閉鎖的な地方都市。幼い頃に失踪した長男・一郎(大森南朋)。市議会議員の次男・二郎(鈴木浩介)。
デリヘル業雇われ店長の三男・三郎(桐谷健太)。別々の道、世界を生きてきた三兄弟が、父親の死をきっかけに、再会し―。深く刻まれた、逃れられない三兄弟の運命は再び交錯し、欲望、野心、プライドがぶつかり合い、事態は凄惨な方向へ向かっていく――。
全体を通して暗く、閉塞感がある。
冒頭での父親から子供達への暴力シーンは見ていてきついものがある。
まだ幼い三兄弟を怒鳴り、暴れるように殴る父親。母親は既に他界していた。
父親の暴力は日常茶飯事と思われる、地獄のような環境。
高校生だった長男は、そのまま飛び出していった。
そこにとどまっていることが限界だったのだろう。
そして30年後。父親の死をきっかけに、三兄弟は再会する。
父の葬儀を執り行ったのは鈴木浩介演じる次男、二郎。市議会議員で地元の若手エリートとなっていた。亡くなった父は地元の有力者だった。
桐谷健太演じる三男の三郎はデリヘルの雇われ店長。地元ヤクザの下請けのようなポジションながら、真面目に仕事をこなしていた。
アウトレットモール建設のため、亡くなった父親の土地を相続して活用させるよう、二郎は地元の政治家達に命じられていた。でもなぜか、その土地を相続するのは姿を消した一郎だった。父の遺言の公正証書を持って現れた一郎。
大森南朋演じる一郎は最も謎の深い人物だ。なぜ失踪した彼が土地を譲り受けるのか?
政治家やヤクザの圧力を受け、弟達が窮地に立たされる中、頑なに権利を手放そうとしない長男。捨てた家族、捨てた家の土地に執着を見せる一郎。
土地をめぐって暗躍するヤクザ達の存在も物語を暗く彩っている。法も善悪もお構いなしの脅威。そんな彼らは最も強い権力を握る人々と裏でつながっている。立場ある有力者達にとっても最終的には暴力こそが有効な手段であった。
「ビジランテ」という聞きなれない言葉は、法や正義が及ばない世界、大切なものを自ら守り抜く集団、という意味だという。
逃れたくても逃れられない家、土地、血にまつわる三兄弟の過酷な運命。壮絶な生き様。
三兄弟を演じた俳優たちは、脚本に惚れ込んで出演を即決したという。
この作品に共鳴した彼らは、いずれも闇の深いキャラクターをそれぞれが熱演している。
命を懸けて守るべきもの。譲れないものとは・・・?
この兄弟にとってのビジランテは、どこまでも哀しく痛々しい。
「ビジランテ」
12月9日(土)より ユナイテッド・シネマ札幌ほか全国ロードショー
監督・脚本:入江悠
出演:大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作
上映時間:125分
映倫:R15+
配給:東京テアトル
(C)2017「ビジランテ」製作委員会