東野圭吾原作×鬼才・堤幸彦×篠原涼子&西島秀俊
愛するわが子の悲劇に直面し、究極の選択を迫られた夫婦ーそれは愛か、欲望か?
衝撃と感涙の東野ミステリー誕生。
離婚寸前の仮面夫婦の元に、ある日突然届いた知らせ。「娘がプールで溺れた―」。
愛するわが子は意識不明のまま、回復の見込みはないという。深く眠り続ける娘を前に、奇跡を信じる夫婦は、ある決断を下すが、そのことが次第に運命の歯車を狂わせていく―。
稀代のベストセラー作家・東野圭吾作家デビュー30周年を記念して書かれた話題の小説 「人魚の眠る家」を、
『明日の記憶』『TRICK』『天空の蜂』の堤幸彦監督が実写映画化。
二人の子を持つ播磨薫子(はりま・かおるこ:篠原涼子)とIT機器メーカーを経営する夫・和昌(かずまさ:西島秀俊)。
娘の小学校受験が終わったら、離婚すると約束した夫婦のもとに、突然の悲報が届く。
娘の瑞穂(みずほ)がプールで溺れ、意識不明になったというのだ。回復の見込みがないわが子を生かし続けるか、死を受け入れるか。究極の選択を迫られた夫婦は、和昌の会社の最先端技術を駆使して前例のない延命治療を開始する。
治療の結果、娘はただ眠っているかのように美しい姿を取り戻していくが、その姿は薫子の狂気を呼び覚まし、次第に薫子の行動はエスカレートしていく。
それは果たして愛なのか、それともただの欲望なのか。過酷な運命を背負うことになった彼らの先には、衝撃の結末が待ち受けていた――。
子供のいる親にとっては観るのが辛い作品だろう。意味ありげなオープニングのシーンから始まり、これでもかという重い展開が続く。上映の間ずっと、心の休まるひまがなかった。
まぎれもなく傑作には違いない。原作者の東野圭吾氏はむろんのこと、監督である堤幸彦氏は鬼才と呼ぶより、鬼のような人だと感じた。親の身である鑑賞者にとって、これほど容赦のない過酷な描写があるだろうか。観る人はみな、自身ならばいかなる選択をするのかを突きつけられ続ける。
篠原涼子演じる主人公、二人の子供の母親である播磨薫子に自分を重ねずにはいられなかった。事故に遭ってしまった娘、瑞穂は6歳。奇しくも私の娘と同じ年齢なのである。
我が子に対する薫子の感情、行動にあまりにも共感してしまい、心を引き裂かれ続けるような時間だった。
最新科学による医療技術によって、快方に向かっているように見える瑞穂の様子に周囲は喜ぶものの、物語はしだいにサスペンス的緊張感を帯びてくる。
なりふりかまわない薫子の姿が、狂気じみているとされる行動が、あますところなく自分には理解できてしまった。一体誰が、薫子を非難することができるだろうか。執着か、狂気か、信念なのか。篠原涼子の鬼気迫る演技に圧倒され続けた。
母親、子供、父親、夫婦、親の親・・・それぞれの立ち位置にも苦しいドラマが詰まっている。いずれにしても重い役割を役者陣は渾身の力で演じ切っている。
上映時間のほとんどを、私は泣きながら過ごしていた。あまりにも辛い描写に息苦しくなり、思わず嗚咽が漏れるほどに感情を揺さぶられた。
鑑賞後は半ば茫然自失となり、早く自分の子供達に会いたいと願いながら試写会場をあとにした。帰宅して、元気に遊んでいる子供達の姿にほっとした。こちらが現実で良かった、と心から安堵していた。
壮絶な苦悩を描いたストーリーは観るのに勇気が必要かもしれないが、激しく痛ましいほどの愛に心ゆさぶられ共感を覚えずにはいられない。
観るのは辛い時間でもあったが、家族が大切だという気持ちを、愛しい存在であることを、あらためて呼び覚ましてくれる作品である。
人魚の眠る家
キャスト: 篠原涼子 西島秀俊
坂口健太郎 川栄李奈 / 山口紗弥加 田中哲司
田中泯 松坂慶子
原作:東野圭吾「人魚の眠る家」(幻冬舎文庫)
脚本:篠崎絵里子
音楽:アレクシス・フレンチ
主題歌:絢香「あいことば」(A stAtion)
監督:堤幸彦
上映時間:120分
配給:松竹
(C)2018「人魚の眠る家」製作委員会