• 道内最大級の映画レビューサイト

フランス映画『ルー、パリで生まれた猫』作品レビュー

  • 2023年10月2日

作品紹介

抱きしめたいほど猫が好きなあなたに贈る物語。
パリを舞台に、少女の目を通して愛猫との絆を描く映画が誕生した。あの頃、そばにいてくれたから乗り越えられた――。猫と暮らした人ならそんな経験を思い出さずにいられない、これは“あなたと愛猫たちの物語”。監督は、“人間の俳優を捉えるように動物の視点に立って撮る”と称される動物映像監督ギヨーム・メダチェフスキ。猫たちの生態に忠実でありながらドラマを感じさせる“演技”や映像、そして猫ルーとの絆によって”今“を乗り越え大人への階段を上っていく少女クレムの物語が、心を温かく満たす。そして何といっても、クールで好奇心いっぱいの猫、ルーのドジでかわいい“あるある”行動に悶絶必至!猫への感謝とかわいさ満載の83分。

ストーリー

パリで暮らす10歳の少女クレムが屋根裏で見つけたのは、生まれたばかりのキジトラの子猫。母猫とはぐれた子猫を、ルーと名付けて一緒に暮らし始める。両親の不仲に心を痛めていたクレムにとって、ルーとの生活は心安らぐ時間となっていく。そんなある日、森の別荘を訪れたクレムとルーだったが、森である出会いが――。

作品レビュー

子猫や猫というものは、可愛くあることがアイデンティティーであり、あたかも生きる勤めであるかのように映る。猫側としては自然体のようでありながら、しかしどこかで自分の可愛さを自覚していて、巧みに人を操作し食べ物や遊びを要求したり、欲求を満たすことに長けているようにも見える。

この映画はそんな可愛いらしい子猫や猫を存分に堪能できるわけだが、猫以外の動物、ハトや鶏、ネズミや犬など各自いい味を出していてコミカルだ。

動物のシーンが多い映画にありがちな、気持ちを言葉で表される描写はないものの、各動物達の気持ちがわかりやすく伝わってくる。

しかしこの映画は、猫や動物が可愛いというのみではなく、むしろ厳しい状況もあり、ハラハラする場面も多い。例えば主人公の家族が山の中にある別荘で過ごすのだが、別荘の周辺にはヒョウだのイノシシだの、危険そうな野生動物がウロウロしている。

近頃は北海道の山周辺もヒグマの脅威にさらされているし、街中なら安心とも言い切れず大差ないかもしれないが、危険な動物のいるエリアに家や別荘があることにいくぶんカルチャーショックを受けてしまった。

さて、主人公の少女クレムと子猫の頃に拾われルーと名付けられた猫との物語だが、思いがけない出来事によりクレムとルーの間に変化が起こる。様々な経験をしながら少女や彼女をとりまく大人、猫のルーもたくましく成長してゆく。ほろ苦い思いも味わいつつ、人や動物の幸せとは・・・という問いを投げかけられるようにも感じた。

動物と人間、それぞれのあり方を考えさせられる作品であった。

『ルー、パリで生まれた猫』


監督:ギヨーム・メダチェフスキ
動物トレーナー:ミュリエル・ベック 他
出演:キャプシーヌ・サンソン=ファブレス、コリンヌ・マシエロ、リュシー・ローラン、ニコラ・ウンブデンシュトック
動物たち:ルー(キジトラ猫)、カリーヌ (白猫)、トニ&ティノ&ティアゴ(3匹の成猫)他
原案:モーリス・ジュヌヴォア “rroû: roman”
原題:MON CHAT ET MOI, LA GRANDE AVENTURE DE RROÛ/2023年/83分/フランス・スイス/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:横井和子 
公式サイト
© 2023 MC4 – ORANGE STUDIO – JMH & FILO Films

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
error: Content is protected !!