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真の英雄をメル・ギブソン監督が映画化 沖縄県・高田高地での実話「ハクソー・リッジ」あらすじ 感想

アカデミー賞2部門受賞の衝撃の戦争超大作!!

監督メル・ギブソン×製作ビル・メカニック『ブレイブ・ハート』のコンビ再び!

第2次世界大戦下、銃を持たずに戦った兵士がいた―。彼は難攻不落の最終戦地“ハクソー・リッジ”において、一夜で75名の命を救った。誰もが想像を絶する戦場で彼の行動がいかに勇気あるものだったのか―。彼の強い信念と葛藤の驚くべき真実が明かされる、衝撃の実話。主演は『スパイダーマン』シリーズのアンドリュー・ガーフィールド。

  • 〈ハクソー・リッジとは…〉第2次世界大戦の激戦地・沖縄の前田高地のこと。多くの死者を出した壮絶な戦いの場として知られている。ハクソーとはのこぎりで、リッジとは崖の意味。150メートルの断崖絶壁の崖が、のこぎりのように険しくなっていたことから、最大の苦戦を強いられたアメリカ軍が、“ハクソー・リッジ”と呼んだ。

  

ストーリー

 ヴァージニア州の豊かな緑に囲まれた町で生まれ育ったデズモンド・ドスは、元気に野山を駆け回る少年だったが、家族に問題を抱えていた。父親のトム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は、兵士として戦った第1次世界大戦で心に傷を負い、酒におぼれ、母バーサ(レイチェル・グリフィス)とのケンカがたえない日々を送っていた。

 月日は流れ、成長したデズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、看護師のドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)と恋におち、心躍る時を過ごしていた。だが、第2次世界大戦が日に日に激化し、デズモンドの弟も周りの友人たちも次々と出征する。そんな中、子供時代の苦い経験から、「汝、殺すことなかれ」という教えを大切にしてきたデズモンドは、「衛生兵であれば自分も国に尽くすことができる」と陸軍に志願する。

 グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、ジャクソン基地で上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。体力には自信があり、戦場に見立てた泥道を這いずり回り、全速力で障害物によじ登るのは何の苦もなかった。だが、狙撃の訓練が始まった時、デズモンドは静かにしかし断固として銃に触れることを拒絶する。

 軍服や軍務には何の問題もなく「人を殺せないだけです」と主張するデズモンドは、「戦争は人を殺すことだ」と呆れるグローヴァー大尉から、命令に従えないのなら、除隊しろと宣告される。その日から、上官と兵士たちの嫌がらせが始まるが、デズモンドの決意は微塵も揺るがなかった。しかし、出征前に約束したドロシーとの結婚式の日、デズモンドはライフルの訓練を終えないと休暇は許可できないと言われ、命令拒否として軍法会議にかけられることになる。面会に訪れたドロシーに、銃に触れないのはプライドが邪魔しているからだと指摘されたデズモンドは、その“プライド”こそが大切だと気付く。「信念を曲げたら生きていけない」というデズモンドの深い想いに心を打たれたドロシーは、「何があろうと、あなたを愛し続けるわ」と励ますのだった。「皆は殺すが、僕は助けたい」─軍法会議で堂々と宣言するデズモンド。ところが、意外な人物の尽力で、デズモンドの主張は認められる。

 1945年5月、沖縄。グローヴァー大尉に率いられて、「ハクソー・リッジ」に到着した第77師団のデズモンドとスミティ(ルーク・ブレイシー)ら兵士たち。先発部隊が6回登って6回撃退された末に壊滅した激戦地だ。150mの絶壁を登ると、そこには百戦錬磨の軍曹さえ見たことのない異界が広がっていた。前進した瞬間、四方八方からの攻撃で、秒速で倒れていく兵士たち。他の衛生兵なら見捨てるほどの重傷の兵士たちの元へ駆け寄り、「俺が家に帰してやる」と声をかけ、応急処置を施し、肩に担いで降り注ぐ銃弾の中を走り抜けるデズモンド。ひるむことなく何度でも、戦場に散らばった命を拾い続けるデズモンドに、感嘆の目を向け始める兵士たち。しかし、武器を持たないデズモンドに、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた─。

