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【帰らない日曜日】作品レビュー

  • 2022年5月9日

作品紹介

今大注目の新星女優、オデッサ・ヤングと、大人気ドラマ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子を演じ、ゴールデン・グローブ賞をはじめ各賞を席巻した人気急上昇中の英国俳優、ジョシュ・オコナーがW主演を務めます。
さらに、『英国王のスピーチ』のコリン・ファースと『女王陛下のお気に入り』のオリヴィア・コールマンという、アカデミー賞受賞俳優の贅沢な共演が実現! 絵画のように優美なイギリスの風景。そして匂い立つエレガントな官能。身分違いの恋の劇的な展開に陶酔する、眩しいほどに美しいラブストーリーが誕生しました。

ストーリー

1924年、初夏のように暖かな3月の日曜日。その日は、イギリス中のメイドが年に一度の里帰りを許される〈母の日〉。けれどニヴン家で働く孤児院育ちのジェーンに帰る家はなかった。そんな彼女のもとへ、秘密の関係を続けるアプリィ家の跡継ぎのポールから、「11時に正面玄関へ」という誘いが舞い込む。


幼馴染のエマとの結婚式を控えるポールは、前祝いの昼食会への遅刻を決め込み、邸の寝室でジェーンと抱き合う。やがてポールは昼食会へと向かい、ジェーンは広大な無人の館を一糸まとわぬ姿で探索する。だが、ニヴン家に戻ったジェーンを、思わぬ知らせが待っていた。今、小説家になったジェーンは振り返る。彼女の人生を永遠に変えた日のことを──。

作品レビュー

舞台は1924年の英国。「母の日」と呼ばれる3月の日曜日があるという。日本の「母の日」とはニュアンスが異なるらしく、奉公に出された子供が年に一度里帰りを許される日であるらしい。

主人公ジェーンは孤児院育ちのメイドである。彼女には帰る家がないわけだが、哀れっぽい悲壮感は彼女からは感じられない。奉公先の主人は穏やかな紳士で、職場環境も好ましそうだ。

ジェーンの奉公先であるニブン家の当主を演じるのは「英国王のスピーチ」主演のコリン・ファース。大物俳優だが、彼の登場シーンやセリフはそれほど多いわけではない。それでも彼の存在感は強く感じられた。

物腰柔らかで優しい人柄だが、悲しみを知っている佇まいや、周囲を気遣う言動や心配りの様子に切なくなる。感情を抑えたような演技に唸らせられる思いがした。

主役のジェーンを演じるのは若手女優のオデッサ・ヤングだが、この人の醸し出す表情や態度、眼差しの鋭さは孤児院出身のメイドのイメージとは結び付かないところがある。それがジェーンというキャラクターをよく現しているが、物怖じしない、堂々とした魂の気高さを感じさせる。

この主人公は非常に大胆不敵なシーンもあるが、そういった役を引き受ける女優自身のアーティストとしての大胆さ、果敢さをうかがわせるのである。

この作品はイギリスの美しい田舎町の風景と相まってゆっくりとストーリーが運ぶようでありながら、ハラハラさせられ、落ち着かない気持ちにもなる。そして不意を打たれるような展開を迎える。

ニブン家の奥様がジェーンに伝えた心からの言葉は奥深く示唆に富み、響くものがあった。もとよりジェーンは不遇な立場にあったが、むしろその点が生まれながらの彼女の強みでもあることを気付かされ、人生を切り開いてゆく様が描かれる。

これほど古い時代の、戦争を介した不遇な社会状況が背景にありながら、何も持たない若き女性の力強さと生きる強さに勇気をもらえるかもしれない。感性を研ぎ澄まし、自分らしく生きることを後押しするような、これからの世の風向きにもふさわしく感じられる作品であった。

『帰らない日曜日』

キャスト: オデッサ・ヤング ジョシュ・オコナー コリン・ファース オリヴィア・コールマン
監督:エヴァ・ユッソン
2021年/イギリス/104分/英語/カラー/5.1ch/原題:Mothering Sunday
配給:松竹 
公式サイト
R15+指定
© CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND NUMBER 9 FILMS SUNDAY LIMITED 2021

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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