『海炭市叙景』(10’/熊切和嘉監督)、『そこのみにて光輝く』(14’/呉美保監督)に続く、孤高の作家佐藤泰志原作の小説“函館三部作”最終章「オーバー・フェンス」(「黄金の服」所収小学館)が、同名タイトル『オーバー・フェンス』として映画化!
本作は、佐藤泰志自身が執筆活動を諦めかけた頃、函館の職業訓練校にて送った自身の経験を基に執筆し、最後の芥川賞候補作品となった「オーバー・フェンス」を原作としており、描かれるテーマは「共に生きる」。主人公・白岩役をオダギリジョー、白岩と恋に落ちる女性・聡(さとし)役を蒼井優、白岩と同じ職業訓練校の生徒・代島役を松田翔太という豪華キャストが集結。さらに、『苦役列車』『味園ユニバース』など闇を抱えた人間たちに柔らかな光を与える名手・山下敦弘監督、そして脚本・高田亮、音楽・田中拓人、撮影・近藤龍人、照明・藤井勇ら『そこのみにて光輝く』などで高い評価を受け続けるスタッフ陣が再集結。邦画界を支えるスタッフ・キャストが圧倒的な底力で紡いだ、2016年注目の大人のラブストーリーが誕生!
家庭をかえりみなかった男・白岩は、妻に見限られ、東京から故郷の函館に戻りつつも実家には顔を出さず、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。
訓練校とアパートの往復、2本の缶ビールとコンビニ弁当の惰性の日々。白岩は、なんの楽しみもなく、ただ働いて死ぬだけ、そう思っていた。
ある日、同じ職業訓練校に通う仲間の代島にキャバクラへ連れて行かれ、そこで鳥の動きを真似る風変りな若いホステスと出会う―。名前は聡(さとし)。
「名前で苦労したけど親のこと悪く言わないで、頭悪いだけだから」そんな風に話す、どこか危うさを持つ美しい聡に、白岩は急速に強く惹かれていくが…。
港町が好きです。坂から見下ろす海と船、潮風、そこで暮らす人達。
この映画の舞台の函館も、私が移住した小樽も情緒があり、そしてもの悲しさが漂う町。
映画の中の人達は、みなそれぞれに問題を抱えながら、社会に受け入れられるよう模索している。
どこにでもいるそんな人達、だからこそ深く共感できる。
主演のオダギリジョー、蒼井優の圧倒的な演技力に胸が苦しくなる。
函館を舞台に光と影、そして幻想的な映像は強く印象に残る。
原作者は41歳で夭折した函館出身の佐藤泰志。
豊かな表現と細やかな人間描写に惹かれ長編、中編何冊か読んだ。とても好きな作家だ。
函館市民に愛された作家の作品が、映像で観れることをとても幸運に思う。
9月17日(土) 函館シネマアイリス、 札幌シアターキノ、テアトル新宿他全国公開
上映時間 112分 製作年 2016年 映倫区分 G 製作国 日本 配給 東京テアトル 公式サイト (c)2016「オーバー・フェンス」製作委員会