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『FUKUSHIMA 50』 福島第一原発事故の真実 作品レビュー

作品紹介

2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災発生。
そして福島第一原発事故。
日本人誰もが経験し、全世界が震撼した3.11。
その最前線で戦い続けた人々の物語。

原作は、90人以上の関係者の取材をもとに綴られた門田隆将渾身のドキュメンタリー「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)。2011年3月11日午後2時46分。マグニチュード9.0、最大震度7という、日本の観測史上最大の地震が発生。全てが想定外の大地震による巨大津波は福島第一原子力発電所を襲う。全電源喪失により原子炉の冷却が不可能となり、原子炉建屋は次々に水素爆発を起こし、最悪の事態メルトダウンの時が迫りつつあった。1・2号機当直長の伊崎は次々に起こる不測の事態に対して第一線で厳しい決断を迫られる。所長の吉田は現場の指揮を執りつつ、状況を把握していない本社とのやり取りに奔走。緊急出動する自衛隊、そして米軍。福島第一を放棄した場合、避難半径は250km、対象人口は5,000万人-

本作は、2011年3月11日午後2時46分に発生し、マグニチュード9.0、最大震度7という、日本の観測史上最大の地震となった東日本大震災時の福島第一原発事故を描く物語。想像を超える被害をもたらした原発事故の現場:福島第一原子力発電所(通称:イチエフ)に残った地元福島出身の作業員たちは、世界のメディアから”Fukushima 50″(フクシマフィフティ)と呼ばれた。世界中が注目した現場では本当は何が起きていたのか?何が真実なのか?浮き彫りになる人間の強さと弱さ。東日本壊滅の危機が迫る中、死を覚悟して発電所内に残った人々の知られざる”真実”が、今、遂に明らかになる。主役となる福島第一原発1・2号機当直長・伊崎利夫役に佐藤浩市、福島第一原発所長、吉田昌郎役に渡辺謙。さらには吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工、富田靖子、佐野史郎、そして安田成美ら、豪華実力派ャストが結集

ストーリー

想像を超える被害をもたらした原発事故。現場では何が起きていたのか?何が真実なのか?浮き彫りになる人間の強さと弱さ。現場と本社、そして官邸との軋轢。東日本壊滅の危機が迫る中、死を覚悟して発電所内に残った職員たちは、家族を、そしてふるさとを守るため、いかにしてこの未曾有の大事故と戦い続けたのかー

作品レビュー

原作があるにせよ、この作品を作ることはとても勇気のいることだったと思う。リアリティを追求され中途半端にお茶を濁すことはできない。そしてどう描いても非難されることはあるだろう。それも覚悟の上だったに違いない。だが後世に必ず残さなければならない、日本人のみならず世界に伝えていかなければならない、そんな熱量がスクリーンから常に放たれていたように感じる。

そんな映画のメガホンを取ったのは「ホワイトアウト」や「沈まぬ太陽」で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞している若松節朗監督。その他数々の映画やドラマの監督および演出を手がけている。キャストは佐藤浩市と渡辺謙の二大巨頭を主演に迎え、他も大河ドラマ並みの豪華さで重厚感を感じずにいられない。久々に「本気」を出した日本映画を観た気がする。

個人的に主な被災地には幾度となく訪れボランティア活動をさせていただいた。津波にのまれ更地と化した場所でも復興に向かっている兆しを感じることができた。だが福島だけは違った。このまま朽ち果ててしまうのではと思うほど無機質だった。今思えばあの頃の福島は何処に向かっていたのかと思う。

当時の福島第一原発のニュースはどこまで報道されていたのだろう。あのとき日本を守るため懸命に戦っていたのは福島を地元としていた作業員たちだった。そのことを私は知らなかった。ただ「東電の人」とだけで、何人ぐらいが作業にあたっていたのか、当然その人たちにも家族がいたこと、そしてその家族が避難場所でどんな思いをしていたのか想像すらできていなかった。とても恥ずかしい。

作中は結末がわかっていても次から次へと訪れる危機に手に汗を握らずにはいられない。緊迫した空気、暗闇での過酷な作業、まさに命懸けの「決死隊」である。気になったのは男たちは皆自ら志願して原子炉内へ向かうのだが果たして実際もそうだったのかということ。命を惜しむことは決して恥ずべき行為ではないと思うが、もっとお互いの衝突があってもおかしくない状況では?と疑いたくなった。誰もが経験したことのない焦りや不安がある中だからこその人間臭さがもっと描かれてもよかったように思う。

それらも踏まえどこまで事実に基づき再現されているのか不明だが、終始現場と東京で温度差があったことは間違いない。日本は本当に危機管理に欠けていたことが一目瞭然である。素人の政府が出す指示はどれも現場を苛立たせ、幾度となく青島刑事の名台詞が頭に浮かんだ。挙句の果てに総理自らがヘリで現地へ行っている。何が出来ると思ったのか本当に信じ難い。ある有名人が「福島に国会を置けばいい」と言っていたことを思い出す。

あれから9年。時の流れの感じ方は当事者の方たちと我々では違うだろう。

各々が忘れていたこともあるかもしれない(ちなみに私は当時の総理大臣が誰だったかすっかり記憶から消えていた)。薄らいでいく記憶の中でもう一度思い出して欲しい、あの日のあの時を。

誰かの不倫や薬物報道なんかではなく、被災者の「今」をメディアはもっと伝え続けて欲しいと思う。

『FUKUSHIMA 50』予告

『FUKUSHIMA 50』

出演:佐藤浩市 渡辺謙 吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人 吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美
監督:若松節朗
脚本:前川洋一
音楽:岩代太郎
原作:「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将(角川文庫刊)
製作:KADOKAWA
配給:松竹、KADOKAWA
上映時間:122分
公式サイト

© 2020『Fukushima 50』製作委員会

投稿者プロフィール

坂本早苗
札幌市内で働くOL。
ストレス発散はテニスで体を動かすことと大好きなパンを求め全国のパン屋さんの情報収集。着る服は骨格診断を意識しています。
映画は年齢と共にミニシアター系が好みに。
沢山の映画と出会い、観て聴いて考えてお気に入りを探していきたいです。
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