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沈黙は、捨てた。『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』7/17全国順次公開 7/22サツゲキで公開

  • 2020年7月7日

作品紹介

深いトラウマを抱えて生きてきた男たち。その告発のゆくえは――?
鬼才フランソワ・オゾンが挑む、衝撃の実話。

 フランスで現在も裁判が進行中の「プレナ神父事件」。
一人の勇気ある告発者から端を発し、結果的に80人以上もの被害者が名乗りをあげ、プレナ神父が教区を変えながら長年にわたって信者家庭の少年たちに性的暴力を働いていたという驚くべき事実が白日の下にさらされた。フランスのみならずヨーロッパを震撼させたこの衝撃の事件に、今やフランス映画のトップにして最先端に立つフランソワ・オゾン監督が、挑む。

ストーリー

妻と子供たちと共にリヨンに住むアレクサンドルは、幼少期に自分を性的虐待したプレナ神父が、いまだ子供たちに聖書を教えていることを知り、過去の出来事の告発を決意する。最初は関りを拒んでいたフランソワ、長年一人で傷を抱えてきたエマニュエルら、同じく被害にあった男たちの輪が徐々に広がっていく。しかし、教会側はプレナの罪を認めつつも、責任問題は巧みにかわそうとする。アレクサンドルたちは沈黙を破った代償──社会や家族との軋轢とも戦わなければならなかった。果たして、彼らが人生をかけた告発のゆくえは──?

作品レビュー

実際に起きた事件をもとにしたストーリーということで、全体を通して非常にリアリティを感じられた。

前半の主人公であるアレクサンドルには妻子があり、一家でカトリック信者でもある。仕事も家庭も順調に映る男性でありながら、幼い頃、何年にもわたる神父からの性的虐待を受けていた。

性虐待をしたプレナ神父が現在も子供達に聖書を教える身として活動していることに怒りと危機感を覚え、アレクサンドルはとうとう反撃に身を起こす。

当時の被害を言葉にできるまで30年かかった、という彼の背景にリアリティを覚える。あまりに理不尽でありながら、被害者たちはその事実から目を背け、ひた隠しにしてしまう。犯罪の性質上、そうなってしまいがちなことは想像に難くはない。声をあげないままに、長年にわたり孤独に苦しみを抱え続ける。性的犯罪の根深さ、罪深さははかり知れない。

何者によっても許しがたい行為だが、よりによって聖職者という立場の者が少年達に卑劣な犯罪を繰り返していたことはスキャンダラスである。

この事実をもとにしたという物語は淡々と進んでゆく。妙にドラマティックに盛り上げたり、煽り立てたりという演出は感じさせず、モデルとなったであろう人々の辿った軌跡を忠実に描いたような印象である。しかしだからこそ、展開は非常にスリリングで固唾を飲んで見守ってしまう重さがある。

アレクサンドルは教会の担当者たちと連絡を取り合うが、教会側も初めは丁寧に対応しているように見えるが、実際は被害者を煙に巻き核心に触れようとしなかったり、被害者と該当神父が対峙する場面も見どころである。巨大組織である教会側の悪しき体質や体制が浮き彫りにされてゆく。

被害者の過去と現在、当時の家族の対応や現在の家族の姿もそれぞれ状況が異なる。事件当時、真剣に向き合い行動を起こした親もいれば、深く取り合わなかった家族もある。事件を通して家族間の確執や苦悩といった側面も丁寧に描かれる。

犯罪自体はあまりに悪質で耳にするだけで嫌悪感を覚えるが、当時の被害と真剣に向き合い、未来のために、そして過去の自分たちを救うため、人生をかけて戦う者たちの姿に心打たれる。

踏みにじられた子供時代を抱えながらも家族との絆があり、仲間とのつながりを手に入れてゆく主人公たちが眩しく映る。危険や犠牲をいとわない恐れを越えた勇気、守るべきもののために戦い続ける強さ、傷つきながらも進みゆく人間のたくましさが存分に描かれた秀作であった。

予告動画

『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』7月22日(水) サツゲキにて公開

監督/脚本:フランソワ・オゾン

出演:メルヴィル・プポー、ドゥニ・メノーシェ、スワン・アルロー、 ジョジアーヌ・バラスコ、エレーヌ・ヴァンサン

2019年/フランス/2時間17分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題: Grâce à Dieu /

提供:キノフィルムズ 配給:キノフィルムズ/東京テアトル
公式サイト 

©2018-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-MARS FILMS–France 2 CINÉMA–PLAYTIMEPRODUCTION-SCOPE/JEAN-CLAUDE MOIREAU

 

投稿者プロフィール

Kana
Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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