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長編アニメ映画『雄獅少年/ライオン少年』 作品レビュー

  • 2023年5月15日

作品紹介

中国の田舎町に暮らす貧しい少年は、獅子舞バトルで自らの人生を切り拓く――!

中国で空前の大ヒット、21年度公開作品の映画満足度ランキング第一位。22年に日本で限定上映され、圧倒的な作品力で絶賛された。格差社会の底辺でもがく少年の成長を熱い獅子舞バトルを通して描き、誰もが涙した衝撃作が日本語吹替版で全国公開決定!困難を乗り越え成長する主人公・チュンに花江夏樹、チュンを獅子舞に目覚めさせた同名のヒロイン・チュンには、高い演技力で話題沸騰の桜田ひより。
共に大会を目指す仲間、マオとワン公に山口勝平、落合福嗣。師匠・チアンに山寺宏一、その妻アジェンに甲斐田裕子ら豪華声優陣が結集。中国発・世界のCGアニメーションの常識を覆した超絶クオリティー、魂が震える最高のクライマックスを体感せよ!

ストーリー

僕らには、たった一度のチャンスもないのか?

出稼ぎ両親の帰りを待つ貧しい少年チュンは、ある日、華麗な獅子舞バトルで屈強な男を倒した同じ名前の少女チュンから、獅子頭を譲り受けた。チュンは、お調子者のマオと食いしん坊のワン公を誘い、獅子舞バトル全国大会出場を決意。飲んだくれの元獅子舞選手チアンに無理やり弟子入りする。チアンの妻アジェンの励ましを受け三人は猛特訓を続けるが、大会目前でチュンの父が大けがをして帰郷した。家族のため、大都市に出稼ぎに行くチュン。過酷な労働が続き、仲間との夢をも諦めそうになったチュンの前に、再びあの少女が現れた――。

作品レビュー

あらすじをチェックした時点では、イメージのつかめない作品だった。獅子舞と言えば、あの緑色の胴体と赤く大きな獅子の顔が浮かぶが、あの顔も獅子というよりは化け物的なイメージが強く、初めは面白そうだとは思えなかったのが正直なところだ。しかし見終えた後、その予想は嬉しくも裏切られた。

ざっくりと言えば貧しい少年が獅子舞大会出場を目指すというストーリーだが、想像を超えてこの作品には多くのものが詰め込まれていた。

まずは中国における獅子舞というものは、日本でイメージするそれとはまったく別物なのである。その点だけでも観る人は圧倒されるのではないだろうか。あの獅子舞でいったいどんな大会が・・・?と疑問を覚えつつ観たわけだが、その実態は危険きわまりない過酷な競技であり、格闘技であった。

冷静に考えてみても、2名一組という時点で難易度が高そうな上に、大きな被り物をして、高い場所でわずかなスペースの足場を飛び跳ね踊るというクレイジーなパフォーマンスなのである。

実際どのようなものか、文字では非常に伝わりにくいと感じる。このようなすごい伝統芸術が世界には知られず存在しているのだと思い知らされた。

物語も感情移入しやすく、底辺の中で生きてきた、辛酸を舐め続けた少年たちが人生を切り開いてゆくものである。少年たちが獅子舞を学ぶ監督として白羽の矢を立てた、かつては獅子舞芸能のエースであったがその後、夢を失って生きてきた魚屋の中年男性の再生ストーリーでもある。

主人公であるチュンは貧しい家庭にあり、両親は都会へ出稼ぎに出て戻らないという不遇の中にいたが、親思いの優しい少年である。いつも踏みつけにされる境遇であったが、ある出会いによって彼の中の激しい感情が目覚め始めた。

そこから歩み出すチュン少年と仲間達を、応援せずにはいられなくなる。やっと道を切り開いたと思えた矢先、チュンをさらに過酷な事態が襲いかかる。そんな逆境にありながらも、希望を取り戻し大きな闘いへ挑んでゆくさまは涙せずにはいられない。

迫力ある獅子舞パフォーマンスや実写と見まがう美しい映像はもとより、高みを目指して奮戦し続ける姿に、誇り高い闘士へといつしか成長を遂げる姿に感動を味わえる秀作であった。

『雄獅少年/ライオン少年』

<日本語吹替版キャスト>
チュン役: 花江 夏樹  少女チュン役: 桜田 ひより
マオ役: 山口 勝平  ワン公役: 落合 福嗣
チアン役: 山寺 宏一  アジェン役: 甲斐田 裕子
監督:ソン・ハイポン
原題:「雄獅少年」 英題:「I Am What I Am」/ 2021年 / 中国語音声 / 日本語字幕
配給: GAGA
公式サイト
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投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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