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同性カップルラブストーリー 宮沢氷魚✕藤原季節『his』作品レビュー

作品紹介

宮沢氷魚 映画初主演! 藤原季節 松本若菜 松本穂香 ほか豪華俳優陣が競演!同性カップルが直面する差別や偏見、彼らはどう生きていくのかーー。大ヒット映画『愛がなんだ』の 今泉力哉 監督、待望の最新作!

ストーリー

春休みに江の島を訪れた男子高校生・井川迅と、湘南で高校に通う日比野渚。二人の間に芽生えた友情は、やがて愛へと発展し、お互いの気持ちを確かめ合っていく。しかし、迅の大学卒業を控えた頃、渚は「一緒にいても将来が見えない」と突如別れを告げる。

出会いから13年後、迅は周囲にゲイだと知られることを恐れ、ひっそりと一人で田舎暮らしを送っていた。そこに、6歳の娘・空を連れた渚が突然現れる。「しばらくの間、居候させて欲しい」と言う渚に戸惑いを隠せない迅だったが、いつしか空も懐き、周囲の人々も三人を受け入れていく。そんな中、渚は妻・玲奈との間で離婚と親権の協議をしていることを迅に打ち明ける。ある日、玲奈が空を東京に連れて戻してしまう。落ち込む渚に対して、迅は「渚と空ちゃんと三人で一緒に暮らしたい」と気持ちを伝える。しかし、離婚調停が進んでいく中で、迅たちは、玲奈の弁護士や裁判官から心ない言葉を浴びせられ、自分たちを取り巻く環境に改めて向き合うことになっていく――。

作品レビュー

LGBTQの人が直面するいくつもの偏見と、親権についての問題提起がされている映画『his』

ドラマ「偽装不倫」の宮沢氷魚と、今泉監督作『アイネクライネナハトムジーク』の藤原季節が出演する話題作だ。

井川迅(宮沢氷魚)は日比野渚(藤原季節)に別れを告げられてから、仕事を辞めて田舎に引っ越し1人でひっそりと自給自足の生活を送っている。
それは周囲にゲイだという事を知られることを恐れての行動でもあった。
そこに突然やってきたのが、元恋人の渚である。
しかも渚は6歳の娘・空(紗玖良)を連れていた。
2人を追い出せない迅にやきもきしつつも、仲睦まじい渚と空や振り回されつつも楽しそうな迅を観ている内に次第に絆されていく。
渚の事情が明かされるとその想いは尚更強くなった。
渚は妻・玲奈(松本若菜)との間で離婚と親権の協議をしているらしい。

仕事で海外に行っていた玲奈が帰国後すぐに迅の家までやって来て空を東京に連れて戻してしまうのだが、確かに離婚調停中に勝手に保育園を休ませて元彼の家に連れてきた渚の行動は正しい判断とは言えないだろう。
とは言え、この辺りでは観ている側としては既に迅と渚に肩入れしてしまっているので空を連れ戻されてしまった悲しみの方が大きい。

渚と玲奈の離婚調停では離婚の原因と今後の親権問題はまた別の判断が必要となるのだが、所謂”普通の環境”というのが壁となってくる。
調停が進んでいく中で改めて向き合う事となる迅と渚の関係性。
一方の玲奈は玲奈で仕事の多忙さや慣れない家事・育児疲れによるストレスなどが重なり空に優しく接する事が出来ずにいる。親としての責任を果たせるとは言い難い状況だ。これはこれでどうにも切ない。
もし自分が同じような状況にあれば、おそらく仕事と家事・育児を両立させる事は不可能だ…
玲奈の気持ちもわかって欲しい!と自分自身ブレブレになってきた所でいよいよ裁判も佳境に。
弁護士同士の攻防がなかなかにして辛辣で、仕事優先に生きてきた女性が急にその生活を変える事が出来るのか・ゲイ同士のカップルが子供を幸せな環境下で育てる事が出来るのかというそれぞれの課題を突きつけられ聞いているだけで胸が痛くなる。
どちらの気持ちもわかる!と悲しくなってくるが、子供にとっての幸せを第一に考えるべきなのはこの映画の中だけの話ではないだろう。
渚の選んだ判断は素晴らしいもので、自分勝手だった彼が親として、1人の人間として、成長した瞬間だったと思う。
渚の決断に伴う苦しみと悲しみ。そしてそんな彼を静かに包み込むように慰める迅の姿には思わず涙が出た。

周りから理解されない辛さも描かれているが心が温かくなる部分も多く、想像よりもずっと穏やかに観られる作品だった。
彼等の過ごす空間や醸し出す雰囲気は温かく優しい。
主題歌はSano ibukiの「マリアロード」
繊細で優しい歌声が、この作品に温もりと彩りを加えてくれた。

自分自身は差別的な気持ちは持っていないが、現実問題、今の社会が彼等にとって住み良い状況ではないだろう事は想像にたやすい。
LGBTQに関する知識はあまり無いが、今作を観て改めて理解したいと思った。

岐阜県で撮影された今作だが、撮影期間中に同じロッジで10日間にわたる共同生活をおくったという宮沢氷魚と藤原季節。それはこの作品をつくるの上で大きな役割を持ったに違いない。
ちなみに、藤原季節は北海道出身なので今後も贔屓目に応援していきたいと思う。

『his』 1月24 日(金)よりユナイテッド・シネマ札幌 他全国ロードショー

キャスト: 宮沢氷魚 藤原季節 松本若菜 松本穂香
監督:今泉力哉

企画・脚本:アサダアツシ
音楽:渡邊崇
配給:ファントム・フィルム
上映時間: 127分

©2020 映画「his」製作委員会

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
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