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吉沢亮主演 『ぼくが生きてる、ふたつの世界』9/20公開 作品レビュー

作品紹介

呉美保監督9年ぶりの長編作品。耳のきこえない母ときこえる息子の物語を繊細に紡いでいく。

『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』で高く評価されてきた呉美保監督が、約9年ぶりとなる長編作品のテーマに選んだのは、コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子供という意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・エッセイストの五十嵐大さんによる実録ノンフィクション「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」。耳のきこえない母ときこえる息子の物語を点描のように繊細に紡いでいく。

脚本を担当したのは、『正欲』 『アナログ』(23)、『とんび』(22)等を手掛ける港岳彦。そして、主演を務めるのは『キングダム』シリーズ、『東京リベンジャーズ』シリーズ等の話題作から、作家性の強い監督作等、幅広い作品に出演し、今年は6本の出演作品が公開するなど俳優としてチャレンジを続ける吉沢亮。本作でも難役に挑戦、耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大の心の軌跡を体現する。

才能あふれるスタッフ、キャストによって紡がれる誰もが共感する母と息子の物語が公開となる。

ストーリー

宮城県の小さな港町、耳のきこえない両親のもとで愛されて育った五十嵐大。幼い頃から母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つが・・・。

作品レビュー

呉美保監督、9年ぶりの長編映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

五十嵐大による自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」を映画化したもので、聴こえない親と聴こえる息子が織りなす物語を描いた繊細な作品だった。

国内には、およそ2万2000人いるという推計が出ているコーダ(両親が聾唖の耳が聞こえる子供)。
主役となる五十嵐大を演じた吉沢亮が、思春期の少年の苛立ちや 煩わしく感じる日常から逃げ出したくなる青年の心情を言葉だけで無く目や仕草で伝えてくれる。
コーダの中には大のように親の通訳をしたり、周りから同情の目を向けられる子ども時代を過ごす人は多かったのではないだろうか。
どう接するべきかというのはそれぞれが置かれている状況により異なるとは思うが、少なくとも彼らはひとまとめに”可哀想な子”と憐れまれる存在でないのは確かだ。

耳のきこえない両親のもとで育った大も両親から大きく温かい愛情を受けて育っている。父の言葉も、母の気遣いも、そのどれもが息子を思っての愛があるものばかりだ。
なにが普通で、なにが幸せか。誰も同じ人がいないのだからその定義も人によって異なるのは当たり前なのだ。
『正欲』でも思ったが、港岳彦の脚本は非常に胸に刺さる。

また、ろう者の登場人物にはすべてろう者の俳優を起用している本作。
皆良い演技だったが、母役の忍足(おしだり)亜希子と父役の今井彰人は特に素晴らしかった。
2人のことはこの作品で初めて知ったが、これからも多くの映画に出演して欲しいと思える俳優だ。
忍足亜希子氏は千歳市出身という事もあり尚更興味が湧いているので、過去作などもチェックしてみたい。

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』9月20日公開


監督:呉美保 『そこのみにて光輝く』(14)、『きみはいい子』(15)
脚本:港岳彦 『ゴールド・ボーイ』(24)、『正欲』、『アナログ』(23)等
主演:吉沢亮 『キングダム』シリーズ
出演:忍足亜希子 今井彰人 ユースケ・サンタマリア 烏丸せつこ でんでん
原作:五十嵐大「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」(幻冬舎刊)
配給:ギャガ
2024/日本/カラー/ビスタ/5.1Chデジタル/105分/映倫:G
公式サイト
©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
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