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NASAを支えた理系女子たちの奇跡『ドリーム』( 原題: HIDDEN FIGURES )作品レビュー

作品紹介

アポロ計画については皆が知っている。人類による宇宙への大きな第一歩を踏み出した勇敢な男性宇宙飛行士たち―――――ジョン・グレン、アラン・シェパード、ニール・アームストロングの名前もすぐに列挙できるだろう。しかしキャサリン・G・ジョンソン、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンという名前を学校で習うことはないし、ほとんどの人に知られてさえいない。

者も驚くほどの快進撃を見せた。それまで3週連続ナンバーワン・ヒットを飛ばしていた『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』を退け、全米興収チャート1位を奪取。その勢いに乗って11週連続トップテン入りのロングラン・ヒットを達成し、アカデミー賞では作品賞、脚色賞、助演女優賞の3部門ノミネートを果たした。東西冷戦まっただ中の時代における歴史の“知られざる真実”を今に伝え、幅広い観客層の熱い共感を誘うとともに、ポジティブな夢や勇気を与えた実録ヒューマン・ドラマ、それが『ドリーム 』である。

1961年、ヴァージニア州ハンプトン。ソ連との熾烈な宇宙開発競争を繰り広げるNASAのラングレー研究所には、ロケットの打ち上げに必要不可欠な“計算”を行うために、優秀な頭脳を持つ黒人女性のグループがあった。そのひとり、キャサリンは数学の天才的な実力を見込まれ、宇宙特別研究本部のメンバーに抜擢されるが、白人男性だけのオフィス環境は劣悪そのもの。同僚のドロシーとメアリーも、それぞれ理不尽なキャリアの壁に直面することに。それでも仕事と家庭を両立させながら夢を追い求めることを諦めなかった3人は、NASAの歴史的な偉業に携わり、自らの手で新たな扉を開いていくのだった……。

アカデミー賞3部門にノミネート、全米で「ラ・ラ・ランド」を超える大ヒットを記録。爽快なバイタリティと軽妙なユーモアに満ちあふれ、等身大の共感を誘う“お仕事ドラマ”としても、NASAの宇宙開発の軌跡を描く“歴史ドラマ”としても一級の出来ばえを誇るエンターテインメント快作。新たな時代を切り開き、とびきりの夢を叶えたヒロインたちの輝かしい真実がここにある。

ストーリー

東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていた。リーダー格のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職への昇進を希望しているが、上司ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまう。技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志しているが、黒人である自分には叶わぬ夢だと半ば諦めている。幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めてハリソン(ケビン・コスナー)率いる宇宙特別研究本部に配属されるが、オール白人男性である職場の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらない。それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAのマーキュリー計画に貢献しようと奮闘していた。

1961年4月12日、ユーリ・ガガーリンを乗せたソ連のボストーク1号が、史上初めて有人で地球を一周する宇宙飛行を成功させた。ソ連に先を越されたNASAへの猛烈なプレッシャーが高まるなか、劣悪なオフィス環境にじっと耐え、ロケットの打ち上げに欠かせない複雑な計算や解析に取り組んでいたキャサリンは、その類い希な実力をハリソンに認められ、宇宙特別研究本部で中心的な役割を担うようになる。ドロシーは新たに導入されたIBMのコンピュータによるデータ処理の担当に指名された。メアリーも裁判所への誓願が実り、これまで白人専用だった学校で技術者養成プログラムを受けるチャンスを掴む。さらに夫に先立たれ、女手ひとつで3人の子を育ててきたキャサリンは、教会で出会ったジム・ジョンソン中佐(マハーシャラ・アリ)からの誠実なプロポーズを受け入れるのだった。

そして1962年2月20日、宇宙飛行士ジョン・グレンがアメリカ初の地球周回軌道飛行に挑む日がやってきた。ところがその歴史的偉業に全米の注目が集まるなか、打ち上げ直前に想定外のトラブルが発生。コンピュータには任せられないある重大な“計算”を託されたのは、すでに職務を終えて宇宙特別研究本部を離れていたキャサリンだった……。


感想レビュー

もし、1960年代のアメリカに人種差別がなかったら、宇宙への初めての有人飛行はソ連ではなくて、アメリカだったに違いない。そんな思いを強烈に感じさせる。アメリカの光りと影を、鮮明に描いた見ごたえある映画だ。

3人の黒人女性がアメリカ社会で、その中でも国の威信を担うNASA の中で、如何に自身の地位を築いてゆくか。トイレに行くのも、800m先の黒人専用のある建物にまで行かなくてはならないなど、黒人蔑視の劣悪な環境の中で、3人が恵まれた才能を埋没させることなく、一歩一歩花開かせてゆく姿は、まさにアメリカンドリームそのものだ。

しかも、この物語が実話なんだと知ると、アメリカという国の奥深さを痛感させられる。50年経って初めて知った。

彼女らの活躍によって、宇宙飛行が可能になってゆく過程は、ワクワクするし、拍手を贈りたくなる。

ロケットを宇宙に飛ばすのは、性別や肌の色や学歴ではなくて、早くて正確な計算ができる人だ。誰もが認めてくると、上司のハリソン(ケビン コスナー)が、白人専用のトイレの表示板を叩き壊すが、胸の空く思いがした。

時折挿入される、当時のニュース映像が物語を膨らませている。生々しく迫力がある。アメリカという国の今の原点を見る思いがした。
50年前の遥か昔の話と区別してはならない。今、強いアメリカを待ち望む風潮が高まっている中では、必然的に生まれた作品ではないか。一見の価値がある秀作だ。

映画『ドリーム』予告

 

■原題・英題
HIDDEN FIGURES

■スタッフ/キャスト
【スタッフ】監督:セオドア・メルフィ
【キャスト】タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー、キルスティン・ダンスト、ジム・パーソンズ、マハーシャラ・アリ
【配給】20世紀フォックス映画
【上映時間】127分

オフィシャルサイト

© 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation

投稿者プロフィール

植田 研一
昭和26年生まれ。若い時に演劇を志したが、夢破れテレビ界でサラリーマン生活を送る。昨年退職し、現在隔月でひとり語りを開催している。
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