三部作であることが発表されている『劇場版モノノ怪』。 2024 年 7 月に公開された第一章となる『劇場版モノノ怪唐傘』では、男子禁制の女の園であると同時に重要な官僚機関でもある特別な場所・大奥に、様々な想いや希望を抱き足を踏み入れた新人女中や先輩女中たちにフォーカスを当て、「個を殺し集団に染まることを強いられる生き辛さ」を描いた。独自性の高い唯一無二のアニメーション、89 分の尺に対して2,600 という膨大なカット数からなる圧 倒的な映像表現、こだわり抜かれた音楽とキャストの演技が観客を魅了。「第 28
回ファンタジア国際映画祭」では長編アニメ部門最優秀賞と観客賞銅賞を W 受賞するなど、国内外から高い評価を得た。
世を統べる〝天子様〟の世継ぎを産むために各地から美女・才女たちが集められた〝女の園〟であると同時に重要な官僚機構でもある大奥。
そこに足を踏み入れた新人女中のアサ(黒沢ともよ)とカメ(悠木碧)は、「自分の大切なものを捧げる」という儀式をはじめとした厳しい洗礼の数々に適応しようともがくなかで、無二の友となっていく。一方その頃、御年寄の歌山(小山茉美)がまとめる大奥を不穏な影が覆いつつあった。とある女中の失踪、重要な催事の延期、夜ごと募り積もる女たちの情念―。
やがてどこからともなく唐傘が回るような異音が響き渡り、女中たちは一人またひとりと 理性を失い始める。そんな折、モノノ怪の気配を感じ取った薬売りが大奥に推参。ただし、
「形」「真」「理」の三様が揃わなければ、モノノ怪を斬り祓う退魔の剣を封印から解き放つことは叶わない。薬売りが大奥に隠された恐ろしくも切ない真実に触れるとき、壮絶
なる退魔と救済の儀が始まる―。
謎の男・薬売りが情念や怨念が取り憑いたモノノ怪が引き起こす怪異を鎮める物語、『モノノ怪』
劇場版 唐傘で初めてこの世界に触れたのだが、他には無い独特の世界観に驚きすっかり虜になってしまった。
非常に楽しみにして拝見した今作もまた、期待を裏切らないクオリティ。そしてストーリーも心に響いた。
色鮮やかでありながら、憎哀や妖しさも纏う美しさ。
一章からの流れで観た方がより楽しめると思うが、大奥ならではの問題が表面化する今作だけでも十分雰囲気は味わえる。
複雑に絡み合う人間模様の中であれ、いつの世も変わらぬ子を想う母の愛に触れられた時には安心感すら覚えた。
薬売り(神谷浩史)の声もキャラクターデザインも非常に好みで、それもまたこの作品を観る目的のひとつ。
薬売りの姿も魅力的だが「モノノ怪」を斬り祓い、鎮めるの本来の姿も力強く頼もしい。
退魔の剣の封印が解かれ、モノノ怪を沈めるシーンは特に圧巻である。
作品全体が色とりどりな上スピード感に溢れている為目が忙しいのだが、それもまた『モノノ怪』らしさとも言える。
今から既に第三章の公開が待ち遠しい。
神谷浩史 日笠陽子 戸松遥 ほか
配給:ツインエンジンギグリーボックス
制作:くるせるEOTA
公式サイト
Ⓒツインエンジン