ポール・トーマス・アンダーソン監督がレオナルド・ディカプリオを主演に迎えた最新作が公開される。カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界三大映画祭で監督賞を制覇した唯一の存在が手がける、まさに映画界待望の一作だ。
物語の中心は、かつて革命家として世を騒がせたボブ(ディカプリオ)。今は娘ウィラと共に静かに暮らすが、執拗に彼らを追う変態軍人ロックジョー(ショーン・ペン)が姿を現す。ボブの前に現れるのは、謎めいた空手のセンセイ(ベニチオ・デル・トロ)。頼りない父親を支える存在として、物語に独特の緊張とユーモアを添える。
ディカプリオ、ペン、デル・トロというアカデミー賞受賞俳優が揃い踏みし、怒涛のチェイスとバトルを展開。過去の因縁、父と娘の絆、そして予測不能なアクションが交錯する。シリアスさにブラックユーモアを差し込み、飽きさせないリズムで走り抜ける異色のエンターテインメント。
最愛の娘と平凡ながらも冴えない日々を過ごす元革命家のボブ(ディカプリオ)。 突然、娘がさらわれ、生活が一変する。異常な執着心でボブを追い詰める変態軍人“ロックジョー”(ペン)。 次から次へと襲いかかる刺客たちとの死闘の中、テンパりながらもボブに革命家時代の闘争心がよみがえっていく。 ボブのピンチに現れる謎の空手道場の“センセイ”(デル・トロ)の手を借りて、 元革命家として逃げ続けた生活を捨て、戦いに身を投じたボブと娘の運命の先にあるのは、絶望か、希望か、それともー
若き日の革命運動から物語は幕を開ける。主人公ボブは、爆弾に精通した革命家でありながら、肉体的なアクションには不器用な男だ。彼の運命を大きく変えるのは、革命の只中で出会ったひとりの女性。やがて妻となるその女性は、破天荒で周囲を巻き込み、ボブと娘ウィラの将来にまで影を落とす存在だった。
時を経て、頼りないシングルファーザーとしてウィラを育てるボブ。警察や軍の目を避けながら、密かに暮らしていたが、やがて狂気をまとった軍人ロック・ジョーに狙われ、逃走と対峙を余儀なくされる。ここから物語は、息もつかせぬチェイスの連鎖へとなだれ込んでいく。
ボブの不器用さを補うのが、ベニチオ・デル・トロ演じる空手のセンセイだ。戦闘に不慣れなボブを支え、父と娘を守ろうと奮闘する姿は物語の大きな軸となる。また、革命時代の仲間たちもボブの行く手を助け、逃走劇は単なる追う者と追われる者の図式を超えた群像劇の趣を帯びていく。
さらに印象的なのは、ウィラの存在である。普通の高校生としての素朴さを残しつつも、危機にさらされる中で見せる勇敢さは、ボブの頼りなさを際立たせながら物語に緊張感を与える。父と娘、それぞれの立場の違いが、スクリーンにリアリティを生み出している。
170分という長尺ながら、観客を飽きさせない仕掛けが随所に散りばめられている。シリアスなサスペンスの中に唐突に差し込まれるブラックユーモアや皮肉な笑いは、重苦しい空気を一瞬和らげ、物語に独特のリズムを与える。この緩急こそが本作の魅力だ。
張り詰めた緊張感の中に時折差し込まれるブラックユーモアや、思わずクスリとさせられる笑いのセンスは、本作を単なるチェイススリラーに終わらせない。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、終始息をのむアクションの連続に加えて、意外性のあるユーモアが交錯する異色のアクション大作だ。シリアスと軽妙さが同居する独自のリズムは、観る者を一瞬たりともスクリーンから離さない。予測不能な展開に魅了され、気づけば物語の虜となっているだろう。
スタッフ/キャスト
監督/脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン
ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホール
テヤナ・テイラー、チェイス・インフィニティ
上映時間: 170分
配給: ワーナー・ブラザース
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