自分を人間だと思い込む猫・良男が、元アイドルに恋をした―日常がカラフルに輝きはじめる“猫映画”の決定版がついに登場!
監督は『グーグーだって猫である』とそのドラマ版を手がけ、プライベートでも数多くの猫と暮らした経験を持つ名匠・犬童一心監督。主役を演じるのは、『ヘルタースケルター』(12)以来6年ぶりの映画主演となる沢尻エリカ。本作では自分を好きになれず、思うように生きられない女性のもどかしさを、繊細に表現しています。
自分を人間だと思い込む猫が、彼女に恋をした・・・
思った通りの自分になれなくて、いつしか投げやりな生き方に慣れてしまった沙織(沢尻エリカ)。元アイドルのアラサーで、今はスーパーで働く彼女が心を開くのは、こっそり飼っている、ロシアンブルーの猫・良男(吉沢亮)だけ。今日いちにちの出来事を、妄想を交えつつ良男に話して聞かせる沙織。沙織の心に寄り添ううち、良男は自分が沙織の人間の恋人で、彼女を守れるのは自分だけだと思い込んでしまう。そんなある日、沙織の前に“ゴッホ”と呼ばれる売れない画家・後藤保(峯田和伸)が現れ、良男は沙織の変化を目の当たりにする。
売れないアイドルグループのメンバーだったアラサー女性が、田舎町のスーパーでどこか投げやりな生活を送る。
話し相手は職場の裏の倉庫でこっそり飼うロシアンブルーの猫のみ。
そんな孤独すぎる主人公を沢尻エリカを主演にファンタジックに演出された映画である。
数年前から空前の猫ブームが到来し、猫を取り巻く様々な作品を目にする機会が増えたように思うが、本作は猫を擬人化しながらそれぞれの視点で物語が進行されていく。
リアルとファンタジー、実景と舞台の交錯は非連動されており、これは本作を語る上で最も重要な特徴の一つである。
これらの手法によりあえて観るものを混乱させる作りとしているのは犬童一心の遊び心とも思えるが、それにしては斬新で凝った手法である。
そして自らを人間だと信じて疑わない猫役(良男)の吉沢亮が主人公に甘えるシーンはとても愛らしく、飼い主(本人は恋人のつもりだが)に寄り添うペット役を見事に表現していたように思う。
「リバーズエッジ」ではイジメられっ子ながらも黒い闇を抱えた高校生役だったので、整ったルックスだけではなく、高い演技力が評価されるのもうなずける。
そのほか擬人化された猫たちの猫を思わせる仕草が時折り垣間見れたり、それぞれの個性的な衣装も見どころのひとつだろう。
イメージとのギャップがある本作なので、猫好きにはもしかしたら物足りなく感じるかもしれないが、人間と猫のそれぞれの視線でのもどかしさをポジティブに感じることができたら犬童一心監督が伝えたかったことに寄り添うことができるのかもしれない。
2018年6月23日 札幌シネマフロンティアで公開
監督:犬童一心『グーグーだって猫である』
脚本:高田亮『そこのみにて光輝く』
原作:大山淳子「猫は抱くもの」(キノブックス刊)
出演:沢尻エリカ、吉沢亮、峯田和伸
コムアイ(水曜日のカンパネラ)、岩松了、藤村忠寿
配給:キノフィルムズ
上映時間: 109分
(C)2018「猫は抱くもの」製作委員会