『氷の微笑』のポール・ヴァーホーヴェン監督 フランスの至宝イザベル・ユペール 『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』原作者フィリップ・ディジャン 危険レベルまで常識を超えた才能が集結!!
自宅で覆面の男に襲われたミシェル 元夫、恋人、部下、隣人―─全てが疑わしい 犯人探しは、ところが、彼女の恐るべき本性をあぶり出していくことに――
「なんてキョーレツで、なんて面白い!」様々なドラマを生んだ本年度の賞レースで、ひときわ異彩を放ちながら、次々と膨大な数の賞をさらい、
フランス映画にしてアカデミー賞主演女優賞ノミネートも果たした話題作が、遂に日本をも席巻する日がやってきた!
自宅で覆面の男に襲われたゲーム会社の女社長が、自ら犯人をあぶり出すために恐るべき罠を仕掛けていく。彼女は強靭な精神力と、妖艶な魅力を放つ大人の女性なのだ。
だが、事件の真相に迫るに従い、観客は衝撃の連打を浴びる。この女、いったい何者!? 彼女こそが、犯人よりも遥かに危ない存在だった。
世界を驚愕させたヒロインを演じるのは、フランスの至宝にして、歳を重ねるごとに魅力を増すイザベル・ユペール。
『ピアニスト』でカンヌ国際映画祭女優賞、『8人の女たち』でベルリン国際映画祭銀熊賞、『主婦マリーがしたこと』でヴェネツィア国際映画祭女優賞に輝き、
とどめとなった本作でのオスカーノミネートで、真の演技派女優とはこういうことだと、深く広く世に知らしめた。
共演は、『ミモザの島に消えた母』のロラン・ラフィット、『潜水服は蝶の夢を見る』のアンヌ・コンシニ、『夏時間の庭』のシャルル・ベルリング。
監督は『トータル・リコール』で誰も観たことのない未来を提示し、『氷の微笑』ではエロスとスリラーを融合させてセンセーションを巻き起こすなど、常に時代を挑発するエンタテインメントを放ち続けてきたポール・ヴァーホーヴェン。
原作はラブストーリーの金字塔『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』のフィリップ・ディジャン。
撮影は『真夜中のピアニスト』『預言者』でセザール賞を受賞し、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』でも高く評価されたステファーヌ・フォンテーヌ、音楽は『フル・モンティ』でアカデミー賞を受賞したアン・ダッドリー。
スタッフにもアグレッシブな顔ぶれが揃った。 刺激的でアブノーマルな才能が互いを高め合い、異色のサスペンスにして、世界初の気品あふれる変態ムービーが誕生した!
犯人よりも危険なのは〝彼女〟だった─。
新鋭ゲーム会社の社長を務めるミシェル(イザベル・ユペール)は、猫とふたりで暮らす瀟洒な自宅で覆面の男に襲われる。
だが、ミシェルは警察にも通報せず、いつもと変わらぬ様子で、訪ねてきた息子のヴァンサン(ジョナ・ブロケ)を迎える。半年前まで定職にも就かず遊んでいた息子だが、恋人のジョジー(アリス・イザーズ)の妊娠をきっかけに、ファストフード店で働き始めた。しかし、そのジョジーは息子以上に常識はずれで、ミシェルは彼女の目的は自分の豊かな財産なのではないかと疑っていた。
翌朝、やはりいつもと変りなく出社したミシェルは、共同経営者で親友のアンナ(アンヌ・コンシニ)と、新作ゲームのプレビューに参加する。容赦なくダメ出しをするミシェルに、ゲームデザイナーのキュルトは激しく反発するが、自他ともに認めるワンマン社長のミシェルは耳を貸そうともしない。
高級アパルトマンに暮らす母親(ジュディット・マーレ)に、生活費の小切手を届けに行ったミシェルは、母親の若い恋人と鉢合わせしてしまう。明らかに金銭目当ての男に、露骨にトゲトゲしい態度をとるミシェルは、母親に「私が再婚したら?」と訊ねられて、「母さんを殺す」と即答するのだった。
