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【LION/ライオン ~25年目のただいま~】 Google Earthで起こした奇跡とは?

作品紹介

オーストラリアで幸せに暮らす25歳のサルー。しかし、彼には隠された驚愕の過去があった。インドで生まれた彼は5歳の時に迷子になり、以来、家族と生き別れたままオーストラリアへ養子にだされたのだ。自分が幸せな生活を送れば送るほど募る、インドの家族への想い。彼らは、今でも自分を探しているのではないだろうか?そして彼は決意する。人生を取り戻し未来への一歩を踏み出すため、そして母と兄に、あの日言えなかった〝ただいま″を伝えるため、家を探し出すことを。
おぼろげな記憶をたどっていく先々で明かされていくのは、彼が巻き込まれた数奇な人生の全貌、インドのスラム街で幾多の危機を潜り抜けてきた少年の驚くべき知恵と生命力、そして深い愛に包まれた彼の本当の人生の姿。壮大な“探し物”の果てに、彼が見つけたものとは―?

『英国王のスピーチ』の製作陣と実力派キャストが結集!
主人公のサルーを演じるのは、『スラムドッグ$ミリオネア』のデヴ・パテル。思いがけず驚きの人生にのみ込まれ、2つの国、2人の母親の間で揺れる男の繊細な心を演じ、本年度ゴールデン・グローブ賞助演男優賞にノミネートされている。サルーの養母役に、同じく本年度ゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネートされたオスカー女優のニコール・キッドマン。自身も養子を育てる彼女が、なぜサルーを引き取ったかを語るシーンには、熱い涙が溢れだす。サルーの恋人のルーシーには、『キャロル』でアカデミー賞Rにノミネートされたルーニー・マーラ。そして、観る者全ての心を鷲掴みにするのは、5歳のサルーを演じる映画初出演の少年、サニー・パワール。インドの複数の都市において何千人もの子供たちがスクリーンテストに臨む中で、圧倒的な存在感を放ち選ばれた原石だ。
監督は、ジェーン・カンピオン製作総指揮のTVシリーズ「トップ・オブ・ザ・レイク ~消えた少女~」の数エピソードを監督し、エミー賞や英国アカデミー賞など、数々の賞にノミネートされたガース・デイヴィス。CM界でも活躍する気鋭の新人監督で、本作でもゴールデン・グローブ賞を始め、本年度賞レースの大本命に名乗りを上げた。主題歌は、覆面の歌姫として絶大なる人気を誇るシーア。この現代のおとぎ話のような、唯一無二な物語に心を打たれた新しい才能とベテランが一堂に会し、フレッシュで感動的な奇跡の物語を、いまここに誕生させた。


ストーリー

あの日言えなかった「ただいま」を伝えるため、そして自分の人生を取り戻すため、いま僕は、広大な世界へ旅立つ―。

オーストラリアで、優しい父母、美しい恋人と幸せに暮らすサルー。しかし、彼には隠された過去があった。
紐解かれていく、あまりに数奇な人生。サルーが最後に見つけた感動の真実とは―?

1986年、インド。それはサルーが5歳の頃のことだった。早く大きくなって、4人の子供を抱えるシングルマザーの母と、学校へも行けず働く兄グドゥの役に立ちたいサルーは、兄の夜通しかかる仕事に無理を言ってついて行った挙句、眠気に抗えず回送列車で一人眠ってしまう。ふと目を覚ますと、ホームに停車中のはずの列車は動きだしていて、乗客は一人もいない。「兄ちゃん!助けて!」誰にも届かない叫びは広大なインドの地に消えていく。なす術もなく数日間列車に揺られ続けたサルーが到着したのは、大都市コルカタのハウラー駅。言葉も通じない未知の場所で、サルーは初めて見る都会の人混みにあっという間に飲み込まれて行った─。

2008年、サルー(デヴ・パテル)はオーストラリアのタスマニアに暮らす養父母のもとを離れ、メルボルンにある学校でホテル経営を学んでいた。インドの施設にいたのを、ジョン(デヴィッド・ウェンハム)とスー(ニコール・キッドマン)の夫妻に引き取られ、養子として愛情いっぱいに育てられたのだった。
同じクラスのインド出身の学生たちと親しくなったサルーは、以前から気になっているルーシー(ルーニー・マーラ)と共にホームパーティに招かれる。人生の殆どをオーストラリアで過ごしてきたサルーには、インドでの記憶はほとんど残されていない。ところが、キッチンに置いてあったインドの揚げ菓子“ジャレビ”を見た途端、閃光のように脳裏に兄の姿が甦る。それは、市場で兄にねだったが、お金がなくて買えなかった思い出の菓子だった。

