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『エミリア・ペレス』3月28日公開 作品レビュー

  • 2025年3月8日

作品紹介

かつて最恐の麻薬王だった彼女――その出会いで女たちの運命が大きく動き出す。

誰も観たことのないミュージカル・エンターテインメント!

本年度アカデミー賞®最多12部門13ノミネートを果たし、世界の賞レース席巻!今この時も各国の観客に衝撃と感動を轟かせている話題作が、ついに日本にも最大風速の嵐を巻き起こす!

出演は、ハリウッド超大作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のゾーイ・サルダナ、トランスジェンダー女優初のオスカー受賞が期待されるカルラ・ソフィア・ガスコン、全米の若者から絶大な人気を誇るセレーナ・ゴメス。女優たちの圧巻の演技がカンヌ映画祭を沸かせ、女優賞をアンサンブル受賞した。

監督は、フランスの名匠ジャック・オーディアール。かつてない世界観で破天荒なストーリーを、ジャンルを超えた感動作にまとめあげた。大注目のサンローラン プロダクション制作による、誰も観たことのない異色のミュージカル・エンターテインメント!

ストーリー

メキシコの麻薬王マニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受けた弁護士のリタ。完璧な計画により、マニタスは姿を消すことに成功するも、数年後、イギリスに移住し新生活を送っていたリタの前に現れたのは、新しい存在として生きるエミリア・ペレスだった。過去と現在、罪と救済、愛と憎しみが交錯する中、運命は思わぬ方向へと大きく動き出す――。

作品レビュー

全体的に、特色がありすぎて何から取り上げて良いのか迷いどころだが、まずはそのストーリーの斬新さ、突拍子のなさに驚かされる。

メキシコシティの麻薬王マニタスが、敏腕女性弁護士リタに極秘の依頼をするわけだが、その内容が仰天ものである。見た目も中身も荒くれなマフィアのボスであるマニタスは、女性として生きることを夢見ていたというのだ。

なんという、無茶で無理そうな願いなのだと思わざるを得なかったが、その後の展開はスピーディーである。全体を通してテンポよく話が進んでゆく。

予告編を観てもらえれば明らかだが、マッチョな風貌のマニタスはほどなくして、ゴージャスで魅力的な女性エミリアに変貌を遂げているのである。

はじめは麻薬王マニタスを男性が、性転換後のエミリアを別の女性が演じているのかと思ったが、そうではないらしい。トランスジェンダー俳優とも呼ばれるカルラ・ソフィア・ガスコンがこの二役を見事に演じ分けている。あんなに強面ヤクザのボスが洗練された女性に変身してしまうのは大きな見どころのひとつで驚愕である。

暴力や犯罪のはびこる世界とミュージカルとの組み合わせは異質にも見えたが、奇妙に世界観とマッチしている。唐突に歌とダンスが始まるのはお約束だが、ミュージカル好きな方はすぐに慣れるだろう。マフィアとして全てを手に入れたマニタスが、それでも叶えることのできない切望を歌い上げるシーンに心がしめつけられた。

マニタスから白羽の矢を立てられた弁護士リタは抑圧された世界で能力を搾取される日々の中にいた。半ば強引に彼の依頼を引き受けさせられるが、その後の再会によってリタ自身も彼女本来の願いや強みを発揮し自己を実現してゆく。

マニタスの頃、途方もなく手を汚し続けてきた彼が、エミリアへと生まれ変わった時の選択は愛があり、勇敢で尊いものであった。これほどまでに数奇で壮絶なキャラクターを描いた作品は稀ではないだろうか。異色のエンターテイメント大作である。

『エミリア・ペレス』


監督・脚本:ジャック・オーディアール『君と歩く世界』『ゴールデン・リバー』『パリ13区』出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス
原題:Emilia Peréz|2024年|フランス|シネスコ|5.1ch|133分
配給:ギャガ
公式サイト
© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS – FRANCE 2 CINÉMA

 

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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