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マヤの悪夢は妄想か現実か?『マヤの秘密』 作品レビュー

作品紹介

脳裏から消えないナチスの記憶。密室で繰り広げられる極限のサスペンス。主人公マヤを演じるのは、サスペンスの女王・ノオミ・ラパス。本作の脚本を読み「これこそ私が探していた映画!」と出演を快諾したノオミは、製作も務めている。

共演に、「ザ・スーサイド・スクワッド」シリーズのジョエル・キナマン、『夜に生きる』(16)のクリス・メッシーナ、リメイク版『ペット・セメタリー』(19)のエイミー・サイメッツ。監督は、『ベツレヘム 哀しみの凶弾』(13)のユヴァル・アドラー。

ストーリー

1950年代、アメリカ郊外の街。
ある日、街中で男の指笛を聞いたマヤ(ノオミ・ラパス)は、“ある悪夢”が蘇ってくる。ナチスの軍人だったその男から戦時中暴行を受けたマヤは、復讐心から男を誘拐し、夫・ルイス(クリス・メッシーナ)の手を借りて自宅の地下室へと監禁する。

殺したい気持ちを抑えながら罪の自白を求めるマヤだが、男(ジョエル・キナマン)は人違いだと否定し続ける。果たして、彼女の悪夢は《妄想》か?《現実》か?最後まで読めない展開は、観客を釘付けにするーー。

 

作品レビュー

人の恨みは何年経っても怖いものだ。
戦争中、ナチスから受けた屈辱的な暴行と、妹を殺された事件をマヤは忘れられず、不眠症とPTSDによって、その恐怖は脳裏で何度もフラッシュバックする。

第二次世界大戦当時、ルーマニアのジプシーだったマヤは戦後、ヨーロッパでアメリカ人医師の夫と出会い結婚をした。マヤはジプシーだったことを夫に隠したまま、アメリカの小さな街に住み、長男をもうけ幸せに見える生活をしていたが、15年前の暴行を忘れた日は無い。

ある日街で、かつて自分を暴行したドイツ人のカールを見かけたマヤは、彼を拉致・監禁する。彼は名をスティーブと言い、スイスからの移民でドイツ人では無く、マヤを知らないと言い張る。はたして、彼はナチスのドイツ兵カールなのか?それとも、スイス人のスティーブなのか?

この映画は2つの側面がある。
1つは、マヤはPTSDの被害妄想でスティーブをドイツ人のカールと思い込み、過去の罪をなすりつけているのかもしれない。もう1つは、スティーブは実は元ナチス兵のカールであり、マヤを暴行し妹を殺害した犯人なのかもしれない。
だが、15年も経てば人の記憶も曖昧になるし、スティーブのような長身でイケメン男性もアメリカならば、ざらにいるだろう。

観る側がいくら謎解きに参戦しても、まったく理解はできない。それと同じ状況が仕方なく監禁に協力するマヤの夫・ルイスにも巻き起こる。ルイスは半分以上はマヤの妄想と思いながらも、可愛い妻の言い分を無下にはできない。やがて、拉致されたスティーブの妻も巻き込んで、予想を超える展開で事件は意外な方向に進んでいく。

マヤの深い心の傷と戦争の爪痕に触れ、恨みがテーマという暗いストーリーだが、サスペンス・スリラー映画としては良くできている。サスペンスの女王ノオミ・ラパスの張り詰めた演技と、監禁されて椅子に座りっぱなしのジョエル・キナマンの、悲壮感ある表情にグッとくる。

人の恨みは怖い。もしかするといつの間にか、他人からとんでもない恨みを買っているかもしれない。たとえ嫉妬や妬みは自分のせいじゃなくても、恨まれることはあるのだ。

突然拉致されたスティーブには同情し、救いようの無い話だが、観る側の心を揺さぶるすごい映画だ。彼らの結末に興味のある方には是非観てほしいと思う。

予告動画

『マヤの秘密』

監督・脚本:ユヴァル・アドラー  製作総指揮:ノオミ・ラパス
製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、エリク・ハウサム
音楽:ジョン・パエサーノ  撮影:コーリャ・ブラント
キャスト:ノオミ・ラパス、ジョエル・キナマン、クリス・メッシーナ、エイミー・サイメッツ
2020年/97分/アメリカ/英語/カラー/シネスコ/5.1ch/上映時間   97分
原題:The Secrets We Keep
配給:STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト

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投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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