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全米絶賛のサスペンスドラマ『ルース・エドガー』 作品レビュー

作品紹介

注目の次世代スター×実力派キャストが“真実”をめぐって衝突する圧巻のアンサンブル!

2019年のサンダンス映画祭でプレミア上映されるや批評家の絶賛を博し、全米の賞レースで20を超える賞のノミネートを達成。その年の最も優れた独立系作品を選定するインディペンデント・スピリット賞でも監督賞、主演男優賞、助演女優賞の主要3部門に名を連ねた。深刻な矛盾をはらんだアメリカ社会の現状をリアルにえぐり出し、謎のベールに覆われた人間という存在の本質に鋭く切り込んだヒューマン・ドラマであり、模範的な若者として学校や地域の誰からも愛され、称賛される少年の“知られざる真実”をめぐって展開するサスペンスフルなストーリーは、観る者の好奇心をかき立てるにとどまらず、私たちの内なる潜在意識を揺さぶり、先入観を根底から覆していく。

主人公ルース役は、終末スリラー『イット・カムズ・アット・ナイト』における迫真の演技で注目されたケルヴィン・ハリソン・Jr.。同作品のトレイ・エドワード・シュルツ監督と再び組んだA24配給『WAVES/ウェイブス』でも主演を務め、今まさしくブレイク中の新星が、まだアイデンティティが確立されていない17歳の少年の葛藤を生々しく体現する。

また主人公を囲む主要キャストとして、プライベートに問題を抱えながら、ルースと激しく敵対する教師ウィルソンに『ドリーム』『シェイプ・オブ・ウォーター』のオクタヴィア・スペンサー、またナオミ・ワッツとティム・ロスが愛する息子への思いがけない疑念に動揺するリベラルな夫婦に扮し、観客の視点を担う役どころに説得力を与えている。

ストーリー

あなたは人間の本質を見抜けるか―。

バージニア州アーリントンの高校生ルース・エドガーは文武両道に秀で、スピーチやユーモアのセンスにも長けた17歳の少年だ。アフリカの戦火の国で生まれた過酷なハンデを克服し、さまざまなルーツを持つ生徒たちの誰からも慕われている彼は、自由の国アメリカで希望を象徴する存在へと成長した。そんなルースがある課題のレポートをきっかけに、同じアフリカ系の女性教師ウィルソンと対立し、彼の順風満帆の日常が大きく揺らぎ出す……。

作品レビュー

高校生ルース・エドガーは、成績優秀でアフリカ系アメリカ人の手本となるべきよう周囲から期待されているが、7歳の時に育ての両親に引き取られアメリカに来たという経緯がある。アフリカの戦火の中で育ったルースは、銃の持ち方と殺人や暴力を学んだ経験を持つ少年だった。

高校で彼が提出した課題のレポ―トの中に反社会的で過激な思想が含まれていた上、彼のロッカーからは違法な花火が見つかる。
同じくアフリカ系の女性教師ウィルソンが、彼の思想と行動に疑問を持ちルースの義父母に忠告することから、平和だった彼らの学校と家庭が一変し物語は錯綜する。

ストーリーの焦点は、ルースと女教師ウィルソンのどちらがソシオパスなのか?に尽きる。言動や行動はそれぞれが抽象的で観る者の的をぼかすのが特徴。どちらの人物もそれなりに怪しく、両方が正義にも見えてしまう。
人間の内なる善悪をえぐり出すサスペンスドラマだ。

ルース・エドガー役のケルヴィン・ハリソン・Jr.は、『WAVES/ウェイブス』で兄役を演じた、注目の次世代俳優でハンサムなルックスと細マッチョが魅力的。女教師ウィルソン役を演じた実力派女優のオクタヴィア・スペンサーと口論するシーンでは、その緊張感と互いのパワーを感じることができる。

私生活で問題を抱えた教師、アフリカから養子を貰い育てた義父母、戦場で育ったルースの歪んだ性格と異常心理、それらが絡み合う異色サスペンスである。

予告動画

監督・製作・共同脚本: ジュリアス・オナー
出演: ナオミ・ワッツ 、オクタヴィア・スペンサー 、ケルヴィン・ハリソン・Jr.、 ティム・ロス
2019年/アメリカ/英語/カラー/SCOPE/5.1ch/109分/原題:LUCE
配給:キノフィルムズ/東京テアトル

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投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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