友人たちに自分は迷子だったと打ち明けるサルー。住んでいた町の名もうろ覚えで、母の名前も自分の苗字さえもわからない。記憶にあるのは、列車に乗り込んでしまった駅の近くに給水塔があったことだけ。そんな中、友人の一人が、Google Earthなら地球のどこにでも行くことが出来ると教えてくれる。当時の列車の時速を調べれば、乗っていた時間からハウラー駅までの距離が割り出せるというのだ。こうして、サルーの人生をめぐる途方もない“捜索の旅”が始まった─。

干草の中から一本の針を探すような果てしない探索。記憶が蘇るにつれて、サルーは己の数奇な運命に衝撃を受け、過酷な状況を生き延びた生命力に驚きながらも、心配するルーシーを遠ざけ、傷つけることを恐れて養父母にも話せず、永遠に思えるひとりぼっちの“旅”にのめりこんでいく。今も自分を探しているに違いない実の母と兄に、ただ一言「僕は無事だ」と伝えたい。サルーの想いはただひとつだけだった─。

作品レビュー

2017年に米カリフォルニア州サンフランシスコのGoogle本社で、Google Earthやマップの社会貢献度の高さについて責任者から話を聞いた。この映画はGoogle社の支援で製作されている。Google Earthを使って、主人公サルーがインドの自分の家を探すシーンでテクノロジーの進化を伺えた。

映画の前半は、主人公5歳のサルーが列車で寝入ってしまい遠い地で迷子になる。インドの貧困とストリートチルドレン問題を否応無しに投げつけられ、頭を殴られたような衝撃を感じた。サルーの生家も貧しいが、辿り着いたインドのコルカタは、圧倒的な貧困で悪名高き場所だ。5歳の子供が1人でベンガル語も判らずに家族を探し彷徨うシーンでは胸が痛くなる。

中盤からはオーストラリア編。コルカタの収容施設からオーストラリアへ養子として移住したサルーがその後成長するが、自分の本当の家族を探し求めることから彼の苦悩が始まる。真実の物語だけに、喉がつかえるような重いシーンが多く、Google Earthで家族探しは容易ではない。また育ての両親へは感謝の気持ちを持ちつつも、インドの家族を求めるサルーの葛藤が細かく表現され、涙無しでは観ることはできなかった。

アカデミー賞レースでも期待の高い本作は、原作者サルーの体験談を基に忠実に再現したドラマである。【ラ・ラ・ランド】のような夢あるミュージカル映画も良いが、迷子になった子が成長してもなお、インドの家族を求める真実のドラマを私は推したいと思う。

予告動画

 サルーが辿った人生のルート

5歳で迷子になり、25年後、Google Earthでの「地図の旅」を通して生まれた場所に立ち戻るという、まさに映画のように数奇な人生を歩むサルー・ブライアリー。
サルー自身も大人になって初めて知った、自分が辿った人生の道筋とは―。

5歳のサルーが移動した距離
ブルハンプールからコルカタまで(乗り換え1回だけ、あるいは乗り換えなしの場合)の最も可能性の高い2つのルート。幼いサルーがどちらに乗ったのかは結局わかっていない。
①カンドワ(Khandwa):幼いサルーが住んでいた町“ガネッシュ・タライ”がある地区。サルーはずっと“ガネッシュ・タライ”を“ガネストレイ”だと思っていた。
②ブルハンプール(Burhanpur):幼いサルーが兄のグドゥとはぐれ回送列車に乗ってしまった駅。駅から見える給水塔をサルーは憶えており、25年後、それを頼りにこの地を見つけた。
③コルカタ(Kolkata):回送列車から降りられなくなったサルーがたどりついた駅。当時の名はカルカッタで、人口過密と公害、圧倒的な貧困で悪名高い危険な都市の一つだった。

・ 空港にて、養父母となったジョン&スーのブライアリー夫妻と初対面。
・ オーストラリアに初めて到着した日
・ スー、サルー、ジョンでの夕食会
・ サルーと産みの母カムラ
・ マントッシュとサルー
・ サルーがGoogle Earthで探したブルハンプールの給水塔。これを広大なインドの土地から探すのに5年近くかかっている。(Google Earth, imagec2015Digital Globe)
・ サルーと2人の母

