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『シビル・ウォー アメリカ最後の日』10/4公開 作品レビュー

作品紹介

アメリカ合衆国で南北戦争(Civil War)が始まった1861年4月12日から163年後となる今年の同日、北米でその内戦の名を冠する『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が公開された。第95回アカデミー賞では作品賞含む最多7部門を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をはじめ、数多の傑作を世に送り出してきたA24が過去最高額の予算を投じて製作した本作は、同スタジオで最大のオープニング成績となる大ヒット。

監督・脚本を務めたのは『エクス・マキナ』や『MEN 同じ顔の男たち』など、独創的な世界観と妖麗な映像表現で世界に衝撃を与え続けるイギリスの鬼才アレックス・ガーランド。

テキサスとカリフォルニアが同盟を組むという突飛に思える設定だが、巧みな筋運びと戦争をゼロ距離で体感させる圧巻の没入観により、明日(今日)起こるかもしれない“分断の終着点”として驚くほどのリアリティを物語に手繰り寄せた。これまでSFやホラーを手掛けてきたガーランド監督は、新境地となるアクションでも卓越した手腕を発揮。

ロードムービーやスリラーの要素も交え、大国アメリカの崩壊を生々しくも大迫力で描出する。主人公のリーを演じるのは、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた名優キルステン・ダンスト。
内戦で崩れゆくアメリカの惨状を前に、強固な精神が少しずつ蝕まれていく戦場カメラマンの機微を繊細に表現する。そんな主人公と対照的に、死線を越えるなかで悲劇的な成長を遂げる若手カメラマンのジェシーに抜擢されたのがケイリー・スピーニー。

『プリシラ』でヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞し、今夏公開予定のリドリー・スコット製作『エイリアン:ロムルス』でも主演を果たすなど、今最も注目が集まる若手俳優の一人だ。その他にもNetflix製作ドラマ『ナルコス』でパブロ・エスコバルを演じたワグネル・モウラ、『DUNE/デューン 砂の惑星』など数多の作品で独特の存在感を示すスティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソンなど、実力派がメインキャストとして脇を固める。

大統領選挙を控え、政治的分極化による社会の分断がかつてないほど深刻化するアメリカに向け、ガーランド監督は警鐘を鳴らす。この大国崩壊のシナリオは、決して対岸の火事では済まされない。

ストーリー

連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている――」。
就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。
だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていく―

作品レビュー

アレックス・ガーランド監督の新作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、近未来のアメリカを舞台に、分裂した国家が内戦に突入する様子を描く。映画は、戦場ジャーナリストのチームが、連邦政府を転覆させようとする西部勢力が迫る中、ワシントンD.C.でアメリカ大統領への取材を試みる姿を追う。

キルステン・ダンストが演じる主人公リーをはじめ、個性的なキャラクターたちが、混沌とした戦場でのリアルな恐怖に直面する。この作品は、アメリカの政治的分断を背景に、ジャーナリズムの役割や暴力への鈍感さを探求する内容だ。

ガーランド監督は、観客に不快感を与えることを意図し、戦争の現実を冷徹に描写している。映画の中で、ジャーナリストたちは戦場の恐怖を記録する一方で、その光景に対する感情を抑え込む姿が描かれている。ケイリー・スピーニーが演じるジェシー・カレンは、戦場カメラマンを目指すが、彼女の足の引っ張り具合が緊張感を与え、観る者をストレスへと引き込む。

やがて、ワシントンD.C.での激しい戦闘が描かれ、アメリカの象徴的な風景が崩壊していく様子が圧倒的なスケールで映し出される。ガーランド監督は、観客に現代のアメリカが直面する危機を考えさせる作品を生み出した。

しかし、内戦のきっかけや争いの背景、兵士たちがなぜ虐殺を行ったのかといった細かいディテールが省かれており、映画の没入感を得るのが難しい。

また、残酷な殺戮や死体のシーンでは、武器を持った人々への嫌悪感が湧き、その描写はホラー映画のような血なまぐささもある。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、政治スリラー的なメッセージを含みつつ、観る者に深い印象を残す映画である。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』10月4日公開


監督・脚本:アレックス・ガーランド
出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニー
原題:CIVIL WAR|2024年|アメリカ・イギリス映画|109分
※PG12
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト

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投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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