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実話から生まれた感動作「クレッシェンド 音楽の架け橋」作品レビュー

作品紹介

“世界で最も解決が難しい”とされる紛争が今この時も続くパレスチナとイスラエルから、音楽家を夢見る若者たちを集めてオーケストラが結成される――。現実にはあり得ない物語に見えるが、実在するユダヤ・アラブ混合の管弦楽団に着想を得たという驚きの映画が完成した。若者たちの対立と葛藤、恋と友情を彩るのは、クラシックの名曲の数々。彼らを導くマエストロに『ありがとう、トニ・エルドマン』のペーター・シモニシェック。アメリカ、ヨーロッパの国際映画祭で上映され、熱い喝采のもと4つの観客賞に輝いた。


「クレッシェンド」とは、「だんだん強く」を意味する言葉。音楽により生まれた小さな共振が、やがて世界に大きく響きわたっていく。和平コンサートまで21日間に迫った合宿の行方は?そして迎える、想像もしなかった結末とは――。ラストに待つ魂の協奏が、パンデミックや格差による分断の時代に、ひとすじの希望の光をもたらす感動作。

ストーリー

世界的指揮者のスポルクは、紛争中のパレスチナとイスラエルから若者たちを集めてオーケストラを編成し、平和を祈ってコンサートを開くという企画を引き受ける。オーディションを勝ち抜き、家族の反対や軍の検問を乗り越え、音楽家になるチャンスを掴んだ20余人の若者たち。
しかし、戦車やテロの攻撃にさらされ憎み合う両陣営は激しくぶつかり合ってしまう。そこでスポルクは彼らを南チロルでの21日間の合宿に連れ出す。寝食を共にし、互いの音に耳を傾け、経験を語り合い…少しずつ心の壁を溶かしていく若者たち。だがコンサートの前日、ようやく心が一つになった彼らに、想像もしなかった事件が起きる――。

作品レビュー

第二次世界大戦中、ナチスドイツの狂気的なユダヤ民族の浄化。
残酷なホロコーストを経験したはずのユダヤ人たちが流浪の果てに、旧約聖書で約束された土地に無理やりイスラエルを建国し、その土地に元々住んでいたパレスチナ人を追い出した。

領土争いは根深く、長きに渡って占領と紛争が続くパレスチナでは、人権も自由もない。弱肉強食の世界なのだろうか?単一民族の日本人には中東問題の理解は難しい。

占領するイスラエル側のユダヤ人たちと、占領されているパレスチナ人たちが、共にオーケストラを編成する実話ベースの物語であるが、音楽に国境は無いなどという綺麗なものではなく、問題は政治抜きでは考えられない。

敵国民と隣合わせの、ストレスと格差を抱えた若い音楽家たち。憎しみをぶつけるのは当然だろう。日本人が反日感情を抱いた人々と一緒に暮らすようなものだ。

彼らはグループセラピーによって、負の感情を吐き出した後に、和平や中立の気持ちを育む努力し、互いに歩み寄り共存の道を見出す。
領土を失くし、差別、虐待、紛争の辛い暮らしを強いられているパレスチナ側に視点をおいたように見えるが、パレスチナから搾取しているテロリスト・ハマスの攻撃に危険を感じているのは、イスラエル側も同じである。

双方に言い分があることセラピーで知り、また指揮者・スポルクの過去にも、辛い戦争の歴史があったことを知る。彼らは音楽を通じて歩み寄ることを試みる。大事なのは、アラブ人とユダヤ人の平和的な共存なのである。

劇中のオーケストラは本物の音楽家と俳優が混合して演奏しており、演奏の素人俳優にはプロの演奏家のように見せるために俳優にコーチを付けて、楽器の演奏を指導し撮影に挑んだという。

イスラエルは善・パレスチナはテロリストで悪という、メディアに作り上げられたイメージを払拭する、強いメッセージ性のある映画だ

予告動画

「クレッシェンド 音楽の架け橋」

監督:ドロール・ザハヴィ
脚本:ヨハネス・ロッター、ドロール・ザハヴィ
出演:ペーター・シモニシェック(『ありがとう、トニ・エルドマン』)
ダニエル・ドンスコイ (「ザ・クラウン」「女王ヴィクトリア 愛に生きる」)
サブリナ・アマーリ
2019 年製作/ドイツ/英語・ドイツ語・ヘブライ語・アラビア語
上映時間: 112 分
原題:CRESCENDO
公式サイト
© CCC Filmkunst GmbH
配給:松竹

投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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