第75回ヴェネチア国際映画祭 最優秀男優賞受賞(ウィレム・デフォー)
孤高の天才画家ゴッホの、繊細で強烈な人生
生きているうちに誰にも理解されなくとも、自分が見た<世界の美しさ>を信じ、筆を握り続けたフィンセント・ファン・ゴッホ。不器用なまでに芸術と向き合った孤高の画家は、自らの人生を通して何を見つめていたのか――。
『潜水服は蝶の夢を見る』ジュリアン・シュナーベル監督が渾身の力で描いた、圧倒的映像美で贈る珠玉の感動作!
幼いころから精神に病を抱え、まともな人間関係が築けず、常に孤独だったフィンセント・ファン・ゴッホ。パリでは全く評価されなかったゴッホは、「新しい光を見つけたい」と南フランスのアルルへ向かう。 どこまでも続く大地、風になびく麦の穂や沈みゆく太陽を見つめるゴッホは、「永遠が見えるのは僕だけなのか」と 自身に問いかける。そんな中、パリからやって来たゴーギャンに心酔するゴッホだったが、共同生活は長くは続かなかった。孤独を抱えて、ひたすら自らが見た世界をカンバスに写し取るゴッホは、やがて「未来の人々のために、神は私を画家にした」と思い至る。晴れ晴れと穏やかなその瞳が最期に移したものとは―
個人的に、最も好きな画家のひとりである。
十数年前、本物の彼の絵を初めて目にした時の衝撃はいまでも鮮明に思い出される。
それまで教科書で見て知っていたものの、興味をひかれたことはなかったその人の作品を実際に目にした時、そのあまりの烈しさ、力強さ、魂の情熱に、心ひれ伏す思いがしたのだ。
他のどんな画家とも異なるその強烈な作品たちに、彼がいかに天才であったのかを思い知らされた。
そんな彼の人生は決して順風満帆ではなかった。それどころか、強烈すぎる、狂気じみたエピソードが満載なのである。
私自身も少しは知っていたゴッホに関する云々を、映画の中で生きたキャラクターとして再現されていることは贅沢に思えた。
なんとなく聞いたことのあった、やはり偉大な画家、ポール・ゴーギャンとの出会いや南フランス、アルルで過ごした日々のこと。
ポール・ゴーギャンの登場シーンはとてもカッコ良くて、あたかもゴッホが恋に落ちたかのようにも映った。強烈な個性を持つ両者は、互いに激し過ぎて同じ場所にはとどまれないわけだが・・・
本作品では不遇の天才、ゴッホの感性があますところなく表現されている。
主演のゴッホ役であるウィレム・デフォーの素晴らしい演技のおかげで、ゴッホの感じていた世界を、間接的に味わった思いがした。
「描くことは、行為だ。」というシンプルなセリフの中に、魂の、情熱のメッセージを感じられた。ゴッホにとって、描くことは生きること。彼の見える世界を分かち合いたいという思い。彼の絵は、愛の行為にほかならない。
信じがたいほど美しい、圧倒的な美である自然の中で、その中に溶け込んでしまい戻れなくなるような感覚を常に抱いていたと思われる彼は、現実のなかでは正気を保っていられないように思えた。
それでも彼は自分を、魂を、愛を表現し続けたのだと思う。
歴史的にも稀な天才、傑出した異端児ゴッホの生涯を映画を通して知ることができるのはファンにはたまらない。ぜひ劇場で、あの世界観を体験していただきたい。
監督・脚本:ジュリアン・シュナーベル (潜水服は蝶の夢を見る)
出演:ウィレム・デフォー、オスカー・アイザック、マッツ・ミケルセン、 ルパート・フレンド、マチュー・アマルリック 他
配給:ギャガ、松竹
上映時間:112分
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