主人公である娘のサラヤとその兄ザックは、プロレスに対して並ならない情熱を持ち合わせていたものの、やがて別々の道を歩んでゆく。そのいきさつや、複雑な胸中である兄ザックの立ち位置には心切なくさせられた。
主役の娘サラヤ18歳を見ていると、私にも娘がいるせいか母親としての感情移入をしてしまいがちであった。私の娘はもっと小さいものの、たとえば18歳で親元を離れ、ひとり夢に向かって奮戦しつつ、友達がいないだとか、ホームシックになる様子などを見ると、娘もやがてそんな経験をするのかもしれないなどと想像して泣けてきてしまったりする。
18歳という年齢は私が実家を出た頃と同じ年齢でもあったが、私はあれこれと面倒をみてもらえる女子寮住まいであったため、すぐに友人もできてのどかに過ごしていたものだった。
サラヤは輝かしい夢に邁進しつつも、その道のりは厳しく険しいものであったから、過酷な環境のなか、奮闘する様子は心つかまれるものであった。
数々の失敗、周囲との衝突を繰り返しつつ、サラヤは前進する。クライマックスに向け、熱い展開が繰り広げられてゆく。終盤での彼女の戦いとその結末には涙が止まらなかった。
エンディングロールでの実際の一家と思われる映像は、オリジナルの人々の雰囲気がよく再現されているのを実感できてとても良かった。ラストまで逃さずチェックすべき良作である。
出演:フローレンス・ピュー、レナ・ヘディ、ニック・フロスト、ジャック・ロウデン、ヴィンス・ヴォーン、 ドウェイン・ジョンソン 他
監督・脚本:スティーヴン・マーチャント『ローガン』
配給:パルコ、ユニバーサル映画
上映時間: 108 分
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