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息子と母の実話を映画化「母さんがどんなに僕を嫌いでも」あらすじ・感想

母の愛を求め続けた青年が起こした実話

作品紹介

日に10万アクセスを誇る人気ブロガーで漫画家の歌川たいじさんが、2013年に出版した同名コミックエッセイの映画化。

胸が張り裂けるような言葉がタイトルのこの映画は、母親から拒絶され、友だちからも愛されることなく育った青年が、母親を大好きな気持ちを諦めることなく運命と向き合い、やがて奇跡を引き起こした実話をもとにした作品。

ストーリー

大好きな母に思いを焦がれた子ども時代の想い出を語る主人公のモノローグから物語は始まる。
親や同居する大人による子どもへの虐待事件が後を絶たない昨今。
主人公のタイジ(太賀)もまた、幼い頃から母・光子(吉田羊さん)にののしられ、殴られ、心身ともに傷つけられてきた経験を持つ。

辛い気持ちを悟られまいと、つくり笑いを浮かべながら、本心を隠して精一杯生き抜いてきたタイジ。やがて大人になったタイジは、心を許せる友人たちと出会い、彼らに背中を押されながら、かつて自分に手をあげた母親と向き合う決意をする――。

予告動画

試写の感想

涙を誘う衝撃的なタイトル。
このタイトルで母親からのネグレクトが予想できる。

23歳で営業マンとして働く主人公のタイジは、お料理が趣味で”まぜごはん”を作るのが得意。劇団に入り新しいことにトライする普通の男子に見える。

そしてタイジの子供の頃の自分の回想シーンが、現代のタイジと交差しながら物語は始まる。彼が料理上手になった理由が明かされていく。

タイジの子供時代は、ぽっちゃり体型で同級生にはブタと罵られ虐められ、友達はいなかった。
家庭では不仲の両親と、見た目は美人だが自己中でわがまま、独裁的な態度の母親からタイジは心身の虐待をされていた。

吉田羊が演じる母・光子の、鬼のような怖い形相と激しい暴言。
「アンタなんて産まなければ良かった!」決して子供に言ってはならない言葉で罵倒する、その強烈な虐待映像にストレスを感じる。

家庭と家族を無視する無責任な父親。母の虐待を知りながら弟を守らない姉。愛と承認欲求に飢えながら虐待行動を繰り返す母。
こんな悲惨な家族が存在していて良いはずはない。
ニュースで見る痛ましい家族の虐待や殺人事件は、減るどころか増えている。

親子の関係は人によっては半世紀以上は続くだろうし、誰もが時々は面倒だったり関係に苛つくことがあるとは思う。それでも一番の理解者が家族であり、互いに応援したりお世話をしたり。それが家族の愛だ。

一番愛して欲しい母親から、存在を無視されたタイジの辛さがヒシヒシと伝わり何度も涙がこぼれてしまう。タイジ役の太賀の高い演技力に引き込まれていった。

原作のコミックエッセイ本の中で、著者の歌川たいじさんは、ゲイであることを明かしているが、映画の中のタイジはゲイでは無い。セクシャルマイノリティの差別をテーマに組み入れずに、母と子の物語に集約したという御法川監督。

他人を変えたいなら、まずは自分が変わらなくては…タイジを可愛がってくれた父の工場のお婆ちゃん(木野 花)や、大人になって劇団で出会った友達のキミツ(森崎 ウィン)。周囲の愛に支えられ、タイジは母への思い方を変えていく。

“母さんがどんなに僕を嫌いでも、僕は1人で生きていく”から”母さんがどんなに僕を嫌いでも、僕は母さんが大好きだ”。
成長し変わっていくタイジの心を読みとりながら鑑賞してほしい。

 

『母さんがどんなに僕を嫌いでも』11月16日(金)より札幌シネマフロンティア、イオンシネマにて公開

出演: 太賀、吉田 羊、森崎ウィン、白石隼也、秋月三佳、小山春朋
監督: 御法川修
脚本:大谷洋介
原作:歌川たいじ「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(KADOKAWA 刊)
主題歌:ゴスペラーズ「Seven Seas Journey」(キューンミュージック)
2018年/104分/5.1ch/シネマスコープ
配給: REGENTS

公式サイト 

©「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会

投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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