 Saroo Brierley’s INTERVIEW

Q:自分の人生についてを本に書くのはどんな経験?
本を書くことについては少し考えなければならなかった。個人的な物語で、長い間、誰にでも話せる話ではなくて、世界で独りぼっちだったんだ。ある時、両親にこのことをちらっと話したら、2人は言ってくれた。「書くべきだ。恐れずに難問に立ち向かい、前向きになって、この滅多になくて奥深い物語を語るべきだ。みんな、すばらしい物語と思うはずだから」ってね。

Q:映画化が決まった時の感想は?
僕の人生が映画化されると知って、飛びあがって喜んだ! 僕が経験した試練や苦難を人々に視覚的に見てもらえるんだから、すばらしい映画になるはずだと思ったよ。

Q:初めて本作を観ていかがでしたか?
僕は革製の椅子に座っていたのだけど、シートに爪を立ててしまったよ。映画の中に入り込んでしまうんだ。次に何が起こるのかが分からなかったし、いろんな感情も湧き上がった。それにとても感情的になったよ。インドで家族と離れ離れになった小さな子供の気持ちを体で感じた。大混乱だよ。

原作者:サルー・ブライアリー
インド中央部にあるマディヤ・プラデーシュ州カンドワ生まれ。オーストラリアのタスマニア州ホバート在住。彼の奇跡的な家族との再会は、ニュースや新聞で報じられ大きな話題となった。書籍“25年目の「ただいま」(原題A Long Way Home)”は、ドイツ語、フランス語、イタリア語などに翻訳され、各国で出版されている。

“25年目の「ただいま」  5歳で迷子になった僕と家族の物語”
サルー・ブライアリー著  舩山むつみ訳 静山社刊

主題歌・サウンドトラック

主題歌:シーア/主題歌:SIA「NEVER GIVE UP」(ソニー・ミュージックレーベルズ)

キャスト

  • Dev Patel as Saroo /デヴ・パテル as サルー
  • Rooney Mara as Lucy/ルーニー・マーラ as ルーシー
  • David Wenham as John/デヴィッド・ウェンハム as ジョン
  • Nicole Kidman as Sue /ニコール・キッドマン as スー
  • Sunny Pawar as Saroo (young) /サニー・パワール as サルー(幼少期)
  • Abhishek Bharate as Guddu/アビシェーク・バラト as グドゥ
  • Priyanka Bose as Kamla/プリヤンカ・ボセ as カムラ
  • Tannishtha Chatterjee as Noor/タニシュタ・チャテルジー as ヌーレ
  • Nawazuddin Siddiqui as Rawa/ナワーズッディーン・シッディーキー as ラーマ
  • Deepti Naval as Mrs. Sood/ディープティ・ナバル as ミセス・スード
  • Divian Ladwa as Mantosh/ディヴィアン・ラドワ as マントッシュ(成人)
  • Sachin Joab as Bharat/サチン・ヨアブ as バラト
  • Pallavi Sharda as Prama/パッラヴィ・ シャルダー as プラマ
  • Arka Das as Sami/アルカ・ダス as サミ

スタッフ

  • Director  Garth Davis/監督:ガース・デイヴィス
  • Producers  Iain Canning and Emile Sherma/製作:イアン・カニング、エミール・シャーマン
  • Producer  Angie Fielder/製作:アンジー・フィールダー
  • Screenwriter   Luke Davies/脚本:ルーク・デイヴィス
  • Director of Photography   Greig Fraser, A.S.C, A.C.S./撮影監督:グリーグ・フレイザー
  • Production Designer   Chris Kennedy/美術:クリス・ケネディ
  • Editor  Alexandre de Franceschi/編集:アレクサンドル・デ・フランチェスキ
  • Costume Designer   Cappi Ireland/衣装:カッピ・アイルランド
  • The Composers ? Hauschka & Dustin O’Halloran/音楽:ハウシュカ&ダスティン・オハロラン
  • Theme Song   Sia/主題歌:シーア

 

ADAPTED FROM THE BOOK “A LONG WAY HOME” BY SAROO BRIERLEY
原作:〝25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語
サルー・ブライアリー著  舩山むつみ訳(静山社刊)

提供:ギャガ、テレビ東京   配給:ギャガ (ギャガロゴ)
原題:LION/オーストラリア映画/2016年/119分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:戸田奈津子
©2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

 

投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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