金や名声のため、強力な武器を求めて世界中を旅する男、 ウィリアム(マット・デイモン)。彼はたどり着いた万里の長城 で、巨大な地響きとともに圧倒的な数で迫りくる謎の生物に 遭遇する。それは、饕餮(とうてつ)と呼ばれる、人間の欲 深さを罰するために60年に一度現れる伝説の怪物であり、 万里の長城が築かれた最大の要因だった。饕餮(とうてつ)の大襲来を食い止めようと万里の長城に集結していた 中国の戦士たちの戦いを目の当たりにしたウィリアムは、その 気高い自己犠牲の精神に心動かされ、自分の目的のため でなく、世界を守るために戦う事を決意する。 果たして、饕餮の進撃を止める方法とは? そして、ウィリアムたちの運命は―。
なんとも奇想天外な物語を造りあげたものだ。まずは、チャン・イーモウ監督の、その果てしなき想像力に拍手喝采だ!
万里の長城が、なぜ造られたのか?・・・映画「グレートウォール」では、60年毎に来襲する怪物「饕餮(とうてつ)」から、国を守るために造られたと云う、中国の一つの神話をよりどころとしている。ここから出発して、あとはチャン・イーモウ監督ならではの想像の世界へとぐんぐん引き込んでくれる。しかも、その怪物「饕餮」は、人間の欲深さが作り出した象徴だと、言うのだから意味深でもある。
グレートウォールでは、この饕餮をただただ大食漢に、この長城で食い止めなければ、全人類をも食べ尽くしてしまう程、狂暴且つ圧倒的な迫力で描かれている。人間の欲深さは底なしだ、と言わんばかりに。
この巨大な敵に立ち向かうのが、万里の長城にいる禁軍だ。誰もが欲はなく、ひたすら国を守る使命感に燃えている。ただ、戦い方はいささか漫画チックで『進撃の巨人』を連想させる。
例えば、女性だけの軍団、鶴軍は槍を手に、高い城壁からバンジージャンプのように飛び下り、怪物を突き刺しては、また槍を取りに舞い戻るといった、その名の通り鶴が舞うように戦う。美しくもあるが巨大な敵の前では、あまりにも古典的で滑稽だ。
ただ、その中に偶然入り込んだ欲深き西洋人が、禁軍兵士の自らの命を顧みない無欲の姿に、やがて心を動かされてゆく様は、実に面白い。それは若い兵士ボン・ヨン(ルハン)と主人公のウィリアムが、お互いを助け合いながら、次第に信頼関係を築いてゆく過程に、最大のメッセージを感じるからだ。信頼は欲に勝る!確かに無欲となった西洋人の力は、怪物をも倒すスーパーマンへと変身してしまうのだ。とは言え1時間40分、文句なく楽しめる。
中国4000年の歴史を、ハリウッドというアメリカ文明の最も濃い培養液に入れてみると、これほど違った光を放つのかと、感心せずにはいられない。想像する楽しさ、果てしなさにワクワクしてしまう映画だ!
■監督:チャン・イーモウ
■キャスト:マット・デイモン、ペドロ・パスカル、ウィレム・デフォー、 ジン・ティエン、アンディ・ラウ、ルハン ほか
■配給:東宝東和
■原題 The Great Wall
公式サイト: greatwall-movie.jp
©Universal Studios.