  

試写の感想

良心的兵役拒否者である、デズモンド・ドスの真実のストーリーをメル・ギブソン監督が映画化。本当のアメリカの英雄物語を映画化するにあたり、デズモンド・ドスの許可を取るのに何年もの歳月が掛かった。

デズモンドは太平洋戦争開戦当時、造船所で働いていたが戦争で純粋に人を助けたいと衛生兵として志願。彼は敬虔なクリスチャンで、十戒のカインとアベルの絵にある、人を殺してはならない戒律と、土曜日の安息日の教えを忠実に守ろうとする。宗教的理由から良心的兵役拒否は可能ではあったが、しかし兵士として志願しながらも、戒律を守り絶対に武器を手にしないデズモンドは、兵役訓練の中で部隊の仲間や上官から虐めに合い、辛い月日を過ごすことになる。

陸軍はデズモンドを退役させるため、ライフル部隊や歩兵部隊に入れて、衛生兵としての訓練を受けさせず、休暇を取ることも困難だった。厳しい訓練や砂漠での雑用で2年掛かり、その後に彼の信念が大統領命令で認められ、武器を持つことを拒否する衛生兵となる。映画には詳しく描かれていないが、デズモンドにとってはグアム島が初めての戦地となる。厳しい戦闘の中で敵も味方も関係なく、人々を救助をするデズモンドの噂は広がったそうだ。

そして最悪の地である、沖縄県の高田高地(ハクソー・リッジ)に戦地が移る。高地の中には日本の防空壕が幾つもあり、その中には多数の日本兵が潜んでいる。連日戦ってもゾンビのように日本兵が壕から現れて、殺し合う日米の兵士達。私はこれほどまでに長い戦闘シーンを映画で観たことはない。悲惨で惨たらしい戦いに、胸が締めつけられた。

当時の関係者の証言によると実際の沖縄戦では、ライフルや迫撃弾により、多くの日米兵士が亡くなっていった。しかし何故かデズモンドには弾丸は当たらなかったそうだ。神に守られていると当時の仲間たちは思った。12時間で75名の負傷者を、たったひとりで救出したデズモンド。10分間に一人ずつ救助し、一人助ける毎に「神様、もう一人助けさせてください」とデズモンドは祈った。

もやい結びというロープの結び方を訓練するシーンが出てくるが、実際のデズモンドの証言ではダブルもやい結びという、少し変わった結び方が彼の思考に降りてきたそうだ。その思考は突然頭の中でひらめき、そのダブルもやい結びで、75名の負傷者を高地から下ろして救助した。デズモンドは強い信仰心により神から守られ、人々を助けるためにまるで神が啓示を出したようだ。

人と人が殺し合うことは、本当に悲しいことだ。先の大戦では世界中の人が亡くなっていった。テロや北朝鮮問題と、混沌とした戦争の影が近づいているからこそ、世の中に知ってほしい真の英雄デズモンド・ドスの奇跡の実話である。

デズモンドはこの沖縄戦で負傷をしたことから原因で肺結核となり、聴力をほとんど失った。戦後は慎ましく質素に生活したが、良心的兵役拒否者の中で初めて、トルーマン大統領からの名誉勲章を得たデズモンド・ドスの物語を通じて、沖縄でどのような戦いがあったのか、我々は今知るべきだろう。

  

予告編

スタッフ/キャスト

監督:メル・ギブソン『ブレイブ・ハート』『パッション』

製作:ビル・メカニック『ブレイブ・ハート』『タイタニック』

キャスト:
・アンドリュー・ガーフィールド(アメイジング・スパイダーマン)
・サム・ワーシントン(アバター)
・テリーサ・パーマー(トリプル9裏切りのコード)
・ルーク・ブレイシー(X-ミッション)
・ヴィンス・ボーン(ロストワールド)
・ヒューゴ・ウィーヴィング(マトリクス/ロード・オブ・ザ・リング)

【原題:Hacksaw Ridge/2016年/オーストラリア、アメリカ/139分/英語、日本語】公式サイト:http://hacksawridge.jp/

配給:キノフィルムズ

© Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016

投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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