「北海道凱旋報告会」と銘打ち、11月13日より公開予定の映画「ホテルローヤル」の記者会見が札幌グランドホテルで行なわれました。
登壇者は主演の波瑠さん、波瑠さんの父親役の安田顕さん、原作者の桜木紫乃先生です。武正晴監督は現在撮影中の作品スケジュールによりリモート参加でした。
釧路出身の桜木紫乃先生原作、全編北海道ロケということもあり、本作のキャスト登壇イベントは今回が初めてです。通常は上映後に一般の観覧者が沢山いる中で開催されますが、マスコミ関係者のみの若干厳かなムードの中でのプロモーションでした。
主題歌「白いページの中に」が流れる中、御三方が早速ご登壇です。
波瑠さん(以下、波瑠)「昨年5、6月に撮影して以来の北海道です。最近はコロナの影響で人前で挨拶する機会が減った中、少し前に戻ったように皆さんの前でご挨拶することができて光栄です」
安田顕さん(以下、安田)「北海道で生まれたこの作品に北海道出身の私が参加できたことがとても嬉しいです。今日はどうぞよろしくお願いします」
桜木紫乃先生(以下、桜木)「直木賞受賞から7年経ってようやく皆様の元にお届けすることができました。本日を迎えられた事とても感謝しています」
3人の声で緊張感が漂っていた会場もようやくホッとした雰囲気に包まれます。
MC「沢山の方に読まれた原作の映画化にあたってどんなお気持ちでしたか?」
桜木「新しい表現者が新しいホテルローヤルを魅せてくれるんだと、とても期待させられました」
桜木先生は原作はあくまでただのきっかけと捉え、作品作りに対し特にリクエストすることはしなかったそうです。
MC「主人公の雅代は等身大のご自身でもあるんですよね?」
桜木「そう受け取られがちですが、私はホテルローヤルを完全なフィクションとして描いており私であって私ではないつもりです。ラブホテルの娘という設定だけが同じで雅代は波瑠さんのものです」
MC「波瑠さんはどのような役作りをされましたか?」
波瑠「直木賞受賞作品と聞いて当時は母と一緒に原作を読んでいたこともあり、お話をいただいたときは、やるやらないの迷いはありませんでした。主人公の雅代は主人公でありながら物語を端っこで眺めているような主張のない女性で、台本を読んだときは下手したら突っ立っているだけで終わってしまう不安がありました。ですがホテルローヤルという中で雅代の普遍的な存在感を探りながら周りの皆さんに支えてもらい演じました」
台本の中で雅代のセリフは「・・・」が多かったそうです。まさに行間を読む演技が求められたのではないでしょうか。雅代の白シャツに眼鏡という保守的な出で立ちは桜木先生のようでもあり波瑠さん自身でもあるように見えました。
MC「監督は原作がある映画化ということで難しくありませんでしたか?」
武正晴監督(以下、監督)「オムニバスで映画に向いた題材でした。素晴らしい原作のエッセンスを損なわないようにどれだけ上手く取り込めるかが難しかったです。あとは北海道で、特に釧路で撮影するという目的があったのでそれが映画の力にもなりました。撮影するまでが大変でしたが撮影に入るとこれだけの名優揃いなので何の問題もありませんでした」
MC「原作とはちょっと違う部分があった映画でしたがいかがでしたか?」
桜木「小説はスーッと引いて終わりましたが映画はもう一歩進んで、私が描かなかった部分が映像化されたのかなと思います」
ここで緊張のせいか言葉に詰まった桜木先生でしたが思わぬところから助け船が。
安田「武監督がこのホテルローヤル以外の先生の作品も沢山読んでらしたので、その中で桜木先生ご自身の心の中を覗かれたような、まるで裸にされたような気持ちになり悔しかったと先生は仰っていました」
桜木「そう、それを言いたかったのよね、武さん、正直私悔しかったんですよ」
監督「読まないとね、わからないから。片っ端から読まさせていただきました。それを美術やら作品の中に全部取り入れさせてもらいました」
さすが、桜木先生自らオファーしたという安田顕さん。先生の言葉を代弁し見事なフォローです。そしてそんな先生を投影した作品作りをされた監督もさすがの一言です。
MC「北海道ならではの見所ポイントはありますか?」
安田「ご当地CMが時代が変わっても同じCMが流れるってのは嬉しかったですねー。釧路湿原の風景は道民の我々でも中々見ることができない。それが街並みの中でザ北海道の景色が見れる、それだけでも嬉しくなりますよね。またそれぞれのエピソードが切ないのよ。でもその中にじわっとあったかーいキワの涙が出てくるんです」
桜木先生より北海道のオヤジっぷりを表現された一幕をリクエストされ、北海道弁で怒鳴るワンシーンを再現された安田顕さん。このシーンを作中で見たら笑ってしまいそうですね。
マスコミ関係者のみということもあってか比較的長尺な会見でしたが、連携プレイが垣間見れて、それぞれがそれぞれを尊敬され信頼されて制作された映画だったんだなと感じることができました。そして最後に皆様より一言頂戴しました。
波瑠「雅代は自分が生まれた環境に疑問と嫌悪感を持ちながらも何も行動を起こせないことにイライラしています。でも自分の色で人生を生きていきたいというその姿を是非見届けてもらえたらと思います」
安田「北海道で生まれ北海道を舞台にしたこの素晴らしい作品を今のこういったご時世で上映できることをとても有難く思います。関係者みなさまに感謝し是非多くの方にご覧いただけたらと思います」
桜木「映像化されて教えられたことの一つに積極的に逃げるということは前向きの同義語だったんだと気付かされました。私は無意識に逃げることを肯定した書き方をして、自分自身も結婚、小説と今も逃げ続けているなあと改めて思いました」
監督「映画には昔から1スジ2ヌケ3ドウサという三原則があるんですけど、スジという素晴らしい原作をいただき、ヌケの北海道の素晴らしい風景をいただき、3のドウサにあたる素晴らしい俳優さんを迎えられたことを誇りに思っています」
密かに焼きそば弁当が出ていたりと道民に向けた愛も感じられる本作。
今回のお話を伺い、改めて沢山の方に映画と小説どちらも楽しんでもらえたらと強く感じられました。それぞれの思いを是非確認しに劇場へ足を運んでもらえたらと思います。
出演:波瑠 松山ケンイチ 余 貴美子 原扶貴子 伊藤沙莉 / 夏川結衣 安田顕
原作:桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社文庫刊)
監督:武正晴
脚本:清水友佳子
音楽:富貴晴美
主題歌:Leola「白いページの中に」(Sony Music Labels Inc.)
配給・宣伝:ファントム・フィルム
PG-12
札幌フィルムコミッション支援作品
上映時間:104分
公式サイト
©桜木紫乃/集英社
©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
札幌在住の女性プロフォトグラファー、物件写真、スチール撮影、ライブ撮影、CDジャケット撮影、商品撮影、フード撮影など様々な分野で活躍。ファッション写真を撮影するのが得意。女性を更に美しく撮ります。
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