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奴隷解放運動家『ハリエット』真実の物語 作品レビュー

 

作品紹介

第92回アカデミー賞2部門ノミネート!!
主演女優賞シンシア・エリヴォ、歌曲賞「スタンド・アップ」
誰もが生きる厳しさを感じる現代こそ観て欲しい、不屈の精神と明日を見据える真実の物語。アフリカ系アメリカ人として、史上初めて新しい米ドル紙幣に肖像が採用され、アメリカでは誰もが知る実在の奴隷解放運動家、ハリエット・ダブマンの激動の人生を描いた話題の映画『ハリエット』がいよいよ公開!
奴隷として生まれた女性が、たった一人で自由を目指して逃亡し、家族や仲間を助けたい一心から組織の一員として活躍することになる。そして、いつしか彼女は、奴隷制度そのものを撤廃するために命をかけ、南北戦争では黒人兵士を率いて戦う「英雄」になっていた。

ストーリー

1849年アメリカ、メリーランド州。ブローダス農場の奴隷ミンティ(シンシア・エリヴォ)は、幼いころから過酷な労働を強い られていた。そんな彼女の願いはただ一つ、いつの日か自 由の身となって家族と共に人間らしい生活を送ること。ある日、借金の返済に迫られた農場主がミンティを売りに出 す。遠く離れた南部に売り飛ばされたら、もう二度と家族に は会えず、お互いの消息すらわからなくなってしまう。脱走を決意したミンティは、奴隷制が廃止されたペンシベルベニ ア州を目指してたった 1 人で旅立つのだった。

作品レビュー

奴隷制度がテーマの映画で記憶に新しいのは2014年にオスカー作品賞を獲得した『それでも夜は明ける(12 Years a Slave)』がある。自由黒人だったソロモン・ノーザップが奴隷として誘拐された12年間の過酷な実話であった。本作もその類の奴隷女性の物語と推測していたが、全く異なるタイプの実話である。

主人公のハリエット・タブマンとは、逃亡奴隷を助ける秘密組織”地下鉄道”の『車掌(逃亡の誘導係)』として活躍した奴隷解放運動家。南北戦争では黒人兵士を率いて750人もの奴隷を解放した。新しくなる米20ドル紙幣に、史上初めて肖像の採用が決まったアフリカ系アメリカ人。アメリカ史でもっとも有名な10人に選ばれたこともある。

リンチで殺されることも当たり前の、黒人奴隷が白人たちの持ち物だった時代。メリーランド州ドーチェスターで奴隷のミンティ(後にハリエットと改名)は、自由黒人のジョンと結婚していたが、雇用主の急死で南部に売り飛ばされる危機的状況となる。南部に売られると、家族には二度と会うことができなくなる。

ミンティは地元で密かに活動していた、”地下鉄道”の人々の助けを借りて、家族や夫と離れひとりで奴隷制度が廃止とされたペンシルベニア州への脱出を心みる。雇用主から執拗に追われ160キロの道のりを逃げるミンティ。その様子はサスペンスとアドベンチャーに満ちあふれている。

常に神と対話し助言を求めるミンティは、次第に強い心と確固たる自信を持ち、彼女の態度や話しぶりにも変化が現れる。ミンティからハリエット・ダブマンへと改名し離散した家族を一つにするため、ドーチェスターへ戻り家族だけでなく仲間の奴隷たちも救うべく尽力する。

ハリエットの敵となる雇用主の息子、ギデオン・ブローダスのストーカーぶりが凄まじい。何年も彼女に陰湿に執着するのも、何らかの恋愛感情なのだろうが、このギデオンのメンヘラ加減がスリリングで映画を盛り上げてくれる。

かつて雇用主の言いなりになっていたミンティが、女性奴隷解放家のハリエットとなるまでの道のりは決して平坦では無かった。しかし不屈の精神で何度も南へと戻り、奴隷たちを解放するハリエットの姿に心打たれる。

ハリエットの恐怖に負けない精神的な強さは驚異的である。彼女が救い出した奴隷たちは、1人の脱落者も死者も出したことが無い。一度も失敗せずに英雄になったという。

ハリエット役のシンシア・エリヴォは、ブロードウェイで定評のあるミュージカル女優。劇中で彼女が歌うシーンが幾つか登場する。エンドロールの『スタンド・アップ』は本年度アカデミー賞の主題歌賞にノミネートされた。自由か死か、奴隷から英雄になった女性奴隷解放運動家『ハリエット』の物語は、誰もが生きる厳しさを感じる現代にこそ観てほしい。

『ハリエット』予告

『ハリエット』札幌シネマフロンティア他で6/5公開

監督:ケイシー・ レモンズ
出演:シンシア ・ エリヴォ、レスリー ・ オドム ・ Jr 、ジャネール ・ モネイ
2019 年/アメリカ/ カラ ー/シネスコ
原題 :HARRIET
提供:ユニバーサル映画 配給:パルコ
本編125分
公式サイト

©2019 Focus Features LLC.  ©Universal Pictures

投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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