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『ケイコ 目を澄ませて』 作品レビュー

作品紹介

16mm フィルムから溢れ出す、街を漂う匂い、
降り注ぐ光の粒、ケイコの心が軋む音。
観る者の心をつかんで離さない、感覚を研ぎ澄ます映画体験。
本作は、聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんをモデルに、彼女の生き方に着想を得て、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱が新たに生み出した物語。
ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、じっと<目を澄ませて>闘うケイコの姿を、秀でた才能を持つ主人公としてではなく、不安や迷い、喜びや情熱など様々な感情の間で揺れ動きながらも一歩ずつ確実に歩みを進める等身大の一人の女性として描き、彼女の心のざわめきを16mm フィルムに焼き付けた。
そして本年2 月に開催されたベルリン国際映画祭でプレミア上映されるやいなや「すべての瞬間が心に響く」「間違いなく一見の価値あり」と熱い賛辞が次々に贈られ、その後も数多く国際映画祭での上映が続いている。

主人公・ケイコを演じた岸井ゆきのは、厳しいトレーニングを重ねて撮影に臨み、新境地を切り開く。ケイコの実直さを誰よりも認め見守るジムの会長に、日本映画界を牽引する三浦友和。その他、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子など実力派キャストが脇を固める。ケイコの心の迷いやひたむきさ、そして美しさ。全てを内包した彼女の瞳を見つめているうちに、自然と涙が込み上げてくる――。

ストーリー

不安と勇気は背中あわせ。
震える足で前に進む、彼女の瞳に映るもの――。
嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まってい
く。「一度、お休みしたいです」と書きとめた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す――。

作品レビュー

聴覚障害のある女性プロボクサーで主人公のケイコ。
健常者の立場からは耳が聞こえない中での日常生活の怖さ、不便さやストレスは測り知ることができない。

プロ女子ボクサー。
聴覚障害者がプロボクシングにチャレンジする。
難しい壁に立ち向かうケイコの日常と、ボクシングの練風景や試合を淡々と16ミリフィルムで追っていく。まるでドキュメンタリーのように映し出し、ケイコのスパークリングや試合のシーン
に圧倒される。

ケイコ役を演じた岸井ゆきの。
ドラマや映画では明るく活動的で元気なイメージを持つ彼女が、逆境のなかで培ってきたハングリーさで、ボクシングに向かっていく姿を熱演している。

美しいほど正確なボクシングのスパークリングと、聴覚障害者がどのようにしてプロボクサーとしてリングで闘うのか、苦しさや痛みとどうやって向き合うのか。聴者の感性と想像力を刺激する逸作となっている。

『ケイコ 目を澄ませて』

キャスト: 岸井ゆきの 三浦誠己 松浦慎一郎 佐藤緋美
中原ナナ  足立智充  清水優  丈太郎
安光隆太郎 渡辺真起子 中村優子
中島ひろ子 仙道敦子 /三浦友和
監督:三宅唱
原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版)
脚本:三宅唱  酒井雅秋
2022年/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/99分
公式サイト
©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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