小説家・劇作家の井上ひさしが、広島を舞台にした自身の戯曲「父と暮せば」と対になる作品として、実現を願いながらもかなわなかった物語を、日本映画界を代表する名匠・山田洋次監督が映画化。
主人公の福原伸子役を「おとうと」「母べえ」でも山田監督とタッグを組んだ吉永小百合が演じ、その息子・浩二役で二宮和也が山田組に初参加。
「小さいおうち」でベルリン国際映画祭銀獅子賞(女優賞) を受賞した黒木華が、浩二の恋人・町子に扮する。
1948年8月9日。長崎で助産婦をして暮らす伸子の前に、3年前に原爆で亡くしたはずの息子・浩二がひょっこり現れる。「母さんは諦めが悪いからなかなか出てこれなかったんだよ」。
その日から、浩二は時々伸子の前に現れるようになる。二人はたくさんの話をするが、一番の関心は浩二の恋人・町子のことだった。「いつかあの子の幸せも考えなきゃね」。
そんなふたりの時間は、奇妙だったけれど、楽しかった。その幸せは永遠に続くようにみえた―。
山田洋次監督が、どうしたら戦争の時代を若い世代に伝えられるか?を考え『母と暮らせば』のタイトルと構想を決めて亡くなった、作家・井上ひさしを引き継ぎメガホンをとった。
亡霊となって母の前に現れた、息子・浩二(二宮)には、実在のモデルがいる。フィリピン・ルソン島で戦死した、詩人の竹内浩三である。
竹内浩三は浩二と同様、クラシックレコードを聴くのが大好きで、将来に夢と目標のある若者であった。
竹内浩三へのオマージュとして、映画に登場する福原浩二は、医師のたまごで将来有望だったが、原爆の爆心地近くで授業を受けていたために、彼は一瞬で消えた。
浩二の遺体を発見できないまま、浩二を待ち続けた母(吉永)は、戦後三年が経ち、浩二の死を受け入れることにした。母の諦めと同時に、浩二は亡霊となり母の前に姿を表すのだがー。
https://youtu.be/hvrs_103jRw
原爆の激しさ、熱さ、破壊力、光の凄さを、映像でどのように伝えるか、山田洋次監督は、原爆のすさまじさと、その瞬間に亡くなった者達の無念を、授業中の浩二のインク瓶で表現した。
その時の色、温度、匂い、体験した人にしか判らないことを、想像力を働かせて観客に伝えることができれば…戦争があった歴史を繰り返してはならない。語り継いでいくことが大切なのだ。地上から戦争が無くならない限り、幸せとは言えない。
原爆で死んでしまった息子と、母さんのちょっぴり幸せで悲しいファンタジー『母と暮らせば』12月12日 札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌 他道内劇場にて公開
2016年6月15(水曜日)
監督/山田洋次
脚本/山田洋次・平松恵美子
企画/井上麻矢(こまつ座)プロデューサー/榎望
撮影/近森眞史 美術/出川三男 照明/渡邊孝一 編集/石井巌 録音/岸田和美
製作/「母と暮せば」製作委員会 制作・配給/松竹株式会社
(C)2015「母と暮せば」製作委員会