原作は、アルコールに溺れる父を持った作者・菊池真理子の実体験に基づくコミックエッセイ。友人の付き添いで行ったアルコール依存症セミナーがきっかけで、「自分の父も依存症だったのかもしれない」と気付いたという菊池。自身の体験を基に、2017年、ウェブサイト「チャンピオンクロス」(秋田書店)にて「酔うと化け物になる父がつらい」の連載を開始する。酔って“化け物”となって家に帰ってくる父の姿がコミカルに描かれているだけでなく、生きづらさを感じながらも必死に日々を生きる主人公の姿に共感する人たちが続出。
普段は無口で小心者なのに、酔うと“化け物”になる父と、新興宗教にハマる母。一風変わった家庭で育ったサキは、“化け物”のおかしな行動に悩まされ、徐々に自分の気持ちに蓋をして過ごすようになる。自分とは正反対で明るく活発な妹や、学生時代からの親友に支えられ、家族の崩壊を漫画として笑い話に昇華しながらなんとか日々を生きるサキ。そんなある日、アルコールに溺れる父に病気が見つかってしまう…
アルコールにおぼれる父親を持った菊池真理子の実体験に基づいたコミックエッセイを松本穂香・渋川清彦主演で実写映画化。
正直、この映画で”酔うと化け物になる見知らぬ人”の姿をみただけでも辛い。そのくらいリアルに伝わってきたのだが、これが肉親であったらと想像するだけで恐怖だ。
毎日アルコールにおぼれる父と、その苦しみから逃れる為に新興宗教信者になった母。
何かに救いを求めたくなる母の気持ちは想像にたやすくその先が宗教である事には否定こそしないが、そのような家庭環境で育った子供達の心情を思うと悲しくなった。
普段はおとなしいのに酔うと化け物のように豹変する父。
おそらく現実にも沢山いるのだろう。
自分が我慢すれば良いのだと心を閉ざして過ごすようになる姉と、そんな中でも明るく快活に育った妹。
自分は末っ子なので長女の気持ちを本当の意味で理解する事は出来ないが、やはり長女特有の責任感というのはあるのだろう。観ていてここも辛かった。
ただ、明るく前向きな妹の存在も少なからず姉の糧にはなっていたと信じたい。
松本穂香演じる主人公のサキには、学生時代からの親友がいるのは救いだ。気のおけない友人とのやり取りが彼女にとって息抜きの場になっているように感じた。
サキは家族崩壊の様子を笑い話として漫画に描いていく。
これは、同じように苦しんでいる人にとっても希望となったのではないだろうか。
他にも自分のように悩んでいる人がいるというのは、社会から孤立してしまったように悶々と苦しむ人に何かしらの安心をくれると思う。
そして、父・トシフミ役が自然すぎて渋川清彦へのみる目が変わってしまいそうだった。
ちょうどここ数年、仕事上でアルコール依存症について学ぶ機会が多かった為余計に辛かった。
アルコール依存症は身体・仕事・家庭などへ悪影響をもたらすもので重度になると自分でのコントロールが出来ない状態になる。
そしてそのような飲酒関連の問題が起きても、家族や周囲の人の注意や説得を聞こうとしないのがこの病気の難しさだ。
自分では飲酒の問題にうすうす気づいていながら、周囲に助けを求めなくなるようになる。
どうか、周りの大切な人を傷つける前に治療に専念して欲しい。
『酔うと化け物になる父がつらい』4月10日 ユナイテッド・シネマ札幌ほか
3/6 から全国随時公開
監督: 片桐健滋
原作: 菊池真理子
キャスト: 松本穂香 渋川清彦 今泉佑唯 恒松祐里 濱 正悟 浜野謙太 ともさかりえ
上映時間: 95分
配給:ファントム・フィルム
公式サイト
©菊池真理子/秋田書店 ©2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会