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痛快リベンジ劇『明日に向かって笑え!』 作品レビュー

  • 2021年8月2日

作品紹介

地球の裏側アルゼンチンから届いた、史上最も元気にさせてくれる、無謀にして最高の大逆転痛快リベンジ劇!

実際に起きた2001年のアルゼンチン金融危機<債務不履行(デフォルト)>を背景に、『瞳の奥の秘密』(09)やアスガー・ファルハディ監督『誰もがそれを知っている』(18)の名優リカルド・ダリンらアルゼンチンの実力派俳優が集結し、人生最大の危機にも“やられっ放し”ではいられない気概をもった住民たちを個性豊かに体現。 現実の鬱憤を晴らす痛快な物語は、2019年トロント国際映画祭、サン・セバスティアン国際映画祭に出品され、「小さな町の人々によるアルゼンチン版“オーシャンズ11”誕生」(Variety)、「最後まで目が離せない驚きと楽しさ!」(Hollywood Reporter) と絶賛されました。

“おじさん”主人公たちは、どんなリベンジ作戦に挑むのか。不況も不安も笑い飛ばす元気をもらえる、そんな愛すべき痛快ヒューマン・ドラマが情熱の国アルゼンチンからやってくる!

ストーリー

2001年、アルゼンチン。隣人達との温かな繋がりが残る寂れた小さな田舎町。放置されていた農業施設を共同で復活させるため、元サッカー選手のフェルミンら住民たちは貯金を出し合うことに。しかし現金を銀行に預けた翌日、金融危機で預金は凍結。しかも、この状況を悪用した銀行と弁護士に騙し取られて無一文となり、絶望のどん底へ。だが嘆いていたって始まらない!盗まれた財産を奪還して暮らしと夢を勝ち獲るべく、庶民軍団の奇想天外なリベンジ作戦が始まった!

作品レビュー

2019年、アルゼンチンで記録的なヒットを飛ばした期待作である。自分にはなじみのない国であるが、政情不安なイメージはある。2001年に起きた金融危機がストーリーの背景となっている。

物語の舞台はさびれた小さな田舎町である。初老の主人公フェルミンは、住民たちと力を合わせて農協を作ろうとするところからストーリーが始まるのもユニークだ。

素人の住民たちが、「農協を作る」というだけで映画やドラマのストーリーになりそうなものだが、そう健全な話ではない。フェルミン達の考えに賛同した仲間たちがなけなしの貯金をはたいて出資をしたが、その大切なお金はあろうことか、金融不安やそのどさくさで悪意ある者によって奪われてしまう。

地域のために力を尽くそうとしていたフェルミンは自分を責めて苦しむが、さらなる悲劇が襲い掛かる。絶望に沈む彼だったが、卑劣な方法で出資金を奪われたことを知り、復讐のために再び立ち上がる。

農協を作ろうとしたメンバーは、ほとんどが年配のごく善良な人達で、賢いとは言い難い人達も含まれている。とはいえちょっとおバカなキャラクターの存在が作品にユーモアを与え、時おり笑える場面が良い匙加減である。

フェルミンの友人でタイヤ修理店のアントニオも老人と呼ばれる年代だが、血気盛んでエネルギッシュである。渋い見た目と、妙に謎が多いところも魅力的に映る。

少々トンチンカンな面子の寄せ集めだが、皆それなりに良い持ち味があり、奪われたお金を取り戻すために知恵を出し合って奔走する。緻密に計画を練り上げついに決行の時となるが、想定外のトラブルが続出し・・・

地下金庫に眠る大金を狙うストーリーは「ルパン三世」や「オーシャンズ11」を彷彿させる。だがこの作品の主人公たちは田舎住まいのほのぼのとした人々である。ある意味かなり非現実的だが、彼らのような普通の住民が大犯罪に挑むという無茶苦茶が、人の心を惹きつけるのかもしれない。

ストーリーの終盤はとてもスリリングで、つい力んで主人公たちを応援したくなる。スッキリしたい人におすすめの痛快なリベンジ劇を楽しんでいただきたい。

予告動画

『明日に向かって笑え!』 全国順次公開

監督・脚本: セバスティアン・ボレンステイン
原作・脚本: エドゥアルド・サチェリ『瞳の奥の秘密』
出演:リカルド・ダリン『瞳の奥の秘密』/ルイス・ブランドーニ/チノ・ダリン『永遠に僕のもの』/ベロニカ・ジナス ほか
原題:La Odisea de los Giles/2019/アルゼンチン/スペイン語
上映時間: 116分
配給: GAGA
公式サイト

©2019 CAPITAL INTELECTUAL S.A./KENYA FILMS/MOD Pictures S.L.

投稿者プロフィール

Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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