2018年11月21日
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2018年2月3日公開の映画「羊の木」吉田大八監督インタビュー

 

 

 

2017年12/月18日 吉田大八監督合同取材 記事

 

山上たつひこ、いがらしみきおという漫画界のレジェンドがタッグを組む傑作コミックを、吉田大八監督が映画化したこの作品。

観た人それぞれ、思わず自分に そして自分が住む街に置き換えて考えてしまうであろうヒューマン・サスペンス。

2/3の公開を前に、吉田大八監督(以下:監督)を札幌に迎えた合同取材が行われた。

数名の学生達や筆者の質問にもひとつひとつ丁寧に答える監督の柔らかな姿勢に感謝したい。

この作品は勿論 今までの作品も改めて観てみたくなるようなインタビューだった。

 

司会:それでは早速いくつか質問させて頂きます。

何故「羊の木」を映画化しようと思われたのですか?

 

監督:最初は原作を知り合いのプロデューサーから教えて貰ったんです。

この映画を僕が撮ると面白くなるんじゃないか、とそのプロデューサーが思ったのでしょう。

読んですぐ、その設定の斬新さと力強さに心を鷲掴みにされました。

元受刑者を国家的プロジェクトとして移住させるという”もしかしたら近い将来起こりうるかもしれない”という妙なリアリティに惹かれました。

 

司会:主演に錦戸さんを起用された理由を教えて下さい。

 

監督:一緒に仕事をした事は無かったんですが、僕が観た映画とかドラマの中では「普通の人」を演じている事が多くて、普通の人を演じながらも魅力があるという俳優はなかなかいないので、気になる存在でした。

今まで僕の映画ではなかった、「普通の主人公が異常な状況に立ち向かっていく」というタイプの物語に、彼と一緒に挑戦してみたいなと。

質問:原作よりも主人公の年齢が若く思えるのですが、何故若く設定しようと思ったのでしょうか。

 

監督:誰に演じて貰うか考えていたときの”直感”としか言いようがないのですが…若い主人公で観たいとまず自分が思ったんですね。

世界と比べて日本では、違う文化や習慣を持つ人と接するという機会が少ないですよね。ただこれからはそう言ってはいられない。僕達世代よりも若い方たちにとって「他者と一緒にどう生きるか」はより切実な問題だと思います。今回の映画のテーマは、若い人達に向けて語りたいなと思いました。

 

質問:監督が気に入っているシーンや思い出深いシーンはありますか?

 

監督:今、ふと思いついたのはバンドを演奏しているシーン。高校の時に自分がやっていたバンドも思い出して、懐かしいような不思議な感覚でした。

 

質問:監督は、受刑者を町に受け入れるかの決断を迫られた時はどうしますか。

 

監督:重たい質問ですね(笑)。

例えば人を殺したと聞いても、「誰を殺したのか」という事によってその人に対する心構えが違うじゃないですか。自分をいじめていた上司を我慢出来なくなって衝動的に殺してしまったのか、あまり考えたくは無いですが、自分の子供を虐待して殺してしまったのか。あるいは仕返しなのか。一口で殺しと言っても色んな殺しがある。

 

最初は「人を殺した人には自分に近づいて欲しくない」と一回線を引くんです。

でも例えば、この物語の中で受刑者6人全員は拒めないとする。6人の中で誰ならば隣に来てもいいか?と考えると、もう少し細かく線を引く必要があると思うんです。そしてその問いに正解がないという事が意外と大事というか。この質問には答えがないけれど考え続けるしかないんです。考え続ける事にすごく意味がある。

 

質問:原作とは異なる結末にアレンジしてあると思いますが、監督の想いというのはありますか。

 

監督:原作のラストはあまりにもパワフルすぎてうまく飲み込めなくて。自分の中で腑に落ちるまで時間がかかったんですね。

物語のスピリットというのは山上さんといがらしさんから預かったものですから、その中で自分なりに答えを出したものです。

 

質問:国際的な映画祭にいくつか参加されて、海外の方に観て頂くというのはどうでしたか。

 

監督:この映画に関して海外の方からは、「衝撃を受けた」「最近の日本映画と違う」という評価をいただきました。

最近は”この映画はこういう映画”とあらかじめ予想出来る内容の映画が多いと聞きます。

”感動したいからこの映画”に行くだとか、”ときめきたいからこの映画”だとか、映画の役割がそうなってきている。

この映画は僕自身作りながらどういう気持ちになるか、あえて決めないで作っています。僕は欲張りだから、可能ならあらゆる感情を1本の映画の中に込めたい。感動するのも笑うのも、酷い気持ちになるのも、どれか一つのために他を諦めようとはなかなか思えないんです。

笑えるシーンの後に残酷なシーンがあったり、その後にほのぼのとしたシーンが来たりというのは、自分のなかでは凄く自然な事です。

海外の方の反応を見ると、そういう映画が今の日本では減っているのかな?という気はしました。

 

質問:「羊の木」も「桐島、部活やめるってよ」も田舎がテーマでしたが、北海道の田舎で撮りたい映画の構想はありませんか?

 

監督:北海道で撮った映画って、同じ日本なのにトーンが違うじゃないですか。明らかに空気が違う。

外国に行けば簡単に異国情緒は手に入りますけど、北海道も土地の持つ表情や匂いが全然違って、それはそこで演じる俳優にも影響するんです。

今の所予定は無いですが、是非いつか機会があれば、と思います(笑)

 

 

『羊の木』感想記事は下記より

彼らは全員、元殺人犯だった。「羊の木」2018年2月3日公開 試写会の感想

(c)2018「羊の木」製作委員会 (c)山上たつひこ いがらしみきお/講談社

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。10月から毎週 木曜日 18:30-19:00の枠にお引越し。
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