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感動の実話『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』

作品紹介

ドイツ占領下のポーランドで自ら経営していた軍需工場に労働者としてユダヤ人を雇い入れ、その身柄を保護し救ったオスカー・シンドラー。

ナチスに迫害されていた多くのユダヤ人にビザを発給し、彼らの亡命を手助けし「日本のシンドラー」と呼ばれた外交官・杉原千畝。
彼らと同じように、ナチス支配下の悲惨な状況の中、自らの危険を冒してでも、ユダヤ人の命を救った夫婦がいた。それは第2次世界大戦中のワルシャワで動物園を営む、ヤンとアントニーナ夫妻だ。彼らは、ナチスに追われたユダヤ人を動物園の地下に匿い、300人もの命を救うという奇跡を起こす。

「すべての命は等しく、すべての命は守られるべきものである」
アントニーナの行動は、絶望の淵へ立たされたユダヤ人たちを勇気づける希望になった。そして、世界各地における民族対立、紛争、テロ、ヘイトスピーチが後を絶たない今日においても、この物語は、人間の尊厳を見つめ直すことの重要性を私たちに問いかけている。

 

本作は、ダイアン・アッカーマンのノンフィクション作品「ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語」(亜紀書房)を映画化。そして今回、主演と共にエグゼクティブプロデューサーを務めたのは、『ゼロ・ダーク・サーティ』で第70回 ゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞を受賞し、『オデッセイ』など話題作への出演が続くジェシカ・チャステイン。

「人間の皮を脱ぎ捨てて、動物の眼でまわりを眺めてみるのが大好きだった。そこから彼らが何を見、感じ、恐れ、感知し、記憶しているのか、どんなことに関心を持ち、どんなことを知っているのか、直感を働かせてよく書き留めていた」(原作より一部抜粋)というアントニーナ・ジャビンスカの特徴をとらえ、ライオン、象、シマウマ、ウサギなど様々な動物たちとのリアルな触れ合いを通して、その母性溢れる優しさを表現している。

ジェシカは「彼女の勇気ある行動、プライドと文化を失わないように努めたことに感銘を受けた」と語り、撮影前には、アントニーナの娘、テレサに会い直接話を聞いたり、またワルシャワ動物園も訪問。「母はどんな状況であっても自分が今何をすべきか直感的にわかっていた」というテレサの言葉を胸に役作りに挑み、アントニーナ・ジャビンスカという強い信念を持つ女性を現代へと再び蘇らせている。

 

ストーリー

1939年、ポーランド・ワルシャワ。ヤンとアントニーナ夫妻は、当時ヨーロッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいた。アントニーナの日課は、毎朝、園内を自転車で巡り動物たちに声をかけること。時には動物たちのお産を手伝うほど、献身的な愛を注いでいた。
しかしその年の秋、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。
動物園の存続も危うくなる中、アントニーナはヒトラー直属の動物学者・ヘックから「あなたの動物を一緒に救おう」という言葉と共に、希少動物を預かりたいと申し出を受ける。寄り添うような言葉に心を許したアントニーナだったが、ヤンはその不可解な提案に不信感を募らせていた。
ヤンの予感はまさに的中し、数日後、立場を一転したヘックは「上官の命令だ」という理由をつけて、園内の動物たちを撃ち殺すなど残虐な行為に出る。
一方でユダヤ人の多くは次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)へ連行されていく。その状況を見かねた夫のヤンはアントニーナに「この動物園を隠れ家にする」という驚くべき提案をする。

ヤンの作戦は、動物園をドイツ兵の食料となる豚を飼育する「養豚場」として機能させ、その餌となる生ごみをゲットーからトラックで運ぶ際に、ユダヤ人たちを紛れ込ますというものだった。人も動物も、生きとし生けるものへ深い愛情を注ぐアントニーナはすぐさまその言葉を受け入れた。連れ出された彼らは、動物園の地下の檻に匿われ、温かい食事に癒され、身を隠すことが出来た。しかし、ドイツ兵は園内に常に駐在しているため、いつ命が狙われてもおかしくない。アントニーナの弾くピアノの音色が「隠れて」「静かに」といった合図となり、一瞬たりとも油断は許されなかった。
さらにヤンが地下活動で家を不在にすることが続き、アントニーナの不安は日々大きく募る。それでも、ひとり”隠れ家“を守り抜き、ひるむことなく果敢に立ち向かっていくのだが?

 

試写会の感想

以前「シンドラーのリスト」を見た後、2度とナチスのユダヤ人に対する大量虐殺を扱った映画は見たくないと思ったが、この「ユダヤ人を救った動物園」を見た後も、同じ思いにさせられた。

人間が人間に対する冷酷非情な行いは、見ていられないし見たくもない。と思いつつ怖いもの見たさなのか、映画だからなのかつい見てしまう。映像の作品として。

ただこの作品は、事実に基づいて作られたことには違いなく、70数年前にポーランドで実際にあった恐ろしき現実なのだ。

ワルシャワ動物園を営んでいるヤンとアントニーナ夫妻は、動物たちと共に幸せな毎日を過ごしていたが、ドイツ軍のポーランド進攻によって一変する。動物園は破壊され、動物たちは次々と殺される。さらには、共に生きてきたユダヤ人に対する迫害が始まり、見かねた夫妻は動物園の地下にユダヤ人を匿うことを決意する。ドイツ軍の監視のもと命がけの行動をとって、沢山のユダヤ人を地下室に隠す。

アントニーナのピアノを合図に息を潜めたり、食事をしたり、毎日が死と隣り合わせの生活を送っていた。

やがてドイツ軍の動物学者ヘックに知られしまうが、アントニーナはユダヤ人を逃がして事なきを得る。

なぜアントニーナがそこまで危険を犯してまでもユダヤ人を救ったのか~彼女は決して強くない。実にエレガントな女性だ。

ただ、彼女には人をも動物をも区別なく注げる母性のような優しさを持っていた。自分が助けなければ間違いなく死んでゆく命を、黙って見過ごしてはいられなかったのだ。人間として、母親として。

こうして助けられたユダヤ人は多数いたが、虐殺されたユダヤ人は何百万人もいたことを、この作品は忘れてはいない。ユダヤ人の強制収容所から、絶滅収容所に移送される貨物列車に、子供たちが乗り込む時、ヤンに乗せくれと両手を上げるシーンだ。

その列車が死の列車だと知っているヤンに、次から次と無邪気に抱っこをねだる子供たち。

これほど残酷な光景を描いたこの作品は、重く衝撃的なメッセージを残している。

 

予告動画

12月15日(金)シアターキノにて公開

原題:The Zookeeper’s Wife 
原作:ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語(亜紀書房)
脚本:アンジェラ・ワークマン 
監督:ニキ・カーロ『スタンドアップ』 
出演:ジェシカ・チャステイン  ダニエル・ブリュール ヨハン・ヘルデンベルグ マイケル・マケルハットン 
後援:ポーランド広報文化センター  
後援:ポーランド広報文化センター 公益社団法人日本動物園水族館協会 
協力:赤十字国際委員会(ICRC) 
配給:ファントム・フィルム  
宣伝:ファントム・フィルム、メゾン 
上映時間:127分

公式サイト
(C)2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.

投稿者プロフィール

植田 研一
昭和26年生まれ。若い時に演劇を志したが、夢破れテレビ界でサラリーマン生活を送る。昨年退職し、現在隔月でひとり語りを開催している。
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