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ホラーアニメ『劇場版モノノ怪 唐傘』7月26日公開 作品レビュー

 

作品紹介

2006年にフジテレビの「ノイタミナ」枠で放送されたオムニバスアニメ「怪 ayakashi」の一編「化猫」から派生し、07年にテレビアニメシリーズとして放送され話題を集めた「モノノ怪」の劇場版。江戸時代をモチーフにした世界を舞台に、主人公の薬売りがさまざまな怪異に対峙する姿を描く和製ホラーアニメ。

ストーリー

大奥とは、世を統べる“天子様”の世継ぎを産むために各地から美女・才女たちが集められた“女の園”であると同時に、重要な官僚機構でもある特別な場所。独自の掟が敷かれた“社会”でもあるこの異質な空間に、新人女中のアサ(黒沢ともよ)とカメ(悠木碧)が足を踏み入れる。キャリアアップを図る才色兼備のアサ、憧れの大奥に居場所を求めるカメ。正反対の二人は初日から、大奥で信仰される“御水様”に「自分の大切なもの」を捧げるという、集団に染まるための“儀式”に参加させられる。

そこで起きた出来事をきっかけに、二人の間には絆が生まれてゆく。御年寄の歌山(小山茉美)は、大奥の繁栄と永続を第一に考え女中たちをまとめあげるが、無表情な顔の裏に何かを隠している。そんな中、少しずつ、彼女たちを覆っていく“何か”。

夜ごと蓄積されていく女たちの情念、どこからともなく響いてくる唐傘がカラカラと回るような異音、取り憑かれたように理性を失っていく女中…。
ついに決定的な悲劇が起こり、薬売り(神谷浩史)はモノノ怪を追って大奥の中心まで進むが、モノノ怪を斬り祓うことができる退魔の剣は「形」「真」「理」の三様が揃わなければ、封印を解き抜くことが叶わない。薬売りが大奥に隠された恐ろしくも切ない真実に触れるとき、退魔と救済の儀が始まる──。

作品レビュー

謎の男・薬売りが情念や怨念が取り憑いたモノノ怪が引き起こす怪異を鎮める物語、『モノノ怪』

好みはわかれるかもしれないが、非常にクオリティの高い作品である事は間違いない。

クラウドファンディングに参加した人たちの熱意もあり映画化され、それがモノノ怪を知るきっかけになり作品ファンが増えるという効果が期待出来る仕上がりになっていた。

まず圧倒されるのは映像美。

ここ数年のアニメーションが魅せる実写寄りの美麗さとはまた違い、和紙のテクスチャーとCGとの組み合わせで描かれた色鮮やかな世界は『モノノ怪』が持つ独特な雰囲気そのもの。

万華鏡のような繊細な美しさに吸い込まれそうになるが、どこか妖しさも纏っている。

本作では、新人女中のアサ(黒沢ともよ)とカメ(悠木碧)が大奥入りするところから物語が始まる。

豪華絢爛。美しく煌びやかながら憎悪も見え隠れする大奥に渦巻く人間模様。

中でも、大奥で信仰される“御水様”にまつわる儀式全般は常軌を逸しており、果たしてここで心を壊さず生きていける人はいるのだろうかと本気で心配してしまった。

尚、数カ月に及ぶ試行錯誤の末刷新されたという薬売り(神谷浩史)のキャラクターデザインは非常に好みだった。

薬売りは仮の姿。「モノノ怪」を斬り祓い、鎮めるのが本来の役割である。

ただ闇雲に怪異に立ち向かってもモノノ怪を斬り祓う事は出来ず、「形」「真(まこと)」「理(ことわり)」の三様が揃う事で初めて退魔の剣の封印が解かれるというもどかしさもまたこの作品の魅力。

そしてこの剣を解き放つシーンの精良さたるや。精緻な映像と音楽が一体化し、より深くこの世界に没入出来る演出だった。

ホラーアニメの系統にはなるものの単純なホラーとは違う見せ方をしており、恐怖に震えるというものではなく怖がりな人でもつい聞いてしまう夏の夜の怪談という類の話だ。

是非劇場でこの世界観に触れてみて欲しい。

『劇場版モノノ怪 唐傘』7月26日公開


キャスト
薬売り:神谷浩史
アサ:黒沢ともよ
カメ:悠木碧
北川:花澤香菜
歌山:小山茉美
淡島:甲斐田裕子
麦谷:ゆかな
三郎丸:梶裕貴
平基:福山潤
溝呂木北斗:津田健次郎
監督:中村健治
配給:ツインエンジン ギグリーボックス
上映時間:89分
主題歌:「Love Sick」アイナ・ジ・エンド(avex trax)
公式サイト
©ツインエンジン

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
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