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小さな家族の大きな歴史の物語。「焼肉ドラゴン」あらすじ 感想

  • 2018年5月2日

 

 

映画紹介

日本の演劇賞を総なめした演劇界の金字塔、待望の映画化!

鄭義信作・演出による舞台『焼肉ドラゴン』は朝日舞台芸術グランプリ、読売演劇大賞および最優秀作品賞など数々の演劇賞を受賞。初日の幕が明けた後、瞬く間に口コミが広がりチケットは争奪戦になり、2011年、2016年と再再演を重ね、多くのファンを魅了しました。

そんな演劇界では一流の演出家であり、映画界では『月はどっちに出ている』、『愛を乞うひと』、『血と骨』(この3作品すべてで、キネマ旬報ベストテン脚本賞を受賞)で脚本家としても名高い鄭義信が、本作では初監督に挑みます。生涯胸に留めておきたいと絶賛された名シーン、名台詞の数々を映像の世界でいかに描くのか―記念すべき第一作目に注目が集まります。

そして長女・静花役に真木よう子、次女・梨花役に井上真央、三女・美花役に桜庭ななみと美人三姉妹が揃い、静花への思いを秘めたまま梨花と結婚する男性・哲男に大泉洋など日本を代表する豪華キャストが集結しました。

ストーリー

万国博覧会が催された1970(昭和45)年。高度経済成長に浮かれる時代の片隅。

関西の地方都市の一角で、ちいさな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む亭主・龍吉と妻・英順は、静花(真木よう子)、梨花(井上真央)、美花(桜庭ななみ)の三姉妹と一人息子・時生の6人暮らし。失くした故郷、戦争で奪われた左腕・・・。つらい過去は決して消えないけれど、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっと

えぇ日になる―”それが龍吉のいつもの口癖だ。そして店の中は、静花の幼馴染・哲男(大泉洋)など騒がしい常連客たちでいつも賑わい、ささいなことで泣いたり、笑ったりー。

そんな何が起きても強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、次第に時代の波が押し寄せてくるのだった。

 

試写の感想

時代は1969年、懐かしい昭和時代の日本の話かと思いきや、登場人物の大半が在日韓国人という設定で、劇内では韓国語が飛び交っていた。

主人公の家族は年配の韓国人夫婦、娘が3人、末に中学生の男の子がひとりだが、娘たちは長女と次女が父の連れ子、三女が母の連れ子、末の男の子は夫婦の子供・・・となんだかややこしい。

我らが北海道スター、大泉洋扮する哲夫は、井上真央演じる次女梨花の夫で、一家と生活を共にしている。婿養子的な立場なのに、なんと態度がでかいのか・・・娘達の幼馴染であるようだが、どうやらろくに働きもせず、常連客と日々飲んだくれている。

一家の営む焼肉店では家族の他にも客の出入りが多く、プライバシーの乏しい環境である。ギャラリーもいる中、大声でわめいて夫婦喧嘩をしたり、そんな夫婦を姉が仲直りをさせたり、客が楽器を演奏して、飲んで歌って騒いだり・・・と日本の普通の家庭とはいろいろ違っていて、騒々しいことこの上ないが、楽しそうでもある。それが彼らの日常なのだろう。

哲夫役の大泉洋は次女の梨花と結婚しながら、真木よう子演じる姉の静花を想い続けている。メロドラマ的な部分だが、秘めた愛というよりは丸わかりのバレバレで、その状態でよく次女と結婚したものだと思う。妻の梨花がぐれるのは無理もない。

嫉妬心絡み合うラブコメや、家族の触れ合い、絆の場面に心が温まる。個性の強い人物たちに笑える場面も多くあるが、話が進むにつれ、思いがけず事態は深刻になってゆく。末の弟、時生は学校でいじめを受けていて、子供のいる私には見るに堪えないシーンもあった。その件に対する家族の、とりわけ父親の選択には納得できなかったし、モヤモヤする部分も多かった。

韓国人であるが故に、一家は厳しい環境に置かれていた。身分や住まいが法的に安定しておらず、かと言って帰る場所のない人達。家族たちが選ぶ道のりには辛くきついものを感じた。

予想に反して気楽に観れる内容ではなかったが、人物達の生きる強さや逞しさには確かなパワーがあった。現代に生きる私達、日本人の弱まっている部分を映し出しているのかも知れない。観る人はきっと何かを感じさせられるであろう、濃い作品であった。

 

予告動画

札幌シネマフロンティア、ユナイテッドシネマ札幌にて6月22日から公開

出演: 真木よう子 井上真央 大泉 洋 
桜庭ななみ  大谷亮平 ハン・ドンギュ イム・ヒチョル 大江晋平 宇野祥平 根岸季衣 イ・ジョンウン   キム・サンホ

原作:戯曲「焼肉ドラゴン」(作:鄭 義信)
脚本・監督:鄭 義信
上映時間: 126分
オフィシャルサイト
配給:KADOKAWA ファントム・フィルム
製作:「焼肉ドラゴン」製作委員会
©2018「焼肉ドラゴン」製作委員会

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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