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菅田将暉・原田美枝子ダブル主演『百花』作品レビュー

作品紹介

母が記憶を失うたび、僕は愛を取り戻していく――
原作・脚本・監督の川村元気と、ダブル主演の菅田将暉、原田美枝子が贈る
感涙必至の、愛と記憶の物語。

映画プロデューサー・脚本家・小説家として『告白』『悪人』『世界から猫が消えたなら』『君の名は。』など多数の映画を製作してきた川村元気。映画製作の一方で、数々の話題作を小説家としても生み出してきました。
そんな川村が2019年に発表した自身4作目となる小説「百花」(文春文庫刊)。
川村自身の体験から生まれたこの小説は25万部を超えるベストセラーとなり、この度、原作者である川村元気自身が監督・脚本を手掛け、映画化。
記憶を失っていく母と向き合うことで、母との思い出を蘇らせていく息子・葛西泉を演じるのは菅田将暉。

すべてを忘れていくなか、さまざまな時代の記憶を交錯させていく母・葛西百合子を原田美枝子が演じます。ダブル主演の2人が、親子の愛を紡ぎ出します。
さらに、泉(菅田)と同じレコード会社で働き、初めての出産を控える泉の妻・葛西香織を長澤まさみ、百合子(原田)の「秘密」を知り、「事件」と深い関わりを持つ男・浅葉洋平を永瀬正敏が演じます。
北村有起哉、岡山天音、河合優実、長塚圭史、板谷由夏、神野三鈴も加わり、日本映画界を牽引する実力派豪華俳優陣が、感涙必至の愛と記憶の物語を描き彩ります。

ストーリー

レコード会社に勤務する葛西泉(菅田将暉)と、ピアノ教室を営む母・百合子(原田美枝子)。
ふたりは、過去のある「事件」をきっかけに、互いの心の溝を埋められないまま過ごしてきた。

そんな中、突然、百合子が不可解な言葉を発するようになる。
「半分の花火が見たい・・・」
それは、母が息子を忘れていく日々の始まりだった。

認知症と診断され、次第にピアノも弾けなくなっていく百合子。やがて、泉の妻・香織(長澤まさみ)の名前さえ分からなくなってしまう。
皮肉なことに、百合子が記憶を失うたびに、泉は母との思い出を蘇らせていく。そして、母子としての時間を取り戻すかのように、泉は母を支えていこうとする。

だがある日、泉は百合子の部屋で一冊の「日記」を見つけてしまう。
そこに綴られていたのは、泉が知らなかった母の「秘密」。あの「事件」の真相だった。

母の記憶が消えゆくなか、泉は封印された記憶に手を伸ばす。
一方、百合子は「半分の花火が見たい…」と繰り返しつぶやくようになる。

「半分の花火」とはなにか?
ふたりが「半分の花火」を目にして、その「謎」が解けたとき、息子は母の本当の愛を知ることとなる―――

作品レビュー

徐々に記憶を失っていく認知症の母親と息子の話。

数々の映画に携わってきた川村元気監督が脚本もこなしている。

序盤はぎこちなく歯切れの悪い親子の会話の意味がわからず、何度も繰り返されるシーンと過去のシーンが交差され、観客をあえて混乱させてくる。だがその理由が徐々に明かされ切なさが止まらない。

母親役には現在NHKの朝ドラでヒロインの上司役を熱演している原田美枝子。朝ドラでは強く厳しくも情に厚い役柄だが、本作では儚げで脆く、老いに抗えない初老である。だがこの年齢で「可愛らしい」という言葉がしっくりくる女優も珍しいだろう。認知症については早い段階で明らかになるが、それ故の危なっかしさを常に感じさせてくれる。

息子役には菅田将暉。言わずもがな映画やドラマに引っ張りだこであり、どの役にも常にハマっているように思え安心感がある。本音を押し殺し、感情を表に出さない静かな役所である。

2人には忘れがたい過去がある。いくら時を経ても拭い去ることのできない事実を母親は徐々に忘れていき、逆に息子は過去を遡るように思い出していく。

わだかまりを抱えたままの親子関係。病気というズルい手段で逃げていく母親に息子は怒ることも許すことも叶わない。こんなことになるならもっと早い段階でお互いの思いを本音を打ち明けていたらと後悔しても遅い。それぞれの思いが言葉にならずとも手に取るようにスクリーンから響いてくる。

それは2人の演技や映像、演出は勿論のことだが、認知症という病が他人事ではないということも理由のひとつだろう。いつ自分の身の回りで起こっても不思議ではなく、徐々に壊れていく母親の姿は身につまされるものがある。

出演時間はそれほど多くないが、息子の妻役である長澤まさみが箸休め的な役割をこなしてくれているのも魅力的だ。
何もかも忘れてしまっていると思っていた母親の大事な思い出を息子が思い出したことで、確かにあった2人の絆を感じることができたら初めて温かい気持ちを持ち帰ることができるのかもしれない。

予告動画

『百花』


【キャスト】
菅田将暉 原田美枝子 長澤まさみ/
北村有起哉 岡山天音 河合優実 長塚圭史
板谷由夏 神野三鈴/永瀬正敏
監督:川村元気
脚本:平瀬謙太朗 川村元気
音楽:網守将平
原作:「百花」川村元気(文春文庫刊)
主題歌:KOE「Hello, I am KOE」(ユニバーサルミュージック/EMI Records)
上映時間:103分
公式サイト
©2022「百花」製作委員会

投稿者プロフィール

坂本早苗
札幌市内で働くOL。
ストレス発散はテニスで体を動かすことと大好きなパンを求め全国のパン屋さんの情報収集。着る服は骨格診断を意識しています。
映画は年齢と共にミニシアター系が好みに。
沢山の映画と出会い、観て聴いて考えてお気に入りを探していきたいです。
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