帰宅すると、まるで見張っていたかのようなタイミングで、送信者不明のメールが届く。さらに会社で残業中に、その時着ているブラウスの色を言い当てたメールを受け取る。どうやら犯人は、思いのほか近くにいるらしい。ミシェルは、一人一人に疑惑の目を向けていく。まずは、会社の部下たち。彼女が目をかけているケヴィン以外は、全員が社長を「恨んでいる」とアンナからも指摘されていた。
そして、元夫でヴァンサンの父親、売れない小説家のリシャール(シャルル・ベルリング)。今でも友人付き合いを続けてはいるが、ゲームの企画を持ち込んでミシェルに断られたことを逆恨みしているかもしれない。逆恨みと言えば、母親の恋人だって疑わしい。
また、向かいの家の主人パトリック(ロラン・ラフィット)とは日常的に挨拶を交わす仲だが、妙にセクシーな視線で見つめられている気がする。さらに、ミシェルには秘密の恋人がいるのだが、彼の妻にバレて非常事態になっていないとも限らない。そうこうするうちに、相手は大胆な行動をとり始める。
女性が襲われるゲーム映像にミシェルの顔写真を貼りつけた動画を、ミシェルの会社のすべてのパソコンに送りつけてきたのだ。そんな中、ミシェルの周囲に新たな不穏な空気が漂い始める。
39年前、衝撃的な犯罪で終身刑となったミシェルの父親が仮釈放の申請をしたために、忘れられていた事件が再び掘り起こされ始めたのだ。当時、10歳だったミシェルも事件に関わっているのではないかと噂されたが、結局真実は迷宮入りとなった。その時の体験から2度と警察に関わりたくないミシェルは、自ら犯人を探し始める。
だが、次第に明かされていくのは、事件の真相よりも恐ろしい彼女の本性だった──。
申し分なく怖い映画だった。ホラーとは異なる怖さのサスペンスだが、なによりやっぱり主人公の女性がいろんな意味で怖い。
ショッキングな暴力シーンで映画は始まる。オープニングで主人公ミシェルは覆面の男に襲われるが、その後の彼女のあり方がまず普通と異なる。もちろん彼女は傷ついているはずだが、妙に淡々としているのだ。
いろいろな面でミシェルは多くの人と異なる。彼女が少女の頃に体験した傷のせいもあるだろうし、それだけではないような気もする。彼女自身も屈折しているし、彼女を取り巻く人々もみんな、それぞれ歪さを持っている。
もともとフランスの小説だったこの作品を映画化するにあたってのエピソードも独特だ。
監督ははじめ、この映画をアメリカで撮影し、キャストも全員アメリカ人にするつもりだったが、主人公ミシェル役を引き受ける女優がいなかったという。
そんな中、フランスの大物女優がこの役を演じたいと逆にオファーし、フランス作品として映画化が実現した。
フランスに対して思い入れのある私は、さすが、フランス人!と感銘をおぼえた。
狂気じみたこのストーリーはフランス人によって生み出され、アメリカの女優達が拒否した役をフランス人女優は切望した。フランス人達のアーティスト魂とクレイジーさに拍手を送りたい。
善である主人公と、悪である犯人との戦いというようなよくあるサスペンスではなく、ヒロインをはじめ周囲の人物たちも歪んだキャラクターばかりだ。ただ彼らが一様におかしな人たちとも言い切れず、人はそれぞれ闇の部分を持っているものではないだろうか?犯人の闇を真正面から見据える主人公ミシェルは、さらに大きな闇を持つ危険な人物だ。
それでも彼女に引き込まれる。歯に衣着せぬ物言いや傲慢さ、モラルのなさ、強引さ等、通常の美徳からは遠いところにいるような彼女は、少なくとも正直な人だと思う。アクションヒーローとも異なるまれな果敢さ、潔さ、闇の深さを備えた新しいヒロイン像に脱帽だった。
監督: ポール・ヴァーホーヴェン
キャスト: イザベル・ユペール/ローラン・ラフィット/アンヌ・コンシニ/シャルル・ベルリング/ヴィルジニー・エフィラ /ジョナ・ブロケ
原作:フィリップ・ディジャン
上映時間:131分
製作国:フランス
配給会社: ギャガ
映倫区分:PG12
公式サイト
8月25日、シアターキノ、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP