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第70回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞!『BPM ビート・パー・ミニット』 あらすじ 感想

  • 2018年3月10日

◆アトランタ映画批評家協会賞 外国語映画賞受賞

◆サンフランシスコ映画批評家協会賞 外国語映画賞受賞

◆ロサンゼルス映画批評家協会賞 外国語映画賞受賞

◆ニューヨーク映画批評家協会賞 外国語映画賞受賞など、

映画賞外国映画賞を続々受賞!

作品情報

第61回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『パリ20区、僕たちのクラス』の脚本・編集を担当し、監督作『イースタン・ボーイズ』では第70回ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ部門の最高賞を受賞したロバン・カンピヨ監督の長編第3作。舞台は1990年代初めのパリ。エイズの治療はまだ発展途上で、誤った知識や偏見をもたれていた。「ACT UP Paris」のメンバーたちは、新薬の研究成果を出し渋る製薬会社への襲撃や高校の教室に侵入し、コンドームの使用を訴えたり、ゲイ・プライド・パレードへ参加するなどの活動を通し、エイズ患者やHIV感染者への差別や不当な扱いに対して抗議活動を行っていた。行動派のメンバーであるショーンは、HIV陰性だが活動に参加し始めたナタンと恋に落ちる。しかし、徐々にショーンはエイズの症状が顕在化し、次第にACT UPのリーダー・チボーやメンバーたちに対して批判的な態度を取り始めていく。そんなショーンをナタンは献身的に介護するが…。

生と死、理想と現実の狭間で揺れ動きながらも、強く生きる若者たちの生き生きとした表情や行動、濃厚で鮮烈な彼らの人生に、観る者の鼓動は高鳴り、激しく心を揺さぶられる。

*ACT UPとは?➡

正式名称:the AIDS Coalition to Unleash Power =力を解き放つためのエイズ連合

アクトアップ・ニューヨークは1987年3月にニューヨークで発足したエイズ・アクティビストの団体。

エイズ政策に感染者の声を反映させることに力を入れ、差別や不当な扱いに抗議して、政府、製薬会社などに対しデモなどの直接行動に訴えることもしばしばある。現在は全米各地やフランス、インド、ネパールなどにもアクトアップが作られている。

*BPMとは ➡心拍数を表す単位。

 

試写の感想

この作品がカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、さらに国際映画批評家連盟賞を受賞、世界各地で数々の賞を受賞したことは注目すべき事実である。

 

90年代前半、舞台の中心は「アクトアップ・パリ(ACT UP-Paris)」という実在の組織。
HIV感染者を中心としたこの組織は、エイズに関して対応の遅い政府や製薬会社に対して、支援や早急な新薬開発、データ公開等を強く要請していた。

 

監督のロパン・カンピヨと脚本を手掛けたフィリップ・マンジョは実際にアクトアップのメンバーとして積極的に活動していたという。物語はフィクションだが、毎週のミーティングの様子や白熱する議論、過激な活動の描写は非常にリアリティがあった。

 

主人公は同性愛者のショーンとナタン。組織の中でも過激に行動を起こそうとする中心的存在のショーンへ、新しいメンバーのナタンは次第に惹かれていく。

 

組織は大変活発に活動していた。若く、エネルギーあふれる彼らはまるで病人とは思えないほどだが、HIV感染者を多く抱えるこの組織は、メンバーを失うこともたびたびあった。

 

日常的に死の脅威にさらされる者たちの焦燥感や憤り、恐怖が大きいがゆえに、必死で抗う生は激しく、痛々しく、そして輝くのかと感じた。

 

過去において、HIV感染者には同性愛者や性風俗にかかわる人々、薬物使用者に多かったという事実がある。その背景からか、罹患者は世の人々や権力者からの無理解、無関心、差別、偏見に苦しんでいた。

 

その当時を描いた作品が25年を過ぎた現在、高く評価されたことは時代の変化を映し出しているように思う。もしこの映画が20年前に作られていたなら、結果はまるで違っていたのではと想像してしまう。果たして製作が可能であったか?とすら思う。

 

主人公たちのセクシュアルなシーンでは、R18指定にならなかったことにも驚いた。性描写としては18禁レベルかと思うが、メッセージ性の強さや社会的側面の大きさが配慮されているのだろうか。R15指定ではあるものの、若い人こそ知るべき内容とも思う。

 

世界各地で現在も活動中のアクトアップ。多くの犠牲を払いつつも、これまでの彼らの真剣な活動によってHIVを取り巻く環境が大きく改善されたことは伝えるべき事実である。

予告動画

『BPM ビート・パー・ミニット』

3/24(土)シアターキノ他全国ロードショー

脚本・監督:ロバン・カンピヨ(『パリ20区、僕たちのクラス
』脚本・編集)、『イースタン・ボーイズ』監督)

出演:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート、アルノー・ヴァロワ、アデル・エネル

2017年/フランス/フランス語/カラー/シネマスコープ/5.1ch/143分

映倫区分:R15+

公式サイト
原題:120 battements par minute

英題:BPM (Beats Per Minute)
配給:ファントム・フィルム

© Céline Nieszawer

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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