脚本・監督:HIKARI
サンダンス映画祭とNHKが主宰する脚本ワークショップで選ばれNHKとともに映画化。長編デビューながらベルリン国際映画祭で史上初の2冠を達成!
一躍、世界の映画界が注目する日本人監督になり、メジャー配給の作品を控えている。
リアリティーとファンタジーで織りなす人生に挑むヒロインの姿。人生に向かって奮闘するヒロインは、あらゆる障害、国境、世代を超え、誰もが共感する映画の真髄を気づかせてくれる。
ヒロインを演じたのは、出産時に身体に障害を負った23歳(当時)の佳山明(かやまめい)。当初、女優の起用を検討したが、健常者が障害者の役を演じることに強い疑問を抱いた監督の意向により、オーディションによって100人の候補から選ばれた。演技初挑戦の佳山は、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子らのサポートもあり、文字通りの体当たり演技を見せた。
生まれた時に、たった37秒息をしていなかったことで、身体に障害を抱えてしまった主人公・貴田ユマ。親友の漫画家のゴーストライターとして、ひっそりと社会に存在している。そんな彼女と共に暮らす過保護な母は、ユマの世話をすることが唯一の生きがい。毎日が息苦しく感じ始めたある日。独り立ちをしたいと思う一心で、自作の漫画を出版社に持ち込むが、女性編集長に「人生経験がない作家に、いい作品は描けない」と一蹴されてしまう。その瞬間、ユマの中で秘めていた何かが動き始める。これまでの自分の世界から脱するため、夢と直感だけを信じて、道を切り開いてくユマ。
23歳のユマは、母・恭子とふたりで東京で暮らしている。恭子は脳性マヒで身体に障害を抱えるユマを過保護に面倒を看てきた。ユマにとってはそれを少し疎ましく思うこともある。
ユマは、親友で少女漫画家のSAYAKAのゴーストライターをしている。それは二人の秘密であった。アイドル並みの容姿を持つSAYAKAはサイン会でも人気がある。本当はユマが描いている作品、SAYAKAはその才能を搾取しているのだ。健康で美しいSAYAKAを羨ましく思うユマであった。
自分の名前で新たな作品を創り上げたいユマは、SAYAKAの担当に作品を見せるが、SAYAKAの単なるアシスタントと思われているため、担当からはSAYAKAの真似と冷たくあしらわれてしまう。
ある日、公園に捨てられたアダルトコミック雑誌を見て、ユマはその雑誌の編集部に電話をする。作品を見たいという女性編集長から、恋愛の経験が無いことを指摘され、性体験後にまた訪れるように言われる。
ここから物語の芯がスタートする。ユマが誰か恋愛をし初体験をして、漫画家としてデビューするシンプルなサクセスストーリーを予想していたが、意外な方向へ進んでいく。
性や仕事、人間としての存在意義などたくさんの問題はあるだろう。しかし障害者としてのマイナス面に漠然な不安を感じて生きるより、少しでも多くのことを経験しプラス面を見出していこうとチャレンジする、主人公ユマの冒険物語である。
本作に登場する周囲の人たちが、多様性を認めて優しくユマのケアをするのを見てほっとした。
車椅子の高さでのカメラワークによって、観客は車椅子の生活を体感し共感しやすくなっている。
ユマ役の佳山明(かやまめい)は、女優として演技力の乏しさは否めないが、ナチュラルな笑顔が魅力的。周囲のキャストたちが、佳山明の演技をサポートしているように見える。
物語は中盤から、ユマのアイデンティティ探しと、少女から大人へとシフトチェンジをしていく。それは国境を超えたロードムービーである。母親の協力無しでは生活がままならなかったユマが、自分探しを通じて大人へと成長していく姿に心を打たれる。自信の無かったユマの表情が、次第に生き生きと美しく映る。
障害があってもなくても人生は自分のもの。前向きに楽しんで生きる大切さをユマを通じて学ぶことができる。
キャスト: 佳山明 神野三鈴 大東駿介 渡辺真起子 熊篠慶彦
石橋静河 尾美としのり/板谷由夏
脚本・監督:HIKARI
プロデューサー:山口晋 HIKARI
シニアプロデューサー:土屋勝裕(NHK)
製作:ノックオンウッド/共同製作:NHK NHKエンタープライズ
配給:ラビットハウス エレファントハウス
原題: 37 Seconds
PG-12指定
上映時間 : 115分
公式サイト
© 37 Seconds film partners