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異色偏愛コメディ【春画先生】 作品レビュー

作品紹介

江戸文化の裏の華である“笑い画”とも言われた春画の奥深い魅力を、真面目に可笑しく説く変わり者の春画研究者と弟子のコンビが繰り広げる春画愛をコミカルに描く本作。主演に内野聖陽、ヒロインに北香那を迎え、『月光の囁き』、『害虫』などの名匠・塩田明彦が原作・脚本を手掛ける。本作は、映倫審査で区分【R15+】作品として指定を受け、商業映画として全国公開される作品としては、日本映画史上初、無修正での浮世絵春画描写が実現した。

ストーリー

”春画先生”と呼ばれる変わり者で高名な研究者・芳賀一郎は、妻に先立たれ世捨て人のように、一人春画に没頭していた。退屈な日々を過ごしていた春野弓子は、芳賀から春画鑑賞を学び、その奥深い魅力に心を奪われ芳賀に恋心を抱いていく。やがて編集者・辻村や、芳賀の亡き妻の姉・一葉の登場で波乱が巻き起こる。それは弓子の“覚醒”のはじまりだった―。

作品レビュー

春画への探求心で繋がった師弟コンビの「推し活」。

異色の偏愛コメディと謳われているが、ゲラゲラ笑えるというよりは変わり者ばかりの登場人物が至って真面目に独自の世界に突き進んで行く姿を楽しむ作品だった。

”春画先生”と呼ばれる有名な研究者・芳賀一郎(内野聖陽)を筆頭に、芳賀から春画鑑賞を学びその奥深い魅力に心を奪われた春野弓子(北香那)も、先生の才能に惚れ込む編集者・辻村(柄本佑)も皆が皆 普通じゃない。

最愛の妻に先立たれ世捨て人のように一人春画に没頭していた芳賀と、退屈な日々を過ごしていた春野弓子の出会いは必然。

お互い想い合っていながら不思議な関係を築いていく芳賀と弓子のバランスは、芳賀の亡き妻の双子の姉・一葉(安達祐実)の登場で一変する。

始まりから既に怒涛の展開だったが、一葉が登場してからもまたひと波乱が。

リミッターが外れ本能に従う姿といえばそうなのかもしれないが、彼等の行動はどれも想定外だった。

春画というものをまじまじと見た事もなく何の知識も無い為、平安時代からはじまり江戸時代で全盛期を迎えた春画は喜多川歌麿,葛飾北斎,歌川国貞など著名な浮世絵師のほとんどが春画を手がけていた事があると知り驚く。

江戸時代、春画は“笑い絵”とも言われ多くの老若男女が娯楽として愛好したという。

日本人が持っていたとされる「性をおおらかに肯定する精神」は今の日本からは到底考えられない。

長年春画を取り扱うことは日本映画のタブーとされていた事でも顕著に現れているが、どうしても卑猥な印象を持ってしまうのだ。

エロティシズムだけではない「春画」の芸術性や、見過ごされてきた歴史解釈という観点にも注目して作られている今作。

世界に誇るべき繊細かつ大胆な春画の奥深い魅力を、真面目に可笑しく学べる事だろう。

【春画先生】


原作・監督・脚本:塩田明彦
内野聖陽  北香那  柄本佑  白川和子  安達祐実
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ 2023/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/114 分<R15+>
公式サイト
Ⓒ2023 「春画先生」製作委員会

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
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