ネット史上最大の事件で実話『Winny』作品レビュー

作品紹介

世界を揺るがした、ネット史上最大の事件。なぜ、天才は警察に潰されてしまったのか。不当逮捕から無罪を勝ち取った7年の道のり。実話を基にした挑戦と戦いの記録が、禁断の映画化。出演には、東出昌大、三浦貴大、吉田羊、吹越満、そして吉岡秀隆と本作のメッセージに賛同した実力派俳優たちが集結した。

ストーリー

2002年、開発者・金子勇（東出昌大）は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「２ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法アップロードした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。

サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光（三浦貴大）は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、開発者金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう…。そして、運命の糸が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する――。

作品レビュー

2004年5月、「Winny」を開発した金子勇氏は、著作権侵害幇助の容疑で逮捕され、有罪判決を受けた。本作は、開発者の未来と権利を守るために、警察権力やメディアと戦った男たちの真実を基にした社会派ドラマだ。

主人公の金子勇役を東出昌大、弁護士の壇俊光役は三浦貴大、元和歌山県警の警察官でジャーナリストの仙波敏郎役を吉岡秀隆が務め、それぞれが実在の人物という難役に挑戦し、主役の東出昌大は金子氏の浮世離れした雰囲気を上手く演じている。

金子氏は、開発した技術については権利を主張し、違法な著作権法違反での利用は想定していなかったと主張した。弁護団は警察の不当逮捕と違法捜査、証拠の改ざんなどを指摘し無罪を主張したが、有罪の判決を受けてしまう。

本作は、金子氏の逮捕や裁判で無罪を勝ち取るまでの経緯や、弁護士たちが開発者の権利を守るために戦った姿を、サスペンス要素が含まれたショッキングなストーリーとして描写されている。

10年に1人の天才と言われた、開発者の金子氏が作る日本の技術革新と未来を、警察と司法が長い裁判によって奪った事が残念でならない。

何故、この事件で金子氏が逮捕されたのか？
本作でその全容が理解できるはずだ。金子氏が亡くなってから10年の時を経て、出る杭は打たれる事件が二度と起こらないよう、不当逮捕や冤罪の無い司法制度全体の向上への努力が求められる。

また「Winny」事件が引き起こした社会的な背景や、技術の未来と権利の問題にも言及しながら、「Winny」によって流出した警察の裏金問題と不正経理に怒りを感じ、警察内部の腐敗と罪の重さを深く考えさせられる内容となっている。

『Winny』

監督: 松本優作
キャスト: 東出昌大、三浦貴大、皆川猿時、和田正人、木竜麻生、池田大、金子大地、阿部進之介、渋川清彦、田村泰二郎、渡辺いっけい、吉田羊、吹越満、吉岡秀隆
配給: KDDI、ナカチカ（配給協力：日活）
2023年/日本/上映時間127分
公式サイト

投稿者プロフィール

佐藤友美: